クラウドコンピューティングの利用拡大やスマートフォン(高機能携帯電話)の普及で、ネットワークの重要性が増している。今後のネットワーク機器はどのような機能が求められるようになるのか。技術開発の方向性について、ネットワーク機器大手の米ジュニパーネットワークス最高経営責任者(CEO)のケビン・ジョンソン氏に聞いた。
――今後のネットワーク機器をどうみる。
「『クラウドコンピューティング』と『モバイルインターネット』は今後10年を左右するトレンドだ。クラウドは一元化や自動化によりデータセンターのコンピューター利用を効率化する技術。これが、モバイルインターネットと組み合わされる。世界の数十億の人々がスマートフォンなどを使ってインターネットにつながり、データセンターから提供されるサービスを利用する時代になる」
「この結果、インターネットを流れるデータは今後爆発的に増える。つまり、ネットワーク機器は、膨大な通信量を高速に処理できる能力が求められる。また、その処理性能を簡単に拡張できるようにする必要がある」
「3つ目の重要な機能がセキュリティーだ。今後、モバイルで使われる端末の種類は増える。利用者が安全にネットを利用できるように機器側でなんらかの手当てをする必要がある」
――モバイル端末のセキュリティー対応は、ウイルス対策ソフト会社などの専門企業も手掛けている。
「モバイル端末のセキュリティーは端末だけでは収まらない。ネットワーク全体で考える必要がある。だからこそ我々は独自に端末管理ソフト『ジュノスパルス』を提供した。スマートフォンの利用状況を個別に管理でき、ウイルス対策機能も持つ」
「ただし、セキュリティー関連の技術のすべてを自社で提供する意図はない。我々のネットワーク機器の基本ソフト(OS)『ジュノス』は外部企業が独自のソフトを提供できる。今後の世界で十分なセキュリティーを担保するには、多くの頭脳が集まり、たくさんの技術革新を起こす必要がある。そのような状況を作りたいと思う」
――新興国への進出をどう考えるか。
「我々は成長する市場の参加者でありたい。我々が成長するには、新市場に新製品を投入して、市場を広げていく必要がある。世界のどこでもネットワークに求められる機能は大きく違わない。今、起きているトレンドは世界同時進行。ネットにつながる新しいユーザーは新興国で生まれている。通信量も新興国で圧倒的に伸びている」
「幸い、中国、インド、ロシア、ブラジルは既に我々にとって重要な市場になっている。人口の多い中国とインドが当面、市場を引っ張っていく形になるとみている」
「ライバルは世界中にいる。だからこそ我々は技術革新を続けて引き離す必要がある。昨年は研究開発に売り上げの21%を投資した。今後も売り上げの18~19%を目安に投資を続けていく」
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