京浜急行電鉄が発光ダイオード(LED)照明の導入を加速する。駅構内だけでなく、トンネルや車両での利用も視野に入れる積極ぶりだ。節電と二酸化炭素(CO2)削減を同時に進める。コスト面の効果などLED化を狙う鉄道会社の事情を道平隆取締役施設部長に話を聞いた。
――今夏の節電策は。
「羽田空港国内線ターミナル駅と天空橋駅の照明を全部、LEDに切り替えた。地下駅で一日中、電気をつけておく必要があり節電効果が大きいと判断した。合計1750個ほどで、夜間に約1カ月作業して羽田空港の方は6月末に切り替えを完了した」
「試算ではLED化で使用電力量は約半分になる。CO2排出量も同じ程度減らせるとみている。駅構内や車内照明の一部消灯、平日昼間の運転本数削減なども実施している」
――LEDの光は直進性が強く、通常の電灯とは異なる。導入に抵抗はなかったのか。
「電灯が切れた時でも昼間には交換しにくい女性用トイレを対象に、数年前からLED照明を導入して(明るさの感じ方などに)問題がないかどうか確認してきた。私自身もデスクの回りの照明を蛍光灯型のLEDにして体感してきた」
「駅やトンネルなどの照明は約1年に1度、交換する必要がある。蛍光灯そのもののコストより、終電が終わった深夜に取り換える人件費の負担の方が大きい。LED照明ならこの交換までの期間を長くできる。価格は高いが、こうした保守管理費用を考えて10~20年の期間でみると総コストは安くなる」
――実際にLEDに切り替えてみた効果は。
「今はまだ、全部で72駅あるうちの2駅について取り換えただけだ。会社全体への影響力というより、『CO2排出量がトラック輸送の約7分の1』という環境負荷の低さを標榜している鉄道会社としての使命感の方が先行している」
「今後、他の駅もLED化を進めたいと考えている。一部車両などにもLED照明を導入したい。列車は振動が多いためLEDには過酷な環境になるが、現在4両編成の普通列車の一部の照明をLED化して、蛍光灯と比較しながら導入可能性の確認をしている」
――事業面だけでなくグループ社員約1万人にもLED電球を配布した。
「消費電力量が従来の電球の約5分の1となるLED電球を、社員一人ひとりに1000円程度の寄付を募って配った。寄付は被災地に送る。有料にしたのは自分で料金を負担しないと、LED電球を積極的に使おうとは考えないと判断したためだ」
「社員が家庭でLED電球を使っても、当社の節電に貢献するわけではない。ただ1つ使ってみてよいと思えば2個、3個と家庭の節電につながっていく。その動機付けの効果がある」
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