2011年5月25日水曜日

GABA社長上山健二氏、震災で生徒獲得遅れ対応は

「夏時間」退社後に期待
 東日本大震災後の混乱などが影響し、学習塾や語学教室など教育関連業界では新年度の生徒獲得が例年より遅れている。英会話教室を運営するGABAでも3~4月の新規入会者数が前年を下回った。ただ、企業からの研修などの問い合わせは堅調だ。上山健二社長に今年度の生徒獲得の見通しについて聞いた。
 ――震災の影響は。
 「被災地に教室がないため、直接的な影響はなかった。東京都内と神奈川県、埼玉県の教室の一部ではテナントとして入居している商業施設自体が休業したため、一時休校せざるを得なかった。全36校のうち8校は計画停電の対象区域にあったため、授業の見通しがたたない時もあった」
 「社員から被災地に何か貢献できないかという意見が多かったので、震災発生後から4月末まで1レッスンの授業料のうち100円を義援金として送ることを決めた。最終的には1200万円以上を集めることができた」
 ――新年度の生徒の獲得の状況は。
 「3~4月は最大の書き入れ時だが、3月は新規入会がかなり厳しかった。4月はだいぶ回復したが、両月とも前年と比べると新規入会数が下回っている。4月までは1人あたりのレッスン数も落ち込んだが、5月はほぼ昨年並みに戻るとみている」
 「このまま、さらに大きなことが発生しなければ徐々に生徒を獲得していけるのではないか。旅行などのレジャーと違って教育業界は自粛ムードの影響を受けにくいと思う。逆にこういう時だからこそ、自己研さんのために英会話教室に通うという人は多くなるのではないか」
 ――電力不足に対応し、夏休みを増やしたり就業時間をずらしたりする企業が目立つ。仕事帰りに教室に通う人が増えるのでは。
 「朝は午前7時から授業を始めており、出勤前に勉強する“朝活”などの影響で結構予約が入っている状態だ。“サマータイム”などで早く会社が終わって帰宅前に勉強する利用が増えることを期待している。夜は予定をたてにくく定期的に通えないというビジネスマンも多い。夏に向けて新規入会キャンペーンなどの集客策を考えたい」
 ――社内公用語に英語を導入する計画を打ち出す企業が増えている。
 「昨年に楽天やファーストリテイリングが方針を発表してから、法人営業が好調だ。無料体験レッスンを受けた人で実際に入会する割合が高くなっている。海外出張でプレゼンをしなければならない、海外の現地企業と電話会議をしなければならないなど、英語を習得しなければならないという必要性を感じている人は増えているようだ」
 「今年2月に初めて企業内に教室を出した。これまでは講師を企業に派遣するか、研修を導入した企業の社員に教室に通ってもらっていた。しかし企業側からは社員が実際にどれだけ教室に通っているかを把握しにくい。社内に教室を作れば通塾率も高まると依頼された。今後も同様の事例は増えてくると思う」
 ――法人の研修需要の先行きをどう見る。
 「個人の新規会員数の獲得が遅れる一方で、法人営業部への問い合わせ件数は4月も前年を上回った。5月も好調が続いている。昨年は首都圏の大企業からの問い合わせが中心だったが、最近は中小企業からも依頼が目立つ。これまでは関東と関西を中心に営業してきたが全国規模に広げていきたい」
記者の目
法人需要の
取り込みカギ
 語学教室各社では震災後に外国人講師の帰国が相次いだ。GABAでも830~850人いる講師のうち震災発生から1週間で約200人が関東地区から一時離れたという。結局50人程度が退職したが、4月以降の講師の採用はほぼ例年通りに回復している。
 今回の震災を教訓に業界では自宅で受講できる「オンライン授業」を拡充する動きも広がる。同社も1年半前から導入を検討するが、「音質や画質の問題もあり教室と同じ質を提供するのは難しい」(上山社長)と慎重さも見せる。
 昨年4月のジオス破綻から約1年。市場のパイ全体が伸び悩むなか、法人需要をどこまでつかめるかが今後の成長のカギを握りそうだ。
 かみやま・けんじ1988年東大経卒、住友銀行(現三井住友銀行)入行。2008年GABA入社、専務執行役員を経て09年から現職。兵庫県出身。46歳