2015年4月21日火曜日

バイオ需要深掘り、島津製作所、新社長に上田氏。

 島津製作所は20日、上田輝久取締役専務執行役員(57)が6月下旬の株主総会を経て社長に昇格する人事を発表した。上田氏は2011年から主流の分析計測事業のトップを務め、バイオ分野にも市場を広げた実力者だ。記者会見した上田氏は今後、分析計測事業の海外事業を加速するほか、バイオ分野で需要を深掘りする考えを示した。
 上田氏はライフサイエンス事業統括部長を務めるなどバイオ分野の経験が豊富だ。中本晃社長(69)は後継指名の理由について、「ライフサイエンスに関する経験や知識が豊富。真のグローバル企業となる上でふさわしい」と説明した。
 上田氏は特に注力する分野として、(1)ライフサイエンス(2)環境(3)インフラ(4)食品・安全(5)新規材料――を挙げた。主力の液体クロマトグラフなどは「画像だけでなく、分子の種類や量がどれくらい含まれているかまで広げる」とした。
 海外事業は大学や企業との共同開発や共同研究を進める拠点「イノベーションセンター」を米国、中国、欧州、シンガポールに開設する。「文化を含めて顧客を徹底的に理解すること」(上田氏)で、さらなる売り上げ増につなげる。
 島津製はiPS細胞の研究や技術支援などをするiPSポータル(京都市)に出資している。同社の分析機器も「いずれはiPS細胞が関わる創薬の評価機器に使われる」(上田氏)とした。

津田駒工業、黒字化策は、初の社外出身、高納伸宏社長に聞く、繊維機械強み磨く、工作機械関連で新製品群。

 繊維機械や工作機械関連装置でそれぞれ高いシェアを持つ津田駒工業。円安基調を受けて業績が改善する国内機械メーカーが増える中、同社は2012年11月期以降、3期連続で連結最終赤字になっている。今年2月、創業以来初めて社外出身からトップに就いた高納伸宏社長に、黒字回復に向けた取り組みを聞いた。
来期に利益拡大
 ――15年11月期の連結業績予想を下方修正しました。
 「14年11月期の第4四半期から中国での繊維機械の市況が非常に悪く、それを引きずった。下方修正を繰り返してきた経緯があるだけに、これ以上市場の期待を裏切りたくないという気持ちで、思い切って第1四半期の決算発表に合わせて中間期と通期の業績予想を下方修正した」
 「足元では市況が改善しつつある。第2四半期からは売り上げが上向きになり、第3四半期以降は生産も安定するだろう。今期で赤字を断ち切り、来期からは利益を拡大させる」
 ――受注動向は。
 「繊維機械の半分は中国向けだが、人件費の高騰で省力化ニーズが高まっており、引き合いが出てきた。インド向けも動き始めた」
 「工作機械関連装置では、米国を中心に自動車向けが好調なほか、中国やベトナムでもスマートフォン(スマホ)向けの引き合いが強い。スマホは一時期頭打ちかといわれていたが、アクセルが入った印象だ」
 ――中期的にはどう取り組みますか。
 「繊維機械はフル生産を目指して薄利多売に陥るのではなく、顧客に狙いを定めて稼働率を一定以上に保つ。当社はウールの業界に強い。自社製品の性能を高めながら、この分野を着実に固める。工作機械関連装置では既存製品の技術を生かし、新たな製品群を展開したい」
 「炭素繊維複合材向け設備は市場が黎明(れいめい)期だが、明るい兆しが見えており、納入実績も出てきた。大学と連携して技術開発も進めており、17年には事業が本格化するだろう」
コスト3割削減
 ――自社の強みと課題はどこだとみていますか。
 「思った以上に高い技術力を持ち、開発力もある。ここを今後も生かす。ただ、コスト低減の余地はまだまだある。生産や設計、外注など、全体を見直して現状より製造コストを3割は下げる」
 ――赤字が続くのは市況以外の要因があるのではないですか。
 「それはない。市況に左右されるのが製造業の宿命。どの産業で生きているかによるところが大きい。繊維機械メーカーを横目で見ても、今は各社ともに苦境だ。ただ、市況に負けない体質を目指す必要がある。そのためにも強みを地道に磨くしかない」