2011年6月18日土曜日

パルコ・牧山社長に聞く、森トラストとの関係改善を図る。

 パルコの牧山浩三社長=写真=は17日、日本経済新聞の取材に対し、33・2%の株式を保有する筆頭株主の森トラストと関係改善を進める意向を示した。経営を安定させるためには森トラストの支持が不可欠なためだ。同社と第2位株主のイオンが経営権の獲得に再び乗り出す可能性も残るが、「経営スピードを速め、企業価値を高めることで支持を得たい」と語った。
 牧山氏は大株主2社から退任を突きつけられた平野秀一前社長に代わり、5月末に専務から昇格した。
 取締役2人を受け入れた森トラストに対し、牧山社長は「話し合いを密にし、悪化した関係を早く元に戻したい」と修復に前向きな姿勢を示した。一方、業務検討委員会を共同で設置したイオンについては「提案を見たうえで、プラスになることには取り組む」と述べるにとどまった。
 森トラスト、イオンは合わせて発行済み株式の45%を握る。パルコにとっては資本政策の練り直しも課題となるが、「まずは大株主と協議し、理解を得る状況を作ることが先決だ」と強調した。

パルコ・牧山社長に聞く、森トラストとの関係改善を図る。

 パルコの牧山浩三社長=写真=は17日、日本経済新聞の取材に対し、33・2%の株式を保有する筆頭株主の森トラストと関係改善を進める意向を示した。経営を安定させるためには森トラストの支持が不可欠なためだ。同社と第2位株主のイオンが経営権の獲得に再び乗り出す可能性も残るが、「経営スピードを速め、企業価値を高めることで支持を得たい」と語った。
 牧山氏は大株主2社から退任を突きつけられた平野秀一前社長に代わり、5月末に専務から昇格した。
 取締役2人を受け入れた森トラストに対し、牧山社長は「話し合いを密にし、悪化した関係を早く元に戻したい」と修復に前向きな姿勢を示した。一方、業務検討委員会を共同で設置したイオンについては「提案を見たうえで、プラスになることには取り組む」と述べるにとどまった。
 森トラスト、イオンは合わせて発行済み株式の45%を握る。パルコにとっては資本政策の練り直しも課題となるが、「まずは大株主と協議し、理解を得る状況を作ることが先決だ」と強調した。

石狩のLNG基地来年稼働、北ガス・大槻博社長に聞く――災害時にも安定供給。

提案営業で販売6割増へ
 石狩湾新港で進む北海道ガスの液化天然ガス(LNG)基地建設で、6月末に出荷業務などに携わる基地会社が設立される。2012年末の稼働を前に準備が本格化する中、大槻博・北海道ガス社長に基地設立後の経営戦略について聞いた。(聞き手は小野沢健一)
 ――LNG基地建設の狙いは。
 「現在、苫小牧の勇払ガス田に原料の9割を頼っている。天然ガス需要は拡大を続けており、将来、勇払だけで対応していくのは難しい。長期的な安定供給のためには海外産原料の比率を増やす必要があり、そのためにはLNG基地の存在が欠かせない。災害対応にもメリットはある。苫小牧と石狩の2つの拠点を持つことで、どちらかが被害を受けても道内への安定したガス供給が可能だ」
 ――海外産原料の比率が高まることで相当のコスト増が見込まれる。ガス料金への影響は。
 「料金への影響は何としても避ける。ただし、LNG基地の総事業費は約400億円に達する。投資余力がそれほど残っているわけではなく、経営資源をエネルギー事業に集約することが必要になるだろう」
 ――基地完成後のガス販売の展望は。
 「パイプラインでの供給に加え、ローリー車で直接顧客に届けるLNGサテライト供給の提案営業などを積極的に行っていく。サテライト供給は15年度に1億立方メートルが目標。関連会社のフレアストによる営業も強化し、家庭用、業務用を合わせたガス販売量は現行の約6割増の年間7億立方メートルに伸ばしていきたい」
 ――東日本大震災による経営への影響は。
 「北海道ガスそのものへの影響はなかった。しかし、福島第1原発の事故でエネルギーの多様性が重視されるようになり、原油、LNGなどの燃料価格は中長期的に上昇していくだろう。いかに適正な料金で天然ガスを安定供給できるかが今後の重要な課題だ」

石狩のLNG基地来年稼働、北ガス・大槻博社長に聞く――災害時にも安定供給。

提案営業で販売6割増へ
 石狩湾新港で進む北海道ガスの液化天然ガス(LNG)基地建設で、6月末に出荷業務などに携わる基地会社が設立される。2012年末の稼働を前に準備が本格化する中、大槻博・北海道ガス社長に基地設立後の経営戦略について聞いた。(聞き手は小野沢健一)
 ――LNG基地建設の狙いは。
 「現在、苫小牧の勇払ガス田に原料の9割を頼っている。天然ガス需要は拡大を続けており、将来、勇払だけで対応していくのは難しい。長期的な安定供給のためには海外産原料の比率を増やす必要があり、そのためにはLNG基地の存在が欠かせない。災害対応にもメリットはある。苫小牧と石狩の2つの拠点を持つことで、どちらかが被害を受けても道内への安定したガス供給が可能だ」
 ――海外産原料の比率が高まることで相当のコスト増が見込まれる。ガス料金への影響は。
 「料金への影響は何としても避ける。ただし、LNG基地の総事業費は約400億円に達する。投資余力がそれほど残っているわけではなく、経営資源をエネルギー事業に集約することが必要になるだろう」
 ――基地完成後のガス販売の展望は。
 「パイプラインでの供給に加え、ローリー車で直接顧客に届けるLNGサテライト供給の提案営業などを積極的に行っていく。サテライト供給は15年度に1億立方メートルが目標。関連会社のフレアストによる営業も強化し、家庭用、業務用を合わせたガス販売量は現行の約6割増の年間7億立方メートルに伸ばしていきたい」
 ――東日本大震災による経営への影響は。
 「北海道ガスそのものへの影響はなかった。しかし、福島第1原発の事故でエネルギーの多様性が重視されるようになり、原油、LNGなどの燃料価格は中長期的に上昇していくだろう。いかに適正な料金で天然ガスを安定供給できるかが今後の重要な課題だ」

2011年6月17日金曜日

三越伊勢丹HD、石塚社長に聞く、16年3月期の営業利益、「500億円目指す」。

 三越伊勢丹ホールディングスの石塚邦雄社長は16日の取材で「2016年3月期に営業利益500億円を目指す」と語った。インタビューの要旨は以下の通り。
 --震災後の販売動向は。
 「4月以降の国内百貨店の売上高は計画を上回っている。東京都心部はやや落ち込んでいるが、首都圏の郊外店舗が好調だ。震災後に都心に出ることを控え、近場で買い物をする人が増えているようだ。一方でクールビズ関連やギフトが伸びている。海外百貨店の業績も上向いている」
 --12年3月期の業績見通しは震災影響を織り込んでいない。
 「今期の売上高は前期比1%増の1兆2300億円、営業利益は46%増の160億円を見込むが、夏場の節電など先行き不透明感が強いため慎重に考えたい。4~6月期の決算発表時に売上高と営業利益を若干下方修正する可能性がある」
 --成長への投資は。
 「伊勢丹新宿本店は12年に第1期の改装を終えたい。婦人服と雑貨が中心になる。13年には三越日本橋本店を改装したい」
 --経費削減も急務だ。
 「前期までの3年間で販売費・一般管理費を400億円以上減らした。今後3年間でさらに200億円圧縮する。物流コスト圧縮や賃借物件の家賃見直し、定年退職による人件費削減が中心になる。希望退職は避けたい」
 --14年3月期の営業利益は今期予想の2倍の300億円を目指しているが中長期の目標は。
 「16年3月期は500億円に高めたい。国内では仕入れ構造の改革や経費圧縮を進めて、収益力を高めたい。海外でも新規出店を含む事業拡大を進めて、利益を大幅に増やしたい」
 --今期の配当予想が未定だ。
 「前期は7円だったが、12年3月期は増益を確保して、10円に戻したいという強い意志を持っている」

2011年6月16日木曜日

40年ぶり痛風・高尿酸血症治療薬、日本発の新薬アピール、帝人ファーマ社長に聞く。

14年までに60ヵ国で販売
 帝人ファーマが医薬品事業の拡大に力を入れている。5月中旬には約40年ぶりとなる痛風・高尿酸血症治療薬の新薬「フェブリク錠」を国内で発売。国内で高いシェアを持つ在宅医療機器事業との相乗効果で、循環・代謝領域での存在感を高める考えだ。4月1日付で社長に就いた荒尾健太郎氏に今後の事業戦略などを聞いた。
 ――「フェブリク錠」は17年ぶりの自社開発製品でもある。
 「米国や欧州などで販売しているが、ようやく日本でも発売できた。従来の治療薬とは異なる基本構造を持ち、腎臓などへの副作用も少なく、期待している。今後は韓国や中国、中東などを加え、2014年までに約60カ国での販売を目指す。ピーク時の年間売上高は全世界で1000億~1600億円を見込む」
 「日本においては痛風に加え、高尿酸血症への適応を取得できた意義は大きい。従来は『高尿酸血症を伴う高血圧症』への適応ということだったが、高血圧の合併にとらわれずに済むようになった。食事療法や運動などで対応してきた高尿酸血症の治療薬ができた意義は大きい」
 ――国内販売目標は。
 「初年度の投与患者数は5万人、販売目標は14億円。ピーク時には71万5000人、約200億円の販売を見込む。4月に医薬情報担当者(MR)を従来の650人から740人に増やした。痛風治療は日本が進んでいることもあり、日本発の新薬として世界に積極的にアピールしたい」
 ――「循環器・代謝領域」を「骨・関節」「呼吸器」に次ぐ第3の柱に位置付けた。
 「在宅医療機器事業では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療装置である『CPAP』のレンタル台数が増加している。CPAPは無呼吸症候群のガイドラインで効果が見込めるとされ、循環器・代謝領域での活用が拡大する見込みだ」
 「医療機関に対し、同じ循環器・代謝領域のフェブリクとともに売り込むことも可能となる。在宅担当の営業員にもMRの資格を取得させるなど医薬品事業と合わせて盤石な基盤を構築する」
 ――中長期の展望は。
 「当面は国内営業の強化とフェブリクの海外での拡販に力を入れる。在宅医療機器の海外での販売も加速する予定だ。長期的には現在販売している医薬品の特許切れを見越し、今から準備しておく必要がある」
 「医薬品事業と在宅事業の連携を強めるとともに、退院してきた患者らを対象とするリハビリサービスの幅を広げるなど新ビジネスの創出にも積極的に取り組みたい」
記者の目
在宅医療機器
拡大もカギに
 帝人ファーマは2019年3月期に売上高を2500億~3000億円と倍増することを目指しており、そのためには「フェブリク」など新薬を通じたグローバル展開が重要な役割を担う。「フェブリク」のような世界で通用する新薬をタイムリーに投入できるかどうかがカギを握る。
 ただ新薬の研究開発自体、時間がかかるほか、海外市場で販路を開拓していくにはさらに時間を要する。新薬開発と並行して、もう1つの柱である在宅医療機器事業を拡大し、リハビリテーションといった新規事業を軌道に乗せる必要がある。医薬品に長年携わってきた荒尾社長の手腕が試される。

OSG石川社長に聞く、切削工具、中韓で受注急増――来期も積極投資。

現代自などの増産体制受け
 切削工具大手のOSGは部品や金型にネジ穴を開ける「タップ」という切削工具で世界シェア3割を握る。今年は大手顧客である世界の自動車大手などの増産への対応を急いでいる。2011年11月期の連結設備投資額として前期比7割増(約60億円)とするなど積極投資に動く石川則男社長に、工具需要から見た「機械の産業天気図」などを聞いた。
 ――足元の受注は。
 「アジアでの受注が好調だ。当社のシェアが60%程度ある韓国では現代自動車の増産体制を受けて、現地の部品メーカーからの受注が急増し、切削工具の受注残が6カ月程度になった。中国や台湾でも自動車などの投資が旺盛なために受注を取りすぎて、製品によっては1年近い受注残がある。米国も好調で、米ボーイング関連の注文が増えている。米子会社からは『受注を取っても、供給が追いつかない』とクレームが出るほどだ」
 ――生産体制をどう整えるか。
 「主力の八名工場(愛知県新城市)や中国・上海工場で生産能力を増強する。3月にタップの生産は260万本を超え、過去最高の生産本数となった。八名工場の自動化設備の導入と上海工場の拡張で安定的に約270万本生産したい」
 ――今後の設備投資に対する考え方は。
 「東日本大震災直後に中国出張から戻ってきた時に、我々の投資計画は弱いと思った。来期はアジアの子会社から強気な計画がでており、投資がある程度増えそうだ」
 ――競合メーカーの動向をどうみる。
 「切削工具というのはほとんど日本勢と欧州勢の戦い。中国メーカーは価格が約3割低いが、少し背伸びをしている。うちも最新鋭の設備を入れており、生産コストは同じぐらいだからだ」
 ――震災が起きた中で、今期の連結純利益は前期比38%増の52億円を見込んでいるが。
 「震災が起きたが、業績は堅調だ。今のところ予算よりかなり上にきている。原材料の納期はきわめて長く、在庫も数カ月分あるため震災による生産への直接的な影響はなかった。東海地震のリスクも考え、距離的に近いアジアに生産設備を置いておいて、緊急時には日本から人員を派遣する体制をつくりたい」
記者の目
アジア景気動向
見極めがカギ
 OSGは1938年に大沢螺子研削所として創業。工作機械に装着し、金属部品や金型などにねじを切る「タップ」を主力とする。穴を開ける「ドリル」など様々な工具を生産している世界大手の一角だ。リーマン・ショック後を除けば、売上高営業利益率が10%を大きく超えてきた。それは2007年に創業者一族以外で初めて経営トップに就任した石川則男社長の存在を抜きにしては語れない。
 石川社長は米国などを中心に約20年間も海外で勤務した経験があり、海外の自動車大手など顧客とのパイプが強く、景気連動で受注の波が激しい切削工具で的確な生産対応を指示してきた。今回もアジア出張で自ら情報を収集し、来期の投資計画の増額に動く構えだ。13年11月期に連結売上高900億円、営業利益150億円とする中期経営計画を確実に達成するためだ。
 切削工具ではスウェーデン・サンドビック、米ケナメタルという世界大手が攻勢をかけている。OSGにとって、強みのアジアで競合他社を上回る成長が必要。石川社長は、これまで自らの目安としてきた「減価償却費以内の投資」という殻を破る考えだ。
 ただ、中国などアジアの景気の先行きが不透明になる中で、来期からの投資で、どこまで強気になりきれるのか。その見極めが同社の中長期的な成長を左右しそうだ。

2011年6月15日水曜日

ハナテン社長米倉晃起氏――震災で中古車の需給逼迫

直接買い取りで台数確保
 東日本大震災から3カ月が過ぎ、復興を急ぐ東北地方では日常の足となる自動車需要が高まっている。特に中古車の需給が逼迫し、中古車販売店では在庫不足も懸念される。近畿圏が地盤の中古車販売大手、ハナテンの米倉晃起社長に、国内中古車販売の見通しを聞いた。
 ――震災の影響はどう現れているか。
 「オークションで中古車の仕入れ価格が上がっている。特に被災地で需要のある軽自動車は1割程度の上昇だ。中古車市場全体では新車の2~3年落ちが人気で、割高でも競り落とす動きがある。仕入れ価格は東日本の方が西日本より高めになっている」
 ――被災地需要にどう対応するのか。
 「オークションだけでは間に合わないため、顧客から直接買い取る。それは中古車販売店の間での仕入れ力の差につながる。当社は買い取り、販売とも好調で、4~5月は前年同月を上回った。全国の窓口を通じて買い取りを強化しており、社員数も今期は450人を超える見通しだ」
 ――新車生産が一時滞った影響はあるか。
 「中古車販売には直接的な影響はない。なぜなら新車を買おうとする人が意識的に中古車を選択するケースは少ないためだ。国産の新車は納車が大幅に遅れていると聞くが、仮に新車の納車が遅れる場合は、輸入車を選ぶか乗り換えのタイミングを遅らせる人が多いとみている」
 ――顧客の中古車選びに変化はあるか。
 「ここ2~3年は予算を決めて来店する人が多い。その半分は軽自動車の需要だ。30~40歳代で子どもがいて、日常の足として使える車を探す傾向が目立つ。中古車の利点は同じ購入価格なら1~2ランク上の車に乗れることだ。そうした利点が広く理解されるようになれば、中古車を選ぶ人がもっと増える」
 ――ハナテンの今期の戦略は。
 「中古車の買い取り、販売は顧客との接点をいかに増やすかにかかっている。まず既存店を中心に営業担当員を増やす。また需要のある軽自動車を積極的に買い取っていく。特に地方では車がないと生活できないため、地方への出店も進める必要がある。M&A(合併・買収)も検討していきたい」
 「オークションの開催も強化する。2010年は前年比約1万9600台増え、11万600台を取り扱った。成約率も8割と高く、収益も上がるだろう」
記者の目
魅力アピール 仕掛け作り必要
 100万円以下で買える中古軽自動車の人気は高まるが、かといって中古車業界は手放しで喜んでばかりもいられない。活況は仕入れ価格の高騰を招き、利幅の縮小につながる流れが強まるためだ。
 そうした状況の中、米倉社長は「少ない費用で高い満足感を得るには中古車がいい」とあえて主張する。中古車の良さを消費者にどう訴えるか。車にお金をかける人を再び増やすためにも、今こそ中古車販売の新しい仕掛け作りが求められる。

よねくら・こうき1989年徳山大経卒、ビッグモーター入社。2000年取締役。05年ビッグモーターとハナテンとの資本・業務提携を機に、ハナテン顧問を経て社長。44歳。