直接買い取りで台数確保
東日本大震災から3カ月が過ぎ、復興を急ぐ東北地方では日常の足となる自動車需要が高まっている。特に中古車の需給が逼迫し、中古車販売店では在庫不足も懸念される。近畿圏が地盤の中古車販売大手、ハナテンの米倉晃起社長に、国内中古車販売の見通しを聞いた。
――震災の影響はどう現れているか。
「オークションで中古車の仕入れ価格が上がっている。特に被災地で需要のある軽自動車は1割程度の上昇だ。中古車市場全体では新車の2~3年落ちが人気で、割高でも競り落とす動きがある。仕入れ価格は東日本の方が西日本より高めになっている」
――被災地需要にどう対応するのか。
「オークションだけでは間に合わないため、顧客から直接買い取る。それは中古車販売店の間での仕入れ力の差につながる。当社は買い取り、販売とも好調で、4~5月は前年同月を上回った。全国の窓口を通じて買い取りを強化しており、社員数も今期は450人を超える見通しだ」
――新車生産が一時滞った影響はあるか。
「中古車販売には直接的な影響はない。なぜなら新車を買おうとする人が意識的に中古車を選択するケースは少ないためだ。国産の新車は納車が大幅に遅れていると聞くが、仮に新車の納車が遅れる場合は、輸入車を選ぶか乗り換えのタイミングを遅らせる人が多いとみている」
――顧客の中古車選びに変化はあるか。
「ここ2~3年は予算を決めて来店する人が多い。その半分は軽自動車の需要だ。30~40歳代で子どもがいて、日常の足として使える車を探す傾向が目立つ。中古車の利点は同じ購入価格なら1~2ランク上の車に乗れることだ。そうした利点が広く理解されるようになれば、中古車を選ぶ人がもっと増える」
――ハナテンの今期の戦略は。
「中古車の買い取り、販売は顧客との接点をいかに増やすかにかかっている。まず既存店を中心に営業担当員を増やす。また需要のある軽自動車を積極的に買い取っていく。特に地方では車がないと生活できないため、地方への出店も進める必要がある。M&A(合併・買収)も検討していきたい」
「オークションの開催も強化する。2010年は前年比約1万9600台増え、11万600台を取り扱った。成約率も8割と高く、収益も上がるだろう」
記者の目
魅力アピール 仕掛け作り必要
100万円以下で買える中古軽自動車の人気は高まるが、かといって中古車業界は手放しで喜んでばかりもいられない。活況は仕入れ価格の高騰を招き、利幅の縮小につながる流れが強まるためだ。
そうした状況の中、米倉社長は「少ない費用で高い満足感を得るには中古車がいい」とあえて主張する。中古車の良さを消費者にどう訴えるか。車にお金をかける人を再び増やすためにも、今こそ中古車販売の新しい仕掛け作りが求められる。
よねくら・こうき1989年徳山大経卒、ビッグモーター入社。2000年取締役。05年ビッグモーターとハナテンとの資本・業務提携を機に、ハナテン顧問を経て社長。44歳。
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