――昭和電線ホールディングス(HD)は、海外売上高比率を2012年度に23%まで高める中期経営計画を掲げる。
「海外売上高比率は10年度で13%とまだグローバル企業とは言い難い。しかし電線業界も国内は厳しく、海外でがんばるしかない。特にインフラ投資が活発な中国市場を重視しており、現地同業の富通集団から出資を受け、中国で合弁工場の増強・新設を進める」
「経営管理や技術指導に当社のノウハウが求められ、総経理やセンター長などの要職に中国語を話せる日本人管理職が必要だ」
――現在の陣容は。
「海外16拠点に日本人35人が駐在している。このうち中国は11拠点29人だ。これから富通と共同事業を進めていくため、年内にも、中国では駐在員を35人に増やす必要がある。しかし、投入できる人材が不足している」
「これまでは駐在経験者をローテーションで何度も赴任させてきたのが現実で、60歳代などの年配者が増えてしまった。中国と全く縁のない40~50歳代をいきなり総経理として赴任させるわけにもいかず、ベンチに人がいない状況だ。次の登板を待つ予備軍を急いで育成しておかなければならない」
――具体的な育成策はあるか。
「3月から本社(東京・港)で20~30歳代の若手社員向けに中国語会話の無料講座を始めた。当社は経理や生産管理などの総合職に中国出身者17人を採用しており、彼らに謝礼を払って講師を引き受けてもらっている。講師も会社への貢献度を高め、日本人社員と交流を図れるため、モチベーションは高い。教える訓練は受けていないが、受講者が気軽に指導を仰げる存在で、有効だと感じている」
「講座は業務終了後の午後5時半から実施しており、あくまで自己研さんの位置付け。受講費は取らないが、教材は自己負担。内容も中国語会話入門のレベルで、学ぶ意欲のある社員にとっかかりとして生かしてもらうのが目的だ。3月開始の講座には11人が参加しており、中国語を業務上使わない国内営業担当者もいる。意外な人がやる気をみせており、うれしくなる」
――講座の頻度や今後の計画は。
「ほぼ週1回のペースで講座は続いたが、東日本大震災後の復旧需要への対応で忙しいなかでも受講率は高かった。7月下旬には受講者の発表会も予定する。次回は10月以降、相模原事業所(相模原市)で若手技術者向けに開講したいと考えている。12年度以降も継続し、年2回程度は開く計画だ」
――資格取得補助などのメニューは。
「10年2月から資格取得の報奨制度の対象に中国語検定を加えた。日本中国語検定協会(東京・千代田)の4級取得者に1万円を支給する。今回の無料講座開始で4級取得者は増える見通しで、3級以上についても報奨制度への組み入れを検討していく」
「将来のキャリアとのつながりも明確にしていきたい。部署によって昇進に必要な知識は異なるが、その一つに中国語を加えるのも一案だ。同じ営業でも中国では国内とケタの違う案件にかかわれることも説明し、中国で働くことの魅力に気づいてもらいたい。若いうちに中国への出張や赴任の経験を踏ませることで将来の総経理候補に育てていく」
0 件のコメント:
コメントを投稿