2011年7月11日月曜日

成城石井の原社長に聞く、中部・関西も出店拡大、三菱商事系傘下入り。

 高級スーパーの成城石井(横浜市)は5月31日付で、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタル(東京・千代田)の100%出資会社へ全事業を譲渡し、新たなスタートを切った。三菱商事のノウハウをどう活用し、事業を拡大していくのか。原昭彦社長に、今後の事業戦略について聞いた。
 ――新会社として新たなスタートを切った。
 「年10店舗前後という出店戦略に変更はない。関東を中心に中部や関西へも出店を進めて、日本中に成城石井のファンを増やしていきたい」
 「関西では弁当やサンドイッチなどを現地調達している。出来たての商品を提供するため、また店舗数を増やすことも考慮して、将来的に関西でも総菜工場などの建設を検討しないといけない」
 ――丸の内キャピタルに出資する三菱商事のネットワークをどう生かすのか。
 「具体的にはこれから策定する中期経営計画に盛り込むが、出店ではこれまでも三菱商事系の新丸の内ビルディング(東京・千代田)や横浜ランドマークタワー(横浜市)などへ出店してきた。そういった新規出店の物件開発や、卸事業における物流網の効率化などの効果が期待できる。商品の配送でも現在の物流網を整理して、三菱商事のネットワークを利用するなどしてコスト削減効果が期待できる」
 ――東日本大震災が業績に与える影響は。
 「東北からは野菜や畜産物を仕入れており、これからの季節は桃やメロンの出荷も始まる。原発の風評被害も含めて生鮮3品が非常に不安定に推移しており、先が見えない状況が続いている」
 ――震災を受けて商品の調達方法に変化は。
 「関西から牛乳、名古屋から納豆を仕入れるなど、これまでも仕入れ先を分散してリスクヘッジをしてきた。震災を受けて、牛乳や卵などの仕入れ先も分散する必要があると考えている」
 ――事業拡大に向けて、今期重点的に取り組みたいことは。
 「食品スーパーと卸両事業とも扱う商品のカテゴリーを広げて商品力を高める必要がある。今年からアメリカとオーストラリアの食品見本市に参加して商品の輸入を始める。ナッツやドライフルーツなどを原料で大量に仕入れて、日本で仕分けて販売する。卸事業を食品スーパーに次ぐ事業に育てたい」
 ――社員教育も強化している。
 「入社1~3年目ぐらいの若手を中心に少人数の研修を月2~4回ほど実施している。商品の知識があっても陳列がきちんとできるわけではない。複数店舗の売り場づくりを支援するスーパーバイザーが7~8人の若手社員に、季節に合わせた売り場作りを教えている。若手が疑問に思ったことを聞きやすい環境をつくっていきたい」
 新会社でも引き続き社長を務める原昭彦氏は、大久保恒夫前社長時代から、現場のトップとして経営改革を進めてきた。
 「『こだわり豊かな社会を創造する』という企業理念の下、新会社でも大きく経営方針を変えることはない」と原社長が強調するのは、一般的な食品スーパーの2倍前後と言われる売上高経常利益率5%(2009年度)など同社が順調に業績を伸ばしてきた自信が背景にある。
 しかし同社がこれまで中心的に出店してきた駅ナカは、東日本旅客鉄道傘下の紀ノ国屋(東京・港)も出店戦略を進めており、今後は出店余地が少なくなる可能性もある。
 今後も成長を続けていくためには、丸の内キャピタルと同じく三菱商事系の小売りや卸などとも連携し合って、出店戦略や商品調達など物流面で協力できるかどうかが鍵となりそうだ。

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