2011年7月15日金曜日

原油――JX日鉱日石エネルギー取締役常務執行役員池田道雄氏

 商品市況の回復の足取りが鈍い。内需は総じて低迷し、東日本大震災の復興需要の本格化も遅れている。原油や金など国際商品の一部は高止まりしているが、最近の大幅な円高や米国景気の減速懸念は弱材料だ。主要市場の関係者に市況の現状や見通しを語ってもらった。初回はJX日鉱日石エネルギーの池田道雄取締役常務執行役員に聞いた。
 ――6月下旬、国際エネルギー機関(IEA)が約6千万バレルの石油備蓄放出を決めた。
 「意外な印象だ。IEAの成り立ちや目的を考えるとあまり歓迎できない。リビア産原油の供給途絶を理由にしているが、実施が遅すぎたため、原油価格の引き下げを狙ったと市場は受け止めている。石油備蓄は持ち続けること自体に価格変動の抑止効果がある。実際に放出してしまったら、その効果は薄れる」
 ――原油価格を引き下げる効果はあったのか。
 「上値を抑える効果はあったが、一週間で再び高値に戻った。1カ月で6千万バレルの放出量は世界需要の2%程度にすぎず、市場へのインパクトが小さかった。今後は備蓄を放出しても市場の反応は鈍いだろう」
 「原油高の背景には将来の供給不安がある。IEAによると現在の世界の原油需要は日量8900万バレル。2020年には1億バレルとなり、それまで毎年100万バレル以上のペースで増えるとみられる。今後の世界経済に悪影響を与えないためにIEAと石油輸出国機構(OPEC)は供給や価格の安定策を議論すべきだ」
 ――東京電力の原子力発電所事故で発電用原油の需要が膨らんでいる。
 「電力向けの主力燃料は液化天然ガス(LNG)と石炭で、原油は最後だ。原油に回帰することはないが西アフリカや中央アジアからの輸入を増やしている。ただ、欧州勢がリビア産の代替として西アフリカ産を買い集めており、調達には苦労している。価格も北海ブレントに連動しているため割高だ。これまでの調達先だったインドネシアやベトナムでは産出量が減り、入手しにくくなっている」
 ――米国が追加の金融緩和に動く可能性が出てきたが、今後の価格見通しは。
 「中長期的には需要拡大による市況上昇圧力が続くだろう。供給面では(1)イラク産原油(2)ブラジルの海底油田(3)カナダのオイルサンド(重質油を含む砂の層)(4)岩盤内部のシェールオイル――が増える見込みだが、国際需給の逼迫感を解消するほどではない」
 「ただ、年内は弱含みに推移しそうだ。欧米景気の先行き不透明感が強く、目先の原油需要は低迷する可能性がある。日本の輸入原油の価格指標となるドバイ原油は現在、1バレル110ドル前後だが、北アフリカ・中東の政情不安が下値を支えるだけに90ドルを大きく割り込むことは考えにくい」

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