2011年7月12日火曜日

イビデン社長竹中裕紀氏―携帯IC基板、海外生産も

 イビデンの竹中裕紀社長は、スマートフォン(高機能携帯電話)などに使う高付加価値な基板の需要動向について強気の見通しを示す。サプライチェーン(供給網)の寸断リスクを避けるため、生産地域の分散も視野に入れている。
海外の需要旺盛
 ――生産や販売などで東日本大震災の影響は。
 「原材料調達で震災直後は影響が多少あった。当社に大きな支障は出なかったが、国内景気のマイナス材料にはなる。2012年3月期の上期は平時に比べ電子部品の需要が伸び悩みそうだ。連結売上高で150億円ほど下振れするとみて業績予想に織り込んだ。震災の影響は秋口には一服すると思う。通期で純利益は前期比19%増、売上高は10%増を見込んでいる」
 「設備投資計画も変更はない。前期比16%増の700億円を計画しており、リーマン・ショック前の水準に回復した。電子部品では主にスマートフォン向けやタブレット端末向け部品の生産・販売強化に充てる」
 ――携帯電話向け製品などの世界需要の見通しは。
 「今期も新興国が成長をけん引するが、パソコン向けは伸び悩みそうだ。しかし世界はIT(情報技術)機器で結ばれ、新興国の成長は止められない。多少の踊り場があっても来期以降の成長は続くだろう」
 ――スマートフォン向け製品が大きく伸びそうだ。
 「電子部品部門のうちスマートフォンやタブレット端末に使うプリント基板やICパッケージ基板が、今後2~3年の当社の成長を支えることは間違いない」
 「プリント基板は青柳事業場(岐阜県大垣市)や中国・北京工場に加え、マレーシアの第1工場で今春に生産を始めた。来年夏に第2工場も立ち上がり、需要増に対応する体制が整う」 「ICパッケージ基板については当面、河間事業場(岐阜県大垣市)の設備増強でしのぐつもりだ。ただ、顧客企業が震災後、1カ所で集中生産している製品の調達リスクに懸念を強めており、海外での生産拠点を探しているところだ」
節電対策を推進
 ――電力不足の対策は。
 「中部地方が計画停電に陥らないように最大限協力したい。当社の使用電力は自家発電の水力、火力が各3分の1で、残りを中部電力から買っている。自家発電設備は夏場に最大出力を発揮できるよう念入りに保守・点検している」
 「前期に5%の省エネを実現したが、今期もさらに5%の削減を目指す。照明をLED(発光ダイオード)に交換し、クリーンルームの空調効率も改善する。以前から取り組む夜間や土日の集中操業も今年は徹底させたい」=随時掲載
 民間調査会社によると、2011年度の携帯電話出荷は、2台に1台がスマートフォン(高機能携帯電話)になる見通しだ。イビデンは付加価値が高いスマートフォン向けのICパッケージ基板やプリント基板を成長のけん引役と位置付け、力を入れている。
 ただ、技術の最先端分野でもあり、世界需要の急変動リスクも抱えている。シェアや収益力の向上を追求するうえで最適な生産地や仕様の選定、投資のタイミングなど高度な経営判断を迫られている。

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