電子書籍が広がりを見せている。有望市場での主導権を握るべく、大日本印刷(DNP)もグループの総力を集め、攻勢をかけている。丸善CHIホールディングスの小城武彦社長は、コンテンツ配信会社のトップを兼ねるなど、DNPグループの電子書籍戦略のかじ取りを担う。今後の業界動向や次の一手などについて聞いた。 ――電子書籍市場の現状をどう見ているか。 「スマートフォン(高機能携帯電話)の力に驚いている。ゲームやツイッターなどと消費者の時間の奪い合いをしてきたが、電子書籍はこの競争に負け続けてきた。しかし、ここに来てスマートフォンの力を借りて盛り返し始めている」 「文庫本に慣れた日本人にちょうど良い画面サイズ。しかも、片手で操作できる。移動や休憩など細切れの時間に電子書籍を読むという習慣が急激に広がっている。『スマホすげえな』のひと言だ。消費者が書籍を持っていなかった時間に、今注目している」 ――電子書籍とリアルの書店などを結びつける「ハイブリッド書店」の進ちょくは。 「DNPグループの配信サイト『honto』のバージョンアップを来年1月までに完了する。グループ内で運営する書籍通販サイト『bk1』を統合し、書籍の購入でたまったポイントを管理するカードを導入する。1つのIDで電子書籍の配信とネット通販を利用でき、リアル書店で買い物をしてもポイントがたまるようにする」 「時間を指定した販促などもできるようにしたい。例えば、サッカー日本代表の試合のハーフタイムに、メールで関連書籍を推薦するようなことを目指す。読者が欲しいと思った時に購入できる仕組みとすることが重要だ」 ――リアル書店をどう位置付けるのか。 「メールを使った店頭での商品取り置きサービスや店内イベントを効果的に実施していきたい。同じグループのジュンク堂書店(神戸市)、丸善書店、文教堂グループホールディングスが運営する書店の店頭には年間2000万人もの消費者が訪れている」 ――さまざまな形で集めた読者情報はどう活用していくのか。 「出版社との協力が前提になるが、紙と電子の書籍の発売時期をどの程度ずらすのが適当か、といったことなども検証できると考えている。どのようなタイミングで販促メールを送信したら良いかもわかるようになるかもしれない」 ――陣営の異なるソニーと紀伊国屋書店、パナソニックと楽天が電子書籍で連携した。 「(協力要請を含め)いろんな話は来るが、今の時点で他と連携する考えはない。いつになるかわからないが、(電子書籍市場は)最終的には競争によっていくつかの陣営に集約されるだろう。ただ、現在は陣営やサイトによってコンテンツの数や種類に大きな差はないとみている」 「米国と一緒である必要がどこにあるのか」。電子書籍や書店について日米比較が話題になるたび、小城社長はこう強調する。車がなければ書店に行けない地域が多い米国と、都市部であれば帰宅途中などに立ち寄れる日本。米国人の2倍の年間1万5000円を書籍購入に充てる日本人。事情は全く異なるからだ。 そこで提唱するのがリアル店舗とネットを融合したハイブリッド書店。紙を電子に置き換えるのではなく、相乗効果を出せるはず、との読みがある。日本独自の次世代の書籍流通が根付くか。小城社長率いるDNPグループの動向が注目される。 おぎ・たけひこ 1984年東大法卒。通商産業省入省。カルチュア・コンビニエンス・クラブなどを経て2007年に丸善社長。10年CHIグループ(現丸善CHIホールディングス)社長。49歳 |
2011年7月13日水曜日
丸善CHIホールディングス社長小城武彦氏
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小売
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