愛媛県今治市の特産品、今治タオルが元気を取り戻しつつある。昨年は東京など各地に今治タオル専門店が相次ぎ開店。減少を続けてきた生産量も品質の良さが再評価されて上向いてきた。独自ブランドのタオルが店頭で「2カ月待ち」という池内タオルは、この元気をけん引する1社だ。
「今度、ニューヨークで新製品のプレス発表をやるんですよ」。社長の池内計司は今治市の本社で、26日から始まる「ニューヨークインターナショナル・ギフトショー」への出展に合わせた発表会についてうれしそうに語った。同ギフトショーには昨秋に4年ぶりに復帰したのに続く参加だ。 新製品は同社の創業60周年モデルとなる「オーガニック7」。1999年から本格的に取り組んできたオーガニックコットン(有機栽培綿)による自社ブランドタオルの集大成という。昨年末には全商品が、繊維製品の国際的な安全規格「エコテックス規格100」の最も厳しいクラス1を取得した。「今年から、池内タオルの製品はすべて世界で最高水準の安全なタオルとなります」と目を輝かせる。 家業のタオルメーカーを継ぐためサラリーマン生活をやめて帰郷。99年に立ち上げたオーガニックコットンによる自社ブランド「IKT」が国内のみならず欧米でも評価され、2002年にはニューヨークでの「ホームテキスタイルショー」で、日本企業として初めて最優秀賞を受賞した。 同年からは東京電力や四国電力などが出資する日本自然エネルギー(東京・中央)の「グリーン電力証書システム」を利用。証書を購入することで、工場で使う電力は風力発電でまかなうとみなされる。 「このシステムを利用するのはトヨタ自動車、ソニーなど大企業が多く、中小企業は珍しい」と池内が言うように、地方のタオルメーカーの参加は産業界で注目を集めた。いつしか同社の製品は「風で織るタオル」と呼ばれ、全国にファンを広げていく。 順風満帆にみえたが、悲劇が襲う。03年初秋、取引先の卸が経営破綻したあおりで、同社は9億円の負債を抱えて民事再生法の適用申請に追い込まれた。「風で織るタオルの名前で本格的に売り込もうとした時期だったので、もう目の前は真っ暗」 その時、池内を救ったのは、見ず知らずの全国の顧客からの応援メールだ。「『がんばれ』というメールが何百通も来たのです。『何枚買えば助かるの』という言葉には涙が出た」。応援メールはメーンバンクにも多数届いた。卸や小売りなどからも約100件の新規取引の申し込みがあり、同社は異例のスポンサーなしでの再建を遂げることになる。 オーガニックコットンのタオルを始めたころから、「IKTマニア」というような熱烈なファンに支えられたという。「だからこそ、安全で最小限の環境負荷という基本から離れた製品は出せない。ファンの目は厳しいですから」と気を引き締める。 11年から始めた「コットンヌーボー」はタンザニアの畑でその年に収穫されたオーガニックコットンだけを使う。「ワインのように原料の収穫年のタオルを味わってもらう」のがコンセプトだ。ただ、デザインや仕様は20年は変えないという。「目先を変えた新製品を多数出すより、磨き抜いた商品を作り続けることがいかに大事か、やっと分かった」。理想のタオル作りの試みは終わることはない。 |
2013年1月24日木曜日
池内タオル社長池内計司氏――理想のタオル、原料綿から
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