2013年1月24日木曜日

キャリアバンク社長佐藤良雄氏―雇用への影響は

 安倍晋三政権がまとめた緊急経済対策は60万人の雇用創出を打ち出した。道内でも実現するのか。キャリアバンクの佐藤良雄社長に聞いた。
 ――道内雇用環境への影響をどうみますか。
 「自民党に政権が戻り、民主党に期待できなかった公共事業などの経済政策が大胆に出てきた。実施はこれからだが、政権交代だけで株価が上がり、円安に振れた。国民からの期待は大きい」
 「雇用対策には失業中の若年労働者の雇用を促す仕組みが盛り込まれた。道内でも雇用の創出を期待できる」
 ――道内では公共事業が雇用に結びつくよう期待する声が強い。
 「建設・土木業界は公共事業の縮小で長期にわたって身を縮めてきた。企業が持つ設備は縮小し、建設・土木業から観光、食品など他産業への転職が進んだ。公共事業に携われる人材数は相当落ちている。さらに震災復興でインフラ整備や家の建て替えなど、官民による建設需要が高まり、重機や人手が東北地方に移っている」
 「建設・土木関係の人材は地域に必要最小限しか残っていない。政府の公共事業が増えても、機械は借りられるが、人はいないというのが現状で、人手不足が顕在化するだろう。かつて建設・土木業で働いていた人材を呼び戻すしかない。雇用創出効果は限定的なものになる」
 ――道内には月間10万人の求職者がいます。
 「公共事業で生まれる雇用はゼネコンや下請けではない。孫請けかひ孫請けの中小企業による採用で、仕事もきつい。求人はあっても、そこで働きたいという人がいなければ、雇用を創出できない」
 ――公共事業発注による人手不足が生じないようにする方法は。
 「今後、不足を補うために道内の建設・土木業は東北から一部人材を引き揚げるだろう。影響を和らげるために、政府は適正な量で公共事業を発注することが重要だ」
 「地方の適正な処理能力に合わせた発注規模が望ましい。一度に大量の事業を発注されても受け入れられない。夏の参議院選前に票獲得を狙い、大量発注するといったことがないよう求めたい」
 ――緊急経済対策は大胆な規制改革の検討も打ち出しました。
 「雇用環境の改善には経済対策に加え、規制緩和も不可欠だ。適切な規制緩和を進めることで雇用を改善できる。たとえば最低賃金の弾力運用や解雇規制の緩和などが必要だ。人材を採用しやすく解雇しやすい環境をつくれば、企業による雇用は増える」
 ――道内雇用の今後の見通しは。
 「企業側は採用に慎重になっている。中国経済の減速懸念や欧州の財政不安など景気の展望が不透明で、不安要素が多い。高齢社会を迎え雇用期間はさらに延び、人件費が膨らむ可能性も高い。最もリスクの高い長期投資である雇用を控えざるを得ない」
 「道内における雇用創出には、基幹産業である農業への民間参入を後押しする政策が必要だ。民間企業が農業分野に資金を投下しやすい呼び水をつくる。たとえば農業で働く労働者を雇いやすいように社員寮建設費の補助などを検討すべきではないか」

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