2013年1月22日火曜日

三越伊勢丹HD社長大西洋氏――ネットとの競合危惧


 ――昨年12月の年末商戦はさえなかった。

 「防寒衣料が昨年11月に一気に売れた反動だ。クリスマス商戦も間際になってようやく動き出した。ボーナス支給額の減少など所得環境の悪化は直接的な影響ではないにしても、経済環境の厳しさは続いている」
 「株高と円安で景気回復ムードが広がるが、実体は変わっていない。投資家のマインドは変わったが、消費者の行動には現れていない。経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が変わらないと消費は動かない。足元の株高にしても先行きは楽観視していない」

 ――年始の出足不調は冬のクリアランスセールを先送りした影響が出ている。

 「1月は伊勢丹新宿本店でも前年同月比7%くらいのマイナスだったとみている。だが、大切なのは百貨店の『あるべき姿』を追求すること。需要の最盛期に大幅値引きして客寄せをするのは中長期的にみてマイナス。こうした取り組みを実行したうえで、今期、約束した連結営業利益250億円はきっちり出す」

 ――ネット消費が大きく広がっている。百貨店への影響は。

 「ものすごく競合している。ネット通販はこれから本格的に取り組み、年200億円規模の事業に引き上げたい。ただ、それだけでは満足できない。新しいビジネスモデルを作っていかなくてはならない」
 「それには人材が必要だ。外部と提携したり、外部人材を登用したりする。昨年立ち上げたネット上で情報を発信する会社はそうした事業戦略の一環だ。将来的にはファッションに関心のある人が集まるサイトに仕立てたい。通販では自社で企画・生産する独自商品の比率を高める。三越伊勢丹でしか買えない品をそろえ違いを出す」

 ――海外展開は。

 「5年以内に売上高で年1000億円に引き上げる。成長著しい東南アジアでは新店の数を追うのではなく、店舗網の再編も視野に入れている。年末に店舗数が6店となるシンガポールでは収益性を高めるためにも、3万平方メートル規模の旗艦店が必要になる」
 「シンガポールを軸にインドネシア、マレーシア、タイと店舗網を広げ東南アジアでの存在感を高めたい。競争が激しい中国では百貨店単独ではなく、デベロッパーと組んで大型商業施設を展開していく」

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