2013年1月24日木曜日

名経営者に学ぶ仕事術 土川元夫氏(名古屋鉄道)

 企業は毎日のように様々な会議を開く。ちょっとした職場のミーティングから、部門を横断して会社の指針などをまとめる委員会、役員が勢ぞろいして課題を議論する経営会議まで。これら一連の会議をどれだけ効率的に運営できているかが、企業の強さを左右するように思う。
 私は総務部での仕事が長かったこともあり、会社全体を巻き込む重要な会議の事務局をいくつか担当した。インサイダー取引規制やコンプライアンス(法令順守)、災害対策などの議論が盛り上がった時期で、新しい委員会が次々に設置された。参加メンバーは激務に追われる各部門の重鎮たち。いかに効率的に議論をまとめるかには苦労した。
 会議の効率を上げるには一定のルールを決めておかなければならない。会議の目的、時間、資料の作り方など内容は多岐にわたる。ルールを曖昧にしておくと、議論がまとまらず、何時間かけても結論が得られない場合もある。どうすべきなのか悩んでいる時に、名古屋鉄道元社長、土川元夫の「私の履歴書」にヒントがあった。
 土川は「労務の土川」として知られ、犬山モンキーセンター、明治村など、中京経済圏の振興に大きく貢献した人物である。一地方の鉄道会社にすぎなかった名古屋鉄道を、全国規模で事業展開する複合企業体に育て上げ、「名鉄中興の祖」と呼ばれる名経営者のひとりだ。
 社内では典型的な「ワンマン社長」として君臨したが、労働組合とは協調を心掛けた。社会貢献、株主の利益安定、従業員の待遇改善を3軸とする「利益3分配」の方針を示し、労使一体となって経営合理化に取り組んだ。その実現のために設置した合理化委員会の取り組み方について、「私の履歴書」で次のように書いている。
 「合理化委員会にはいろいろの分科会を設けて会社全体を洗い直した。委員はおよそ10人程度で、分科会には研究員を配置した。私はこの研究活動の方法を次のように決めた。
1、抽象論はやめる。
2、現状にこうでいしない。いっさいの社内規則、時には法律も白紙として研究する。
3、体面論を否定する。
4、感情論を否定する。
5、七分三分の原理に従い、採決は満場一致をとらない。七分の賛成があればテストし、テスト期間中に訂正していく。
6、合理化は時間のファンクションであると自覚する。
 このほかに経費の10%以上の節約にならぬことはしない、合理化への投資も1年以内に戻らないものはやらないこと、などがあった。合理化委員会は画期的な成果を収めた。委員会発足後2カ年にして20億円以上の経費節約に成功した」(『私の履歴書』経済人13)
 私は土川が定めたルールを参考に、自分なりの会議運営のルールを考えていった。まず会議の目的によって参加人数を制限し、会議で使う資料や議論の内容は全員で共有できるようにする。無駄な時間を浪費しないためだ。会議で何を決めるのか、いつまでに結論を出すのか、といったことも事前にメンバーで共有しておく。これがないと会議の方向性が定まらない。さらに、決議事項は満場一致では決めない、定期的に会議の流れを見直す、といったルールも定めた。
 会議の主宰者は参加メンバーに対し、最初の段階でこうしたルールを明示しなければならない。さらに運営を支える事務局の熱意と工夫が加われば、会議の質は高まっていく

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