価格低迷・原料高が打撃 来期、「営業黒字を確保」
はごろもフーズが苦戦している。デフレによる販売価格の低迷と原料価格高騰というダブルパンチに見舞われ、2013年3月期の連結業績は2期連続の最終赤字となりそう。足元の為替の円安傾向もコストの一段の上昇につながる可能性が高い。溝口康博社長は業績立て直しに向けて、14年3月期には主力のツナ缶詰「シーチキン」の値上げが避けられないという考えを示した。
――「シーチキン」の参考小売価格は07年に引き上げて以来、据え置いています。
「消費者の低価格志向と円高の進行などを受けて中国などから安価な海外製品が流入。小売業界のプライベートブランド(自主企画)商品も浸透した。当社のようなナショナルブランドを取り巻く環境は本当に厳しく、値上げしたくてもできない状況が続いてきた」
――今期は2期連続の赤字に陥りそうです。
「販売価格が低迷する一方、缶に使う鉄や、原料のカツオやマグロの価格が上昇し、円高の恩恵を打ち消した。海外での原料価格は高止まりしており、昨年末からの円安が輸入コストの上昇につながる。当社の場合、円がドルに対し10円安くなると、年間7億~8億円の利益が無くなる」
「これまで製造現場でのムダの排除などコスト削減に努めてきたが、自社努力の限界はとうに超えた。14年3月期中にはシーチキンなど主力商品の値上げが避けられないと考えている」
――消費者の低価格志向は依然として続いています。値上げは容易ではないと思いますが。
「確かに消費者は価格に対して敏感だ。容量を減らして実質値上げにするか、参考小売価格を引き上げるかはこれから議論する。ブランドや商品力を強化するなどして対応したい」
――具体的にどう訴求していきますか。
「引き続きメニュー提案型の販促に取り組む。これまではシーチキン主体だったが、今年は『シャキッとコーン』や『朝からフルーツ』など他の商品にも導入する。コンビニエンスストアで人気のパンやデザートを手軽に家で再現する方法など食べる楽しさを伝えたい」
「60歳代以上に配慮した商品も充実させる。例えばシーチキンでは、アルミシールで蓋をした商品のデザインを変更し、品目数も増やす。『やさし~る』と名付けた新たな缶が店頭に並ぶ春先には広告も打つ」
「『やさし~る』は手の力が弱くても爪が長くても開けやすいが、特殊な設備が必要で製造コストが上がるのが難点だ。この缶を全面採用するには協力会社を含め大きな設備投資が必要。消費者の反応を見ながら、慎重に判断したい」
――コスト減のために海外生産を進める考えはありますか。
「当社は内需に応えるという前提に立っている。国産であるという安心感を消費者に与えられることや原材料の手当てのしやすさなどを考えると、現在の工場体制は最適だと考えている」
――14年3月期の業績をどう見ていますか。
「来期は最低でも営業黒字を確保しなければならない。売上高を無理に追おうとは思わないが、商品内容などで付加価値を出し、規模が小さくても利益が出る体質にしたい。(消費冷え込みの懸念がある)消費増税前ということもあり、今年は正念場だ」
ツナ缶の代名詞
問われる真の力
焼津市内にあるシーチキンの工場を訪れて驚いた。蒸した魚の身を従業員が一つずつほぐしていた。機械では適度なほぐし身を作りにくいという。「セールの目玉になりやすい」という現状を見ると、商品の価値とこだわりは、どれだけ消費者に伝わっているだろうか。
溝口社長は値上げが不可避だとしたが、上げ幅やタイミングの判断は難しい。価格重視の風潮が強まるなか、ツナ缶詰の代名詞とも言われる商品をどのように訴求し、消費者離れを食い止められるか。ブランドの真の力が問われそうだ。
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