2013年1月22日火曜日

LIXILグループ社長藤森義明さん――「住」の総合力訴える


消費者との「接点」磨く

 INAXなど5社を2011年4月に統合した、建材・住宅機器最大手のLIXIL(リクシル)グループ。藤森義明社長兼最高経営責任者(CEO)は攻めの経営に転じるにあたり、「住まいのすべてがそろう総合力」を直接、消費者に訴える姿勢を強調する。ショールームを見直し、今年2月には全商品分野でLIXILの統一ロゴを導入。今後も顧客との「接点」に一段と磨きをかける。
ショールームの展示に統一感

 ――今年は攻めの年と位置付けていますね。
 「2月にトイレ、風呂、キッチン、サッシ、エクステリアなど、当社が扱う全ての分野で、ほぼ一斉に新製品を投入します。いずれも統合前の企業のブランドと『LIXIL』を合わせたロゴマークに統一します。これまで各社が築き上げてきた財産を、新たな体制が引き継ぐことを明示するわけです」
 「この2年間は組織の見直しや営業拠点の再編に努め、経費削減を進めてきました。ようやく組織固めが完成し、LIXILグループとして筋肉質の営業体制が整ったと思います。今年は大きく飛躍する年になります」
 ――新製品の開発で強く意識した点は。
 「やはりLIXILの統一された世界観の提示ですね。当社の製品で家を作り上げていくと、どんな生活シーンが描けるのか、を伝えることに心を砕いています。製品を売るだけでなく、家の中の空間、庭の情景などをお客様に思い描いてもらえることが重要です」
 「もともと当社の商品力は強い。サッシ、バスルーム、キッチン、洗面化粧台などシェアトップの製品群をそろえ、それ以外の分野も大半が2、3位に位置しています。これからもナンバーワン製品を出し続けます」
 ――それにはブランドの認知度を一段と上げる取り組みが重要です。
 「テレビCM、雑誌などマスメディアを活用するほか、北海道から九州まで全国に8カ所ある基幹ショールームでの展示会に力を入れます。展示内容には統一感を持たせ、『ここに来れば何でもそろう』とお客様に認識してもらわねばなりません」
 ――消費者との「接点」を今まで以上に重視するわけですね。
 「これまでは工務店や代理店に住設機器を販売するBtoB(企業間取引)の企業イメージが強かった。でも12年にマーケティング本部を立ち上げ、お客様の声を直接すくい上げる体制を整えました。そこでショールームから製品開発まで、消費者目線で仕事を組み立てる意識を全社に浸透させたのです。いわば『LIXILグループとはどのような会社なのか』を再定義したわけです」
 「今後は、お客様とリフォームなどを通じて長くお付き合いする心掛けが大事になります。太陽光発電により家庭で電力を作る『ゼロエネホーム』など、当社のビジョンもショールームで訴え続けねばなりません。こうしたビジョンを消費者に伝えるには、工務店や中間流通業者にも理解してもらわねばならないので、社員がこまめに説明にうかがっています」

ビバホームでリフォーム提案

 ――ホームセンターのビバホームも、消費者との重要な接点になりますね。
 「まさにその通りで、広い売り場を最大限に活用して、大型のリフォームコーナーを設けられます。実際にリフォームした住まいの形を展示することも可能ですね。一方で、中小工務店や専門業者向けのプロ用資材を扱う店も積極的に展開する考えです」
 ――今後の市場環境をどう見ていますか。
 「建設・住宅業界にはこれから5年程度、追い風が吹くと予想しています。足元では東日本大震災からの復興需要がありますし、耐震など災害への備えも見込めます。新政権が住宅需要を刺激する政策を打ち出す可能性もあるでしょう」
 ――1997年の消費税率引き上げ後は、駆け込み需要の反動で業界が苦しみました。
 「当時と今とでは環境が違います。97年はベビーブーマー世代の多くが住宅購入に動きました。今回はそれほどの規模にはならないはずです。むしろ当時購入した住宅のリフォーム需要がこれから見込めます。それこそ当社の製品と長くお付き合いいただくきっかけになります」
 ――米GE(ゼネラル・エレクトロニクス)の上級副社長を務め、現地での生活が長かった経験を踏まえ、日本の住宅市場をどう見ますか。
 「米国は圧倒的に中古市場が大きい。これら中古物件は大規模なリフォームによって価値も上がります。日本はまだ新築主体の市場ですが、ゆくゆくは耐用年数が長いストック型市場になっていくでしょう。長く住んだ家には愛着がわきます。そこで役立つビジネスを育てたいですね」
 ――グローバル展開にも積極的に取り組んでいます。
 「16年3月期までに国内事業2兆円、海外事業1兆円の売上高達成を目標にしています。海外事業に関してはM&A(合併・買収)も大きな選択肢です。その場合、相手先の経営は事情をよく知る現地の人に委ねることになるでしょう」

業績データから海外市場の開拓急ぐ

 LIXILグループの12年3月期連結業績は売上高が前期比6・3%増の1兆2913億9600万円、経常利益は前期比58・8%減の161億2500万円だった。断熱窓の販売拡大やホームセンターの出店が増収に寄与。一方、タイの洪水で現地工場が操業停止し、国内で代替生産したため費用がかさんだ。

 事業会社5社統合からの2周年を控え「投資家はさらなる成長戦略を求めている」と藤森社長。そこで見据えるのが、中期計画で掲げる「16年3月期までに海外売上高1兆円」の実現に向けた欧州市場の開拓だ。まずは11年12月に買収したイタリアの外壁材大手ペルマスティリーザの販路を活用しトイレやキッチンを売り込む。もっとも、12年3月期の海外売上高は539億円。計画達成には第2、第3の海外M&Aが不可欠となりそうだ。

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