2013年1月22日火曜日

レジャー消費の行方 常磐興産社長斎藤一彦氏


「原発」風評払拭に全力
 ――2012年を振り返ると。

 「『感謝』という言葉に尽きる。運営するスパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)は東日本大震災後に休業し、昨年2月に営業を全面再開した。それ以降、全国から予想を大きく上回るお客様が来てくださった。とにかく無我夢中でなんとか乗り切ってきた」
 「13年3月期の入場者数は138万人と震災前の95%程度と予想している。現在、福島県内のホテルや旅館の観光客は中通りや会津地方で震災前の8割ほどなので、まずまずの回復だ。正月の入場者数も震災前を2割弱上回った。復興支援の団体客が増えている。土産を買い、飲食もしてくれるので、客単価も震災前に比べて2割ほど上昇している」

 ――今後、重点的に取り組みたい施策は。

 「なんと言っても東京電力福島第1原子力発電所の事故による風評被害の払拭だ。首都圏からの入場者について、中高年は震災前と比べて2割近く増えているが、子ども連れは2~3割減ったままだ。風評払拭に向け、地元企業や商工会議所とともにNPO法人も立ち上げた。食品に含まれる放射性物質や空間放射線量の検査をしており、この活動も軌道に乗せていきたい」
 「これまでは『感謝』をテーマにしてきたが、今年は『イムア・未来へ』とした。(イムアは)ハワイ語で前進を意味する。地震、津波、原発事故で壊滅的な被害を受けた福島が、未来に向かって力強く進んでいく姿を次代を担う子どもたちに見せたい。そこで、4月から全国の小学校にフラガールが出張し、子どもたちと対話するキャラバンを始める。交通費などは当社で負担し、学校側には求めない」

 ――今後の設備投資計画は。

 「被災施設の修復に約50億円、昨年2月に開業した新ホテルに約50億円投資しているので、今年は大型投資は予定していない。ただ、フラガールのショーが予想以上に好評で、立ち見でも見られないほどなので、春以降、現在より300席多い1500席ほどにする予定だ。投資額は数億円程度になるだろう。ショーと温泉が最大の商品なので、今後もこの2点に重点を置き、4~5年に1回は消費者の目先を変えるような投資をしていく」
 「ショーも今月16日に刷新した。故郷・福島へのフラガールらの思いを歌詞にした、オリジナル曲を初めてつくり、その曲に合わせてダンスを披露するというのが目玉だ」

 ――新政権への要望は。

 「景気浮揚、デフレ脱却はもちろん、東北の観光振興に国を挙げて取り組んでほしい。NHK大河ドラマ『八重の桜』の放送が始まり、今年は福島を訪れる人も増えると期待している。従来の活気のある街を早く取り戻したい」
記者の目
「応援消費」後の
ファン育成課題
 常磐興産の2013年3月期の売上高は前期比53%増の453億6000万円、最終損益は15億円の黒字(前期は88億5300万円の赤字)を見込んでいる。予想以上の「復興応援消費」が続いており、上ぶれする可能性もある。
 ただ、応援消費はいつまで続くかは分からない。このため、震災後に獲得した新規客に新たな魅力を提示し、リピーターにすることができるかどうかが今後の業績を左右しそうだ。子ども客の回復や訪日外国人の獲得も課題だ。

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