2013年1月22日火曜日

復活なるか家電王国――自前主義排し世界標準を


 「皆さんは我々をテレビメーカーと思っているようだが」。米国で開かれた家電見本市で、パナソニックの津賀一宏社長が今後は産業分野に力を入れると講演し話題となった。ソニーの平井一夫社長もテレビと連携できるスマートフォン(スマホ)を発表、日本の家電産業の反撃が始まった。

 今回の見本市は、テレビ事業で大幅損失を計上した日本の家電各社が復活へのシナリオをどう描くかが注目された。その切り札が現行テレビの4倍の解像度を持つ「4K」の技術や、バックライトの要らない有機ELテレビなど。サムスン電子など先行する韓国勢に一矢報いる形となった。

 だが会場では「アップルやグーグル、アマゾン・ドット・コムなどが出展しない家電見本市に意味があるのか」という声も聞かれた。音楽や映像の視聴手段は今やインターネット。技術をリードするのはそうした米ネット企業だからだ。

 4Kなどハードの開発は重要だが、製品だけでは価格競争に飲み込まれてしまう。それに高画質にこだわるのはマニア層で、多くの消費者の関心は「アップルはテレビを売るのか」「NTTドコモはiPhone(アイフォーン)を売らないのか」といったことだ。
 この2つの問いに共通するのは、様々なコンテンツをいつでもどこでも簡単に楽しみたいというデジタル世代の欲求だ。プレーよりも道具の良しあしにこだわってきたアナログ世代とは異なる。アップルの成功もそうした消費者の要望をかなえたことにある。
 そう考えると、日本企業が家電市場で再び主導権を握るには、従来のデジタル家電に加え、白物家電や自動車、住宅など生活回りのモノを上手につなぎ、快適な新しい生活様式をどう提案できるかが鍵を握る。

 その一つが会場でも話題を呼んだスマートTVだ。この分野はアップルもグーグルもまだ技術を確立していない。日本もNHKが「ハイブリッドキャスト」と呼ぶ放送とネットの融合技術を広めようとしている。
 ではスマートTVで日本が主導権を発揮するにはどうすべきか。まずアップルとドコモが自前技術を競い合う構図は得策ではないだろう。独自規格にこだわれば、再び閉鎖的な市場を作りかねない。日本の家電技術と米国のネット技術を持ち寄り、一緒に世界標準を作るのが王道だ。

 ドコモは日本の民放各社と2012年4月からスマホ向け有料放送「NOTTV」を始めた。契約件数は約50万と伸び悩んでいるが運営会社、mmbi(東京・港)の二木治成社長は「ソーシャルメディアと連動したら反応がいい」と話す。もはや放送とネットは切り離せない関係にある。

 日本の家電産業が失速したのは、ネット技術で攻めてきた米国勢とウォン安を武器とした韓国勢との挟み撃ちにあったためだ。韓国との競争は円高が是正されれば和らぐかもしれないが、技術革新に基づく米国の優位性はゲームのルールを変えない限り続く。
 だとすれば、パソコンや携帯に次いでテレビや車がネットにつながる今こそ、日本企業は自前主義を排し持てる技術を動員して、世界に通じるビジネスモデルを創り出す必要がある。

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