2013年1月23日水曜日

九州電力社長瓜生道明氏、沖縄電力社長石嶺伝一郎氏


 ――厳しい経営環境が続く。

 「今年は電気料金の引き上げや原子力発電所の再稼働など、多くの課題の解決を迫られる厳しい1年になる。重点課題は3つ。値上げに向けて丁寧な説明を実施するとともに、徹底した合理化の推進、原発の安心安全の取り組みを強化して再稼働に全精力を傾ける」

 ――値上げに対する理解は得られているか。

 「企業向けでは、営業担当者が約8割の大口契約先を訪れた。『やむを得ない』との答えを含めると、約7割には理解を得られたのではないか」

 ――原発再稼働を7月と想定している。

 「原子力規制委員会が7月にも新たな安全基準を決めることから、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機が再稼働すると想定した。もし再稼働が遅れると、1基あたり1カ月90億円のコスト増になる。資金的に耐えられるのは数カ月で、さらに緊急避難的な対応を取らざるを得ない」
 「発電所などの(定期)修繕を止め、設備が壊れたら直すといったぐらいしか対応策はない。再値上げを申請するとしても、世間がそう簡単には許してくれないだろう」

 ――九電は変わったか。

 「東日本大震災以降、新卒募集は以前のような倍率になっていない。敬遠している人が多く、電力業界がどのような目で見られているかを端的に表していると思う」
 「過去の経営者は権威主義的に会社を統治してきた。大企業だからそうでなければまとまらなかったが、今は違う。号令を掛けるだけでは社員は動かない。思っていることを丁寧に伝えて、理解してもらうための努力をしなくてはならない」


 ――吉の浦火力発電所(沖縄県中城村)が営業運転を始めた。

 「県内初の液化天然ガス(LNG)火力の稼働で、長期的な電力の安定供給手段を確保、エネルギー源の分散、二酸化炭素(CO2)排出量が石炭の半分程度となるなどの効果がある」
 「電力需要が小さく原子力発電を持たない沖縄では、今後も火力発電が主力となる。これまで発電量の76%を石炭、22%を石油に依存してきたが、LNGを全体の30%程度まで引き上げたい」

 ――コスト見通しは。

 「吉の浦火力発電所の総事業費は1千億円。昨年11月の1号機、今年5月の2号機稼働で、13年度は減価償却費が大きな負担になる。LNGは石炭より価格が高いため燃料費が増えるほか、円安・ドル高も収益の悪化要因となる」
 「設備の保守・点検を効率化してメンテナンス期間を短縮するなど、各部門でコストの削減を徹底する。収支バランスを維持し、当面は電気料金の維持に努める」

 ――電力システム改革へ向けた議論が進む。

 「採算性が厳しい小規模離島を多く抱え、電力系統が独立する沖縄県では電力の安定供給を目指すことが第一だ。沖縄本島や離島で同一の価格やサービスを維持するためにも、沖縄の特殊性を訴えて発送配電の一貫体制を守っていきたい」

 ――再生可能エネルギーの導入計画は。

 「本島北部の大宜味村で、風力発電の実証研究を始める。小規模離島では、強風に対応できる可倒式の風力発電設備の設置を進めていく。潮流発電の実験に向けては、設置候補地を調査する」

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