ビール業界で激しくシェアを争うアサヒビールとキリンビール。アサヒは福島県本宮市、キリンは仙台市内の工場が被災して、ともに秋までは稼働できない。だが両社のトップは電力業界の節電要請に応じながら、他工場の増産によって夏商戦には十分な商品量を確保できると強調した。
ドライにこだわり 鮮度・温度次は感度
――震災は今年のビール市場にどう影響する。
「年間では昨年とあまり変わらず、市場規模は前年比2~2・5%マイナスで落ち着くのではないか。当社調査でも原発事故などで消費者の安心・安全への意識は従来以上に高く、定番回帰につながるだろう。(5月に割安な第三のビールの出荷が急伸したが)ロングセラーの通常のビールの支持はむしろ高まり、第三のビールが急増する年にはならないとみる」
――西宮工場の閉鎖を来夏に延ばし、福島の再稼働は秋に延期した。今夏の生産計画に変化は。
「消費動向は読み切れないが、最盛期に前年比1割増の供給体制を組むのは変わらない。関西でも電力不足の問題が出てきたが、夜間や休日に生産や作業をシフトするなどで対応する。外壁が壊れている福島工場は焦らず安全を担保して復旧に取り組む。放射能検査機も入れ、水など材料も調べているが問題はない」
――新アサヒビールの経営方針は。
「トリプルSに重点を置く。Sの意味はまずは『創造』そして『新価値提案』。国内のものづくりと販売を担う当社は、消費者の潜在ニーズを具体化する商品を生み出す創造が最大の使命。時代とともに変わる消費者の価値基準にあった提案が大切だ。さらに商品を通じて『信頼・親近感をもてる経営』を目指す」
――業界はビール類以外の強化を急いでいる。
「もちろんウイスキーや焼酎などにも力を注ぐが、まずはビール類にこだわりたい。当社のシェアが37%といっても、かつてキリンビールは60%を超えていた。過度なシェア競争をするつもりはない。新市場をつくり出し、開拓できる」
――スーパードライの伸びをどう持続する。
「発売25年目だが顧客満足をさらに追求する。『鮮度』に加え昨年は氷点下に冷やして飲む『温度』の提案で販売を伸ばした。今月銀座に開いた『エクストラコールドBAR』は2年目も好調だ。次は『感度』がキーワード。価値観が変化する消費者の五感に的確に訴えてブランドを高めたい」
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