画像動画化有料で展開 世界会員200万人目標
カシオ計算機がデジタルカメラ事業の立て直しに向けてインターネットサービスとの連携を模索する。近く、デジカメ画像を動画に変換する新ネットサービスを開始。月額課金に乗り出して新たな収益源に育てる考えだ。樫尾和雄社長に成長への回帰策を聞いた。
――デジカメ事業は2011年3月期まで3期連続で営業赤字が続いている。
「カシオが展開するコンパクトデジカメは特に価格下落が激しい。製品数の絞り込みと経費削減を進めて黒字化を目指す。具体的には、デジカメ事業は500億円程度の売り上げ規模で採算がとれる体制を整える」
――成長戦略は。
「ハード事業以外のビジネスを拡大する。デジカメ事業で培った画像処理ソフト技術などを使って、利用者が撮影した写真をネット経由で加工するサービスを強化する。これまでのデジカメ事業は『売り切りモデル』だった」
「今後は、デジカメと連動する月額のネットサービスを始めて、デジカメ利用者らから継続的に収益を得られる事業モデルを構築する」
――具体策は。
「カシオが展開するネット経由のデジカメ画像の加工サービス『イメージング スクエア』を使って、デジカメ画像を簡単に動画にできる新サービスを近く始める。デジカメ画像から被写体をくりぬき、音楽などに合わせて動く画像を簡単に作成できる。月額サービス料金は、数百円程度になる見通しだ。来年3月までに世界200万人の有料会員獲得を目指す」
――ネット領域はベンチャーなどの参入がある。勝算はあるのか。
「新たな動画サービスは、電子楽器やデジカメ事業などカシオの技術を基に開発する。新サービス開始で文章を使ったコミュニケーションに動画や音楽などが加わると思っている。電子メールを変える可能性もあるだろう。ネット事業に賭けている」
――デジカメとの相乗効果はどのように見込むのか。
「デジカメ製品でも巻き返したい。従来の発想にとらわれない、無線通信でネットにつながるデジカメを開発中だ。今後は、あらゆる機器がネットにつながる。カシオはデジカメで先行する。カシオが得意とする腕時計とネットをつなぐ構想もある」
――業績への寄与は。
「業績が低迷していた携帯電話端末事業と中小型液晶事業は、他社との資本提携などで連結対象から外した。残りの課題がデジカメだ。同事業ではまず売り上げ規模500億円で営業赤字を消す体質を早期に構築する。同時に、ネット事業で売り上げの拡大を狙う。『ハード』と『ネット』が連動する事業を1つの形として残したい。そこまでは、どうしても自分でやるつもりだ」
記者の目
82歳の創業者
新モデルに挑む
電卓、電子時計、デジカメなど1957年の設立から「ゼロからイチを生み出してきた」(樫尾和雄社長)カシオ計算機。しかし、今回本腰を入れるネット事業は、ものづくりにたける同社が初めて手掛ける“触れない”商品となる。
電機業界ではソニーなどもハードとネットを組み合わせた新モデルの構築を目指すが、解が見いだせないまま。同分野で成功したのは米アップルなど一握りの有力企業に限られており、「ハードとネットの連携」は容易でない。
だが、カシオがハードからネットへという「時代の流れを背景とした新事業を立ち上げる必要がある」(同)のは間違いない。
新事業の母体となるネットサービス「イメージング スクエア」の会員数は現在30万人程度にとどまる。82歳の創業者が掲げる目標は高い。
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