2011年6月22日水曜日

市進HD社長下屋俊裕氏

学研HDとの提携どう生かす 映像教材など相互補完
 少子化の逆風が強まるなか、学習塾では生徒獲得競争が激しさを増している。市進ホールディングス(HD)は昨年9月に学研HDとの提携交渉を開始。両社のノウハウを活用し、縮小市場での成長戦略を模索し始めている。今年5月に就任した市進HDの下屋俊裕社長に今後の経営方針などを聞いた。
 ――東日本大震災の影響は。
 「震災前までは新規入校の申し込み状況が昨年より好調だった。3~4月に獲得できるはずだった生徒を取り込みきれてはいないが、少しずつ回復基調に向かってきている。5月の生徒募集は前年に近いくらいの水準に追いついてきた」
 ――夏季講習の申し込み状況は。
 「小学校低学年は動きが鈍いようだ。今でも原子力発電所などの問題が続いていて不安はぬぐいきれない。急な停電があれば電車が止まる可能性もある。そういったリスクを考えると、子供をなるべく外に出したくないと思う保護者もいるだろう。保護者の実家に帰省した先で、夏季講習に通うという子供も出てくるのではないか」
 ――学研HDとの提携の進捗状況は。
 「学研HD傘下の学習塾『学研CAIスクール』の一部校舎で市進の映像教材を導入し始めた。これまでCAIスクールには高校生向けの教材がなかった。逆に市進では学研の科学教室の展開を進めている。学研は高校生、市進は小学校低学年の取り込み強化につなげたい」
 「学研には(休刊した学習雑誌の)『科学』をはじめ良い教材がたくさんある。教材の掘り起こしを進めて映像解説を付けるなどの取り組みも考えたい。実際の科学教室の様子も映像教材にして、個別指導などでの利用も検討したい」
 ――映像教材の開発に力を入れている。
 「個別指導でも先生に分からない所を聞くのをためらう生徒は意外と多い。映像教材であれば繰り返し見ることができ、自分のペースで学習しやすい利点がある。最近の生徒はゲーム世代なので映像教材への抵抗感も小さい。様々なレベルに応じた映像教材を用意することで、取り込める生徒の幅も広がる。上手に活用して個別指導を徹底したい」
 ――夏季講習の節電対策については。
 「例年よりも授業の運営が難しくなるだろう。しかし生徒にとって夏休み中の勉強は秋以降の生活が大きく変わるきっかけにもなる。例えば高校生は予備校や学習塾での夏季講習と自宅学習なども含めると、夏に400時間勉強するといわれている。生徒の自信につなげるためにも安定して授業を受けられるような体制を整えたい」
 ――「サマータイム」を導入する企業が相次いでいるが、教育面で影響はあるか。
 「2学期に向けた説明会を週末ではなく平日に開くことも可能になる。保護者が平日の夜に塾に来てくれる機会が増えれば個別の進路相談を持ちかけやすくなるかもしれない。家庭で親子が話し合う機会が増えると、子供の語彙力が増えるので教育にもプラスになると思う」
記者の目
未就学児からの一貫体制急ぐ
 学習塾や予備校では縮小市場での生き残りをかけて、業界再編が活発だ。予備校大手が中学受験専門塾を買収するなど、各社は生徒の年齢層を広げ一貫した指導体制の構築を急ぐ。市進HDは主力の学習塾「市進学院」で小学校3年から対応しているが、学研HDと組むことで未就学児の取り込み強化を目指す。
 最近は学童保育や保育所の運営に参入する学習塾も目立つ。下屋社長は「長く市進グループに通ってもらうきっかけになる」と興味は示すが、子供を長時間預かる必要があるだけに「リスクも大きい」と慎重だ。中学受験競争も落ち着きつつあるなか、低年齢から塾に通う利点をどうアピールできるかが今後の成長のカギを握る。
 しもや・としひろ1977年順天堂大院卒、市川進学教室(現市進ホールディングス)入社。2010年市進ウイングネット社長に就任。11年5月から現職。鹿児島県出身。58歳。

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