2011年6月22日水曜日

日本製紙グループ本社社長芳賀義雄氏

海外市場の開拓目標は?
世界で売上高5位以内に
 日本製紙グループ本社は東日本大震災で主力の石巻工場(宮城県石巻市)が被災した。2011年3月期は災害関連の特別損失が627億円に膨らみ、241億円の最終赤字を計上した。生産体制の再構築や海外戦略について、芳賀義雄社長に聞いた。
 ――震災で影響を受けた国内生産の立て直しが課題です。
 「印刷用紙の需要が金融危機前の8割程度にとどまっていたところに、震災が起きた。震災前から需要環境に見合った生産体制づくりに取り組んできたが、石巻工場の被災状況も考慮したうえで、国内生産能力の縮小を前倒しで進める」
 「石巻工場も需要が安定している品目で、収益が見込める生産機械から順次運転していく」
 ――生産能力の縮小にあたり、工場・設備を選別する条件は何ですか。
 「各拠点のコスト競争力が基準になる。生産能力の低い設備や工場を止め、能力の高い設備に稼働を集中させることで、収益率を高めていく」
 ――輸出回復はどの程度、見込んでいますか。
 「石巻工場では輸出向けに月2万トンを生産していたが、現在は稼働が止まっている。海外市場で競争力のある製品については輸出を続けるが、設備余力があるからというだけで輸出することは考えていない」
 ――12年3月期を最終年度とする中期経営計画は達成が難しそうです。
 「今期で550億円の経常利益目標を掲げていたが、震災が起こってしまった。8月3日に予定している11年4~6月期の決算発表時に、中期復興計画と今期の業績予想を開示する方向だ」
 ――海外市場をどう開拓しますか。
 「16年3月期までに海外売上高比率を30%に高め、世界で売上高5位以内に入ることが目標だ。国内需要が厳しい分、アジア・オセアニアでの成長をめざしたい」
 「豪州では、紙全般で十分な成長が望める。中国は印刷用紙メーカーが大規模な投資をしている。このため、印刷用紙より段ボール原紙などの板紙が将来的に伸びるとみている」
 ――前期末時点で1000億円強の手元資金を抱えています。資金需要は高まるのでしょうか。
 「手元資金を積み上げたのは、震災後の金融市場の状況を想定できなかったからだ。震災対応以外の投資を予定しているわけではない。前期に計上した特別損失の範囲で国内の生産立て直しは可能だと考えている。今期は災害関連の特別損失が大幅に減る」
 「借り入れが増えたため、純有利子負債が自己資本の何倍かを示すデット・エクイティ・レシオは1・8倍となり、前の期の1・6倍から上昇した。海外投資はタイミングの問題もあるが、財務改善と成長投資を同時に進める。中期計画の目標である1・5倍を意識していきたい」
先読み・裏読み
手元資金活用を
 株価は6月9日に上場来安値を更新した後、反発に転じ、21日も5%上昇した。大和証券キャピタル・マーケッツの安藤祐介シニアアナリストは「市況回復や生産体制の再編期待が背景にある」と分析する。
 日本紙は国内の印刷・情報用紙でシェア首位だが、石巻工場の稼働停止で1割強の生産能力がそがれた。現在は競合他社がシェアを伸ばしている。震災をバネに生産効率をどう高めるか。潤沢な手元資金をどう生かすか。業績と株価はこの2点に左右される。

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