発行株の45%を握る森トラスト―イオン連合と激しく対立したパルコ。大株主の要求を受け入れて退任した平野秀一前社長に代わり5月末に就任した牧山浩三社長は、緊急登板を迫られた複雑な心境を吐露しつつ、大株主との話し合いを進める意向を表明。事態の打開に自信をみせた。主なやり取りは以下の通り。
--急きょ社長に就いた心境は。
「率直にいえば、株主総会までは複雑な気持ちだった。自分が社長の器なのかと自問自答した。後押ししてくれたのはビジネスを超えた付き合いをしてきたテナントで、パルコを発展させるにはあなたが社長をやったらという声をいただいた。パルコのDNAを下の世代に引き継ぐのが私の役目だ」
--新経営陣には森トラスト2人、イオン1人の取締役が入った。
「結果的にバランスがとれた。事業運営を客観的に見て、今まで気づかなかったことも指摘してもらえると期待している。大株主と取締役会の場で議論し、要求を伝え合うことができるので、これまでよりこまめに意思疎通もできる」
--激しく対立したイオンとの提携協議は進められるのか。
「今が本当のスタートラインに立ったところで、イオンから改めて提案があるのではないか。これまでのように頭ごなしの要求はしてこないと思っている」
「すでに本格的な話し合いに向けたキックオフミーティングを開いた。先方からパルコの現状について指摘があったが、こちらからも意見を言わせていただいた」
「提携をかたくなに拒んでいるわけではない。いろいろな企業とシナジー効果を模索していかないと先細りになる。イオンからもプラスになる提案があれば検討する」
--森トラストとの付き合い方は。
「筆頭株主とは良好な関係を築く必要がある。就任後すぐにあいさつにうかがった。相手の意向をきちんと聞き、取締役会などを通じて関係を修復していきたい」
--買収防衛策を撤廃したことで、イオンがパルコ株を買い増すリスクが高まるのでは。
「そもそも(買収への)対抗策としてそれほど強い仕組みを整えてはいなかった。資本対策としては大株主と話し合いを進めるほか、経営スピードを速めて企業価値を高めることで理解を得たい」
--2000年以降に業績が伸び悩んだ理由をどう見ているか。
「経済がデフレになり消費者は安い商品を求めるようになったが、その流れに対応できなかった。パルコの良さは新しい文化を発信し、ムーブメントを生み出す力だった。今後は時代の流れを読む人材を育て、パルコらしい斬新なテナントをつくり出すことに力を入れたい」
記者の目
資本政策見直し 経営安定に必要
牧山社長はインタビューで大株主との関係改善を何度も強調した。経営の安定に向け、いたずらに対立関係を続けるのは得策ではないと判断したようだ。ただ、大株主2社とは「一時休戦」状態になったとはいえ、いつ態度を豹変(ひょうへん)されるか分からない大きなリスクを抱えたまま。経営安定には支援企業探しなど資本政策の練り直しが避けられない。
森トラストとイオンはパルコ経営陣の刷新を実現するため株主総会に向けてパルコ株の共同保有者になっていたが、前社長退任などを受けて6月上旬に共同保有関係を解消した。とはいえ、今後も協調路線を続けるのか、はたまた単独で動くのか、態度を明確にしてはいない。牧山社長は大株主2社の一挙一動を読みながらという厳しいかじ取りを船出から迫られている。
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