2011年6月22日水曜日

海外調達・生産を拡充、三菱鉛筆・数原社長に聞く――物流確保、リスク分散も。

 東日本大震災では日用品や食品だけでなく、文具業界も大きな影響を受けた。震災後は生産面で原材料不足などが懸念されたほか、販売面では進学・進級を控えたかき入れ時に前年割れを強いられた。2010年12月期に最高益を上げたが、今後の業績をどうみるか、三菱鉛筆の数原英一郎社長に震災後の状況や今後の戦略を聞いた。
 ――販売動向は。
 「震災直後の3月は計画停電による文具店の営業時間の短縮などで、首都圏を中心に大幅に落ち込んだ。(我慢すれば使い続けられる)筆記具を買うという状況ではなかった。新学期シーズンの3月は最も国内需要の大きい月だけに、痛手も大きかった」
 「4~5月はほぼ前年並みの水準まで持ち直した。1~2月は当初予想を上回っていた。東北は国内需要の5%程度で、1年という期間で見ればそれほど大きな落ち込みにはならないだろう。しかし、消費の自粛といった『二次的』な部分での影響は避けられない。マクロ面での消費意識の変化を懸念している」
 ――生産面の影響は。
 「当社の工場などに直接の被害はなかった。ただ、各地の石油化学コンビナートが被害を受けたことで、原材料のプラスチックや溶剤などを予定通り仕入れられるかどうかが懸念された。だが、海外を含めて調達先を増やし、原材料を変更する際の品質確認のテストを短縮するなどして、意外に早く原材料の在庫を確保できた。6~7月に原材料が欠けると心配していたが、供給はつながりそうだ。業界全体でもなんとかなると思う」
 「今回の震災で原材料調達の重要性を再認識した。リスク分散の観点からも現在約20%の海外調達率を増やしたい。だが当然、日本と同じレベルの品質基準をパスする必要がある。品質や為替といった多様な要素を勘案しながら進めたい」
 ――海外生産比率も引き上げる方向か。
 「現在20%程度だが、今後2~3年で3割を目指したい。ただ増やすことが目的でなく、そういうことができる体質を整えていくことが重要だ。単に生産能力の増強にとどまらず、品質、物流、広い意味でのサービスなどをきちんと担保し、ブランド価値を高めたい」
 ――前期は最高益だったが、今後の見通しは。
 「(リーマン・ショックによる落ち込みの反動で)前期まで出荷が多かったことから、今期の経常利益は前期比10%減と比較的コンサバティブな見通しを立てている。数値的な目標も重要だが、あくまでプロセスの結果なので一喜一憂せずにやっていきたい」
 「商品面では(滑らかさで好業績をけん引してきた)高機能ボールペン『ジェットストリーム』に続く大型商品も考えている。期待してほしい」
記者の目
「日本ブランド」
商品・人で維持
 「日本が抱えている問題は『日本ブランド』崩壊の危機だ」――。震災後に顕在化した課題に数原英一郎社長は危機感をにじませた。福島第1原子力発電所の事故や、アジア製品の品質向上などで、日本製への評価が揺らいでいるという。
 それだけに、現在約45%の海外売上高比率の引き上げを目指す同社にとっては高付加価値品の積極展開が不可欠。成長著しいアジアで活躍できる日本人社員の育成、優秀な外国人社員の幹部への登用も重要だ。さらに国内でも「ジェットストリーム」に続くヒット商品が求められる。

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