2011年6月24日金曜日

奮闘日本ブランド海外戦略を聞く(上)タカシマヤ・シンガポール社長山口裕氏。

0億人市場へ布石 グループで「華人」開拓
 東日本大震災から100日あまり。福島原子力発電所事故の影響が個人消費回復の重荷となるなか、小売りやメーカーはこれまで以上に海外市場の攻略に意識を向けている。母国市場の苦境に、重みを増す海外事業の責任者らに聞く。1回目はタカシマヤ・シンガポールの山口裕社長
 同国随一の目抜き通りオーチャードロードに立つシンガポール高島屋SCは売り場面積約7万平方メートル。東南アジア最大の百貨店だ。
 「我々のように華やかさを売る百貨店商売は自粛モードや節電の打撃は避けられない。日本の厳しい状況を踏まえると、こういうときこそこっちで支えなきゃならない。そんな思いを強くした」
 「銀座や秋葉原から中国人観光客の姿が消えた、とまず聞いた。ならば『こっちにくるぞ』と。アジアの先進国といえば日本とシンガポール。パナソニックの電子レンジ、タイガーの電気釜、ケンウッドのフードプロセッサー……。行き先を変更した観光客の受け皿にするため、3月から面積を5倍に拡張した家電売り場がヒットした」
 タカシマヤ・シンガポールの2010年度(12月期)決算は営業収益が5億5000万シンガポールドル(357億円)、最終利益が3900万シンガポールドル(25億円)。売り上げ・利益ともに過去最高だった。
 「シンガポール店の平均来客数は1日5万~6万人。集客力は国内最大の横浜店並みだ。うちはごちゃまぜの地元ショッピングモールとは異なり、テナントの配置や顧客動線を意識して日本流の高級感を演出している。通路幅も広めに取っているが、それでも来客数が10万人を超えるクリスマスや旧正月は身動きがとれなくなる」
 「リーマン・ショックの打撃から昨年の売り上げ回復を主導したのは海外からの観光客。原動力となったのはシンガポールに昨年相次いでオープンした大型カジノだ。カジノ導入の是非については論争があったが、結果としてアジア諸国からの観光客が爆発的に増えた。ギャンブルが主目的でも『せっかくだからオーチャードで買い物でもしようか』という人にアプローチを試みた。彼らの購買力は尋常ではない。ブランド品の紙袋を3つ、4つと抱えて、まるで魚を買うような感覚だ」
 タカシマヤ・シンガポールは高島屋本体と共同で、来秋開業する上海店に折半出資した。
 「いまのアジア経済をけん引しているのは華人だ。こちらで売れ筋の商品や食品、ブランドを紹介し、サプライヤーを上海店に送り込む。我々は長年の取引実績でサプライヤーからの信頼を得ている。新店の円滑な滑り出しに貢献できる」
 「日本からだと見えにくいが、昨年1月の中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易協定(FTA)締結をきっかけに、経済圏の一体化が急速に進んでいる。日本の1億2000万人はとても大事。だがこちらは20億人の新たな商圏だ。グループ各社が連携して取り組んでいく」
 数年内にベトナム・ホーチミンに出店することも視野に入れている。
 「(他の日系百貨店とは異なり)小さなシンガポール国内で多店舗展開しても仕方がないと当社は考えている。むしろノウハウを集積したこの旗艦店を軸に周辺国で布石を打っていく」
 「ホーチミンの次はジャカルタをやりたい。インドネシアはアジアでいま一番元気がよく、将来性があるからだ。同国の富裕層は日本のタカシマヤは知らない。でも隣国シンガポールの『タカ』ならかなり浸透している」

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