2013年1月29日火曜日

工作機械市況、牧野フライス社長に聞く、年半ば、中国緩やか回復。

海外拠点の強化課題
 牧野フライス製作所は金属の塊を削る工作機械の「マシニングセンター」を主力に、高精度な加工機械を手がける。国内市場の縮小、アジアの工作機械メーカーの台頭など外部環境が厳しさを増すなか、2013年はどのように事業を伸ばすのか。就任28年目の牧野二郎社長に、市況の見通しや自社の戦略を聞いた。
 ――12年は業界全体の受注額で11年比1割近い減少と厳しい年だった。
 「想像以上に(市況が)悪かった。特に中国の落ち込みが響いた。電子機器の受託製造サービス(EMS)からの特別な受注はあったが、産業機械向けなどが振るわず、12年10月が最も低調だった。現地自動車メーカーの投資も冷え込んだ」
 「一方でメキシコやカナダなど北米は自動車やエネルギー関連など、想定以上に(引き合いが)良かった。13年も、年初は北米市場がけん引するだろう。年半ばには中国市場も回復し、潮目が変わるのではないか。ただし中国は11年のような急成長ではなく、緩やかな成長になるとみている。今年は東南アジアにも販売拠点や製品の機能などを体験できるテクニカルセンタを新設して売り込みを図る」
 ――国内市場は縮小が続いている。
 「国内製造業が生産拠点を海外に移転する動きは続く。足元は円安傾向にあるが、多少円安に振れたところで、この傾向は変わらない。工作機械を使う生産工程は人材育成に時間がかかるため、顧客企業は長期的視点で生産拠点の場所を判断しているようだ」
 「国内中堅・中小企業のなかには、独自の加工技術や製品を開発して新たな設備投資に動く企業も出てきた。大型投資は見込みにくいが、国内市場も緩やかに回復するだろう」
 ――航空機向けは期待される市場のひとつだ。
 「当社は30年近くも前から航空機向けの加工機械を研究しており、ようやく刈り入れ期に入った。工作機械は新たな市場を開拓しようとしても当初はもうからない。長い年月をかけて技術を磨いたり市場を開拓したりする必要がある」
 ――アジア工作機械メーカーの台頭が脅威だ。
 「中国は国を挙げて工作機械産業を育成している。侮りがたい相手だが、まだ技術的に日本勢が劣るという段階ではない」
 「それでも、中国に限らず海外の工作機械メーカーとの競争は以前より厳しくなるだろう。海外の生産拠点でも日本の工作機械を積極的に採用していた日系自動車メーカーからも『現地の工作機械も使う』と言われている」
 ――工作機械メーカーもいよいよ、海外生産の動きが加速している。
 「海外拠点の機能強化は課題の1つだ。中国は生産拠点内に人材育成の施設があるが、これを外部に出して数年後にはそこへ新たな生産ラインを入れることも検討したい。30年近く前から持っているシンガポールの拠点も機能強化を計画している」
 「難しい技術要素が多い工作機械は国内の生産拠点も重要だ。12年12月には神奈川県内で工作機械の主要部品を作る工場の建築に着手した。新工場ではロボットも積極導入して自動化を進め、国内生産でも競争力のある生産ラインにする」
記者の目
投資減税追い風
提案力に磨きを
 世界的にみて、品質、性能の高さが売りの日本の工作機械。その中でも高い品質で知られるのが牧野フライス製作所だ。安価な汎用品とは一線を画し、高い価格設定でも性能や信頼性などで顧客の支持を得てきた。
 2012年は国内大手の工作機械メーカーが売り上げを軒並み1割以上を落とすなか、牧野フライスは4・5%減にとどめた。世界大手の電子機器の受託製造サービス(EMS)や航空機関連メーカーなど新規分野の顧客にも、製品価値が認められた結果だ。
 同社は今後も過度な価格競争とは一線を引き、「高品質で勝負する」戦略だ。ただ、高い技術力も、いずれは追いつかれる時がくる。アジアで勝負するためには、ブランドや技術力を維持しつつ、手が届く価格設定や、提案力、サービス体制を強化することも必要だ。
 先ごろ決まった税制改正大綱には設備投資減税も盛り込まれた。これを追い風に、いかに新味がある提案ができるかも試されている。

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