2013年1月30日水曜日

ヤフー「驚き生み出せ」 宮坂社長、2ケタ成長に辛口評価


 ヤフーが29日発表した2012年10~12月期決算は、四半期としては4年半ぶりに売上高、営業利益、経常利益、純利益いずれも前年同期比で2ケタ増の好決算だった。昨年4月に最高経営責任者(CEO)、6月に社長に就任した宮坂学氏は「爆速」をキーワードに弱い事業からの撤退や他社との提携を矢継ぎ早に進めてきた。改革1年を間近に控えた自己評価は――。
 「うーん。面白いことが言えればいいですが。まあ、普通ぐらいになれたかなと。13~14秒ぐらいになれた」
 決算発表会見で「爆速を100メートル走にたとえると何秒台」と問われると、宮坂氏はこう自己評価した。ただ「前よりは速くなった。世界のベンチャー企業を見ても、すごい勢い、すごいリズム感で走っているのに比べたらまだまだ」と、世界レベルにはなお遠いとの反省ものぞかせた。
 既存事業の勢いは悪くない。4~12月期連結決算は売上高が前年同期比10.3%増の2450億1400万円、純利益が14.0%増の831億6900万円だった。
 最大の柱である広告関連事業の売上高は前年同期比6.6%増の1329億円。もう一つの柱であるeコマース(電子商取引)関連事業も1.5%増と伸び悩んだものの、成長分野であるゲーム分野でグリーと新規提携、ディー・エヌ・エー(DeNA)とも提携を拡大したりするなどぬかりはない。
 何が足りないのか。宮坂社長が最も歯がゆく思っているのが「(NHNジャパンの)『LINE(ライン)』のようなサービスが社内から出てきていない」ことだ。国内ネット企業では最大級の雇用や資金力を持ちながら、無料通話・チャットアプリで伏兵のNHNジャパン(東京・渋谷)に先を越された。
 「今年のキーワードは『!(びっくり)』の一文字です」――。1月7日の仕事始め。宮坂社長は社員にこう宣言した。「!」は創業以来「ヤフー!ジャパン」のロゴにも入っている。
 13年を「お客さんをいい意味でサプライズさせるサービスをつくることに挑戦する1年」にすると宮坂社長は言う。「結局、爆速とかチャレンジだとかいっても、びっくりするようなサービスがこの9カ月間で生まれていない」と明かす。
 宮坂体制になってから、ヤフーは大手企業との資本・業務提携などを次々とまとめあげ、派手なニュースを振りまいた。しかし「日本初とか世界初のサービスを生んでいないと」と同社長が振り返るように、今年は「実行」の二文字が重くのしかかる。
 びっくりするようなサービスとは何か。「スマートフォン(スマホ)・ファースト」を掲げてこの9カ月間改革を続けてきたヤフーだけに「スマホやタブレット(多機能携帯端末)の分野になる」(宮坂社長)と予測される。
 社内では、技術者などが腕試しをする場となる「ハックデー」や「ハッカソン」と呼ぶ開発コンテストを多く実施し、新規サービスにつながる芽をうまく見つけて、速く開発することを仕組みとして採り入れた。
 一方で、宮坂社長は「くだらないサービスをリリースしないことも大事。(試験版として市場投入する)ベータ版と不良品は違う」と語る。「爆速」の誘惑にかられて“スピード違反”をすれば、ブランド価値を損ねないとして、品質面の徹底に立ち返るという。
 買収で取り込んだ事業についても、考え方は一緒だ。例えば金融事業。サイバーエージェントから、1月31日付で外国為替証拠金取引(FX)子会社を買収する。同社長は、「インターネット屋がやる金融サービスを考える」と構想を明かす。
 1期目の最終コーナーにさしかかった宮坂社長。国内ネット業界の老舗にして最大企業が、世界水準のスピード感をつかめるかが勝負となる。

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