2013年1月29日火曜日

提案型営業で市場開拓、前田建設・小原社長に聞く、請負業から挑戦

洋上風力建設 インフラ整備
 準大手ゼネコン(総合建設会社)のハザマと安藤建設が合併を決めるなど建設業界で再編の動きが広がっている。中長期的に国内建設市場の縮小が避けられないと判断、2社が手を組むことで苦境脱出を狙う。一方、同じく準大手の前田建設工業は発電事業への参入などこれまで建設業界が力を入れてこなかった分野を自力で開拓、生き残りの道を模索し始めた。勝算はあるのか。前田建設工業の小原好一社長に聞いた。
 ――大和ハウス工業がフジタを完全子会社化、4月にはハザマと安藤建設が合併する。
 「国内の建設投資は現在40兆円程度。市場規模は90年代のピークからほぼ半減とゼネコンの経営環境は厳しい。再編の動きはこれに対応したものだが、今後、業界内で合従連衡がさらに進むとは考えにくい。(相互補完関係にあるゼネコン同士の組み合わせは少なく)無理に合併しても統合効果が小さいため、各社は人員を削減して売り上げ規模にあわせた経営を選ぶだろう」
 「市場が縮小するなかゼネコンに残された道はもう1つある。顧客にこちらから新たな提案をし、これまでにはない市場を生み出す道だ。当社は新しい事業や技術で、より良い街づくりや安全・安心な生活を提供していく。しかし、請負業が中心だったゼネコンにとっては未知の挑戦であり、当然リスクも負うことになる」
 ――具体的には何を提案していく。
 「洋上風力発電設備の建設と運営などはその1つ。現在、事業を計画中で2016年には稼働する予定だ。事業全体で年間35億円程度の売電収入を見込めるうえ、発電機の設置技術や運用経験を磨き洋上風力の建設を提案するなど事業領域を拡大できると判断している」
 「水力発電所の改修ビジネスも有望だ。劣化した機器の交換や水を落とす構造の改良工事などの需要を掘り起こす。高い技術を持つ当社ならではのビジネスが展開できるはずだ」
 ――社会インフラの整備や補修も新たな市場として期待できる。
 「国内建設投資のうち現在15兆円程度が公的な投資だ。震災復興などを除いてこの水準はしばらく維持されていくと考えるが(新しいインフラをつくり続け、維持補修費が増えなければ)2030年以降、老朽化する公共インフラを維持できなくなるという試算もある。これからは社会資本の整備や補修に民間の資金や人材を活用していくことになるのは間違いない」
 「ただ、今のところ国や自治体が民間企業などに維持・運営を委ねる動きは乏しい。投資に見合う利益が望めないなど魅力的な案件が少ないためだ。多くの企業が参入しやすい枠組みづくりが求められる」
 ――先進的な取り組みには社員の意識改革が重要だ。
 「この数年間、全社員に危機感や挑戦への意識を共有することを促している。その結果、現場や支店から様々なアイデアが出るようになった。こういった攻めの姿勢は新規事業だけでなく、海外事業でも成果が出始めている。中国やベトナムでは現地の不動産会社や建設会社と業務提携し、事業の一層の現地化を急いでいる」
記者の目
厳しい経営環境
改革に向け一歩
 建設市場の縮小で、受注競争が激化、建設業の利益率は年々低下してきている。日本建設業連合会によると大手建設会社の売上高営業利益率は2005年度の3%から11年度には1・5%にまで半減した。将来的にこれが大きく改善することは期待できない。
 こうした経営環境下では旧態依然の営業攻勢でじり貧の市場にしがみつくより、むしろ経営のスタイルを変えることだ。「入札の機会も減りうまみが少ない」とされてきた再編の選択肢も排除すべきではなく、前田建設工業のように新たな事業領域を開拓する取り組みも大切。まずは一歩、改革に向け前に出ることだ。

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