2011年7月4日月曜日

IEAの石油備蓄放出、異例策、早くも息切れ感――英原油アナリストタキン氏に聞く。

景気減速で供給過剰も 来年、減産の可能性
 英世界エネルギー研究所(CGES)の原油アナリスト、マヌーシェル・タキン氏に石油市場の先行きを聞いた。
 ――IEAの決断をどうみる。
 「石油市場に介入する備蓄放出は、すべてを自由市場に任せる機関であるIEAの目的に反している。放出は1カ月以上は続かない」
 「世界の景気は減速し始めており、石油は供給過剰の恐れもある。価格が下がり、OPECが2012年に減産することもあり得る。IEAの決定はガソリン価格を下げたい米国などの政治意図を多分に含んでいる」
 ――OPEC加盟国は6月の総会で増産に合意できなかった。
 「加盟国が抱える石油戦略の違いが顕在化した。埋蔵量の多いサウジアラビアなどは石油から他のエネルギーへの移行が進まないよう、価格を抑えたい。一方、埋蔵量の少ない国はここ5~10年で稼ごうと、高い価格の維持を望んでいる」
 「生産余力の差も利害を分けた。余力があるサウジは価格が落ちても量で稼げるが、他国はそうはいかない。今回の総会は若くて新しい代表が多く、自らの立場を主張しすぎたことも合意に至らなかった要因だ」
 ――OPECの存在感は低下するのでは。
 「そうは思わない。世界で増産余力があるのはOPECだけだ。もしOPECがフル生産したら、数カ月で原油価格は1バレル40~50ドルまで下がってしまうだろう。それだけの影響力がある」
 「1970~80年代には石油の価格が高すぎ、工場や家庭での暖房がガスや電気に代わった。現在の用途は自動車や航空機など輸送用が主力で、他のエネルギーへの移行には時間がかかる」

0 件のコメント:

コメントを投稿