2011年7月5日火曜日

三菱自・益子社長に聞く、「EV、給電機能向上」、電力不足補う手段にも。

三菱自動車の益子修社長は電気自動車(EV)事業を拡大する方針を示した。益子社長との主なやりとりは次の通り。(1面参照)
 ――東日本大震災が起き、EVの用途に注目が集まっている。
 「当社のEV『i―MiEV(アイ・ミーブ)』約90台を無償貸与した岩手、宮城、福島県の人々から役に立っているという声を頂いた。車両に新たなニーズを求める声も聞いた。災害など緊急時に家電に給電する機能だ。できるだけ開発を急いで、電力消費が1500ワット級の電子レンジ、炊飯器、ポットなどに給電できる電力供給装置を2011年度内に車両オプションとして発売することにした」
 ――一方で、震災後の電力不足懸念は電気を使うEVにとって逆風という見方もある。
 「違う見方をしている。原子力発電の安全性を巡る動きを受け、太陽光、風力発電など再生可能エネルギーへの依存が高まるはずだ。気候などに発電状況が左右される再生可能エネルギーは供給電力量が安定しない問題があり、EVの蓄電機能はこの解消に役立つ。EVにためた電気で発電量の減少を補えば良い。電力消費の少ない夜間に充電すれば、電力不足を呼び込むこともない」
 ――販売状況は。
 「欧州だけでなく、アジアなど新興市場でも車両に対する引き合いは強い。シンガポールやインドネシア、アラブ首長国連邦(UAE)に続き、タイでも走行試験を始める計画。ニーズを予期していなかったロシアからも発注があり、年内には輸出を始める計画だ」
 「国内では『働くEV』として軽商用EV『MINICAB―MiEV(ミニキャブ・ミーブ)』を年内に発売する。先行予約の数は当初想定を上回っている。車両の品ぞろえを増やし量産効果でコストも削減する」
 ――競合他社が相次ぎ市場参入を果たしてくる。三菱自の強みは何か。
 「先行者利益があると考えている。すでに1万台以上の車両を国内外で販売した。EVの利用状況などのデータの検証により、ノウハウ蓄積が進んでいる。EVの商品開発のなかで大事なのは制御技術だ。この制御ノウハウの蓄積は次の開発強化にもつながる」
 「多くのメーカーが競争に参加すれば、その分だけ普及は進む。競争と協調の間の微妙なバランスのなかで事業を進めるつもりだ」
 ――メーカー間だけでなく、各国政府の普及支援策も相次いでいる。日本政府に望むことは。
 「新しい技術に挑戦する必要があり、そのための環境づくりをやってほしい。電池の容量拡大や急速充電器などさらなる研究開発を要する分野は多い」
記者の目
普及期に入り
性能向上急務
 東日本大震災後の電力供給不安を受け、国内でも整備が検討されるスマートグリッド(次世代送電網)のシステムにEVなど電動車両は組み込みやすい。今後のエネルギー政策を考えたとき、自動車メーカーは協調して普及を進める必要がありそうだ。
 ただ、一方で競争も激しい。三菱自は13年度にEVとプラグイン・ハイブリッド車(PHV)で7万5千台の販売を目指すが、ライバルの日産自動車は今後6年間で仏ルノーと合わせて世界で150万台のEVを売る目標を公表。トヨタやホンダなども相次ぎEV、PHVを投入する。電動車両も普及期に入り、車載電池のコストダウンや性能向上、調達量の確保など普及のボトルネックの解消がますます個々のメーカーには求められる。

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