タブレット用MPUで頭角 「基盤ソフトが重要」
工場を持たないファブレス半導体メーカーで、パソコン向け画像処理半導体(GPU)が主力だった米エヌビディアが、多機能携帯端末(タブレット)用のMPU(超小型演算処理装置)でシェアを拡大している。同社のジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)に、IT(情報技術)端末市場の動向や今後の戦略などを聞いた。
――タブレット、スマートフォン(高機能携帯電話)市場が急拡大し、パソコンが中心だったIT端末市場が大きく変化している。
「別々の市場だったパソコンとスマートフォンの垣根がなくなりつつある。韓国サムスン電子がタブレットに参入し、米デルや台湾の宏碁(エイサー)、華碩電脳(アスース)はスマートフォンを作り始めた。今後は携帯電話機メーカーとパソコンメーカーがモバイルコンピューターの会社になる」
――エヌビディアの「テグラ2」はタブレット用のMPUに採用されるケースが急増している。
「もともとPC向けのGPUに強みがあり(1チップに複数機能を搭載した)SoC(システムオンチップ)のテグラ2も高い処理速度が特徴だ」
「テグラ2には英アーム社が設計したCPU(中央演算処理装置)を採用、モバイルコンピューター用のMPUでは世界で初めてCPUを2つ搭載した『デュアルコア』を実現した。次世代のテグラはCPUを4つ搭載したクアッドコアにする。年末までにクアッドコアを搭載した製品の発売を期待している」
――米マイクロソフト(MS)が英アームのCPUに対応することを表明し、MSの基本ソフト(OS)である「ウィンドウズ」と米インテルのMPUが業界標準となる「ウィンテル」が崩れようとしている。
「アームを使ったMPUでウィンドウズを動かすことができれば、テグラがパソコンでも使える。大きなチャンスだ。今後はテグラのラインアップを拡充し、タブレット、スマートフォン、パソコンのすべてのモバイルコンピューターで使えるようにしたい」
――モバイルコンピューターのMPUを巡る競争は今後どうなるか。
「携帯電話機向けで大きなシェアを持つ米クアルコムと、パソコン向けが強い米インテル、そしてタブレットで強いエヌビディアの三つどもえの争いになる」
「エヌビディアは携帯電話の通信機能などを制御する『ベースバンド』と呼ばれる半導体に強い英アイセラを買収した。スマートフォンではMPUとともにベースバンドが重要。アイセラ買収で米クアルコムと同様、MPUとベースバンドを併せ持つ体制ができた」
――日本の半導体メーカーをどうみる。
「日本勢の大きな問題は、製造に重点を置いてきたため基盤ソフト(ミドルウエア)が弱いことだ。今の半導体はSoCをどう作るか、つまりミドルウエアをどうするかが重要。実際の製造はファウンドリー(半導体受託生産会社)に任せればいい」
「エヌビディアの社員6500人はほとんどが技術者だが、ハードウエアやチップ開発に携わるのは1500人ほど。ミドルウエア開発には3500人がかかわっている。日本のメーカーもミドルウエアを強化することが非常に重要だ」
台湾南部の台南出身。5歳でタイに渡り9歳の時に米国に。84年オレゴン州立大電気工学理学卒、92年スタンフォード大で電気工学修士課程修
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