2011年7月19日火曜日

メガチップス会長進藤晶弘氏―成長期のマネジャー不足

 成長過程に入ったベンチャーが抱える共通の問題は、マネジャー(管理職、経営職)経験のない人がマネジャーになることによって起こる“組織運営の問題”だ。
 例えば、日常業務で部下にうまく仕事をさせる、権限委譲をうまくやる、部下の管理を行う、他部門と協働して仕事の流れを管理するなど、大企業であれば係長や課長レベルの人が発揮しなければならないスキルを身につけた人材が乏しいことに起因する。
 往々にして、ベンチャーでは大企業で社員であった人が経営者や管理職となって組織運営を担うことが多く、そのような場合、マネジメント経験を持たないがために、多くの判断を創業者に頼って負担を増やし、組織活動のスピードを阻害する。
 一方、任せたままでフォローを怠れば、その人の関心の強い仕事に偏り的確な報告もおろそかになって、全体把握が困難になる。
 大企業におけるマネジャーは経験を着実に積み重ねて育っていくが、ベンチャーでは育成にかける時間もなく、未熟なままで重要な地位に就かざるを得ない。会社の成長に人材の成長が伴わないからだが、安易にマネジャー不足を中途採用で解決しようとすると“副作用”に苦しむ。
 協力体制の不備、組織の壁、そして創業文化と移入文化の衝突――。中途入社者と創業メンバーが持っている価値観の違いから社内に葛藤が生まれ、何をするにしても内向きにエネルギーを割かなければならない。
 私の体験で恐縮だが、メガチップス創業3年後に会社が急成長し、全体に目が行き届かなくなって創業メンバーに組織運営を任せたが“組織運営の問題”に遭遇した。さらに自らのあせりもあって、マネジャーを中途採用して解決を試みたが、創業文化の変化にも直面した。
 冷静に考えてみれば、私の場合は大企業に約27年間勤め、係長から事業部長までを経験し、それぞれのマネジメント階層で求められる能力を習得することができたが、マネジャー経験のない人にとって、一気に階層を飛び越えてマネジメントすることは至極難しいことなのだ。一筋に専門分野の能力を磨いてきた人がマネジャーとしての能力をつけるとなると、スキルの習得もさることながら意識や精神面の強化も不可欠となる。
 成長期に入るベンチャーのマネジャー不足は、避けて通れない共通の課題。起業家は、幹部が正しいマネジメントスキルを身につけるにはある程度の時間が必要であることを理解し、その育成環境を整えることが大切だ。
 1963年愛媛大工卒、三菱電機入社。79年リコー入社。半導体研究所所長などを経て90年にLSI開発のメガチップス創業、社長に就任。2000年から現職。

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