岐阜県のほぼ中央に位置し、清流や郡上おどり、郡上八幡城などの観光資源を誇る郡上市。ここで近年脚光を浴びつつあるのが産業観光「食品サンプル」の製造体験・見学だ。地域を代表するメーカー、岩崎模型製造の佐藤一作社長(63)は産業と観光の両立に向けた旗振り役として汗を流す。
郡上市は知られざる食品サンプルの城下町。昭和初期に大阪で食品サンプル会社を創業した岩崎瀧三氏が故郷の郡上市に工場を作ったのが発展のきっかけという。
1990年代の初めに「城やおどり以外に見るものはないか」と動き出したが、本格化したのは2007年度に岐阜県から観光資源「じまんの原石」に選ばれてからだ。白川郷(同県白川村)などに近い地の利もあって、いまでは年4万人超が訪れるようになった。
外国人観光客の誘致にも取り組んでいたが、東日本大震災で急減。逆風に負けまいと、地元メーカーを中心に食品サンプルの業界団体を4月に立ち上げて代表に就いた。「個々の企業努力では限界があり、業界がもっと結束しなければ」との思いが後押し。団体発足で「行政との連携強化など振興策が進めやすくなる」と期待する。
観光でブランド力が高まれば、サンプル製造セットなど個人向け商品の販売増も見込める。だが「業界活性化だけでなく、町おこしで地域に恩返ししたい」との気持ちも強い。(名古屋)
さとう・いっさく 1948年岐阜県郡上市生まれ。63年に地元の中学を卒業して岩崎模型製造に入社。創業者の岩崎瀧三氏の薫陶を受けた最後の世代で、現在もしばしば製造現場で腕を振るう。2004年社長就任。
0 件のコメント:
コメントを投稿