2015年4月17日金曜日

高精細液晶、寡占化狙う、JDI大塚周一社長、スマホ以外、車載用など開拓。

 ジャパンディスプレイ(JDI)が石川県内にスマートフォン(スマホ)用の高精細な液晶パネルの新工場を建設するなど、新たな成長戦略を打ち出し始めた。需要変動が激しく、新興国勢と激しい受注競争を繰り広げる液晶パネルの業界でいかに安定収益を確保し続けるか。大塚周一社長に今後の戦略を聞いた。
 ――スマホ向け液晶パネルの足元の受注状況を教えてください。
 「前年比で10%程度の伸びを続けている。世界的に高機能機種をほしがる購買層は堅調だ。ただ昨年秋ごろから中国のスマホメーカーの中でも勝ち負けが出てきている。高機能で勝負するメーカーと低価格で勝負するメーカーの双方に勝ち組は存在する。ただ中庸な商品を作っているメーカーは売れ行きがよくない」
 ――中国市場にどう対応しますか。
 「この1年間、中国市場に本気で取り組んでわかったことは、低価格に一歩足を踏み入れると一気に価格破壊が進んでしまうということだ。価格だけを重視する顧客に省電力や映り込みの少なさといった我々の価値を伝えようとしても、『で、いくら?』と言われてしまう。高機能の価値を認めてくれる顧客との取引を重視していく」
 ――スマホ以外への用途をどう開拓しますか。
 「まず順調なのが車載用途。自動車のモデルチェンジに合わせた受注となるため時間はかかるが、2017年には年率50%くらいの売り上げの伸びが期待できる。もう一つは反射型ディスプレー。消費電力が100分の1という価値を売り込み、腕時計やデジタルサイネージ、電子書籍といった用途を開拓する。3年後にはスマホ以外の売上高比率を3割(現状は2割)にもっていきたい」
 ――コモディティー(汎用品)化への対策はできていますか。
 「当社が首尾一貫して目指してきたことは、高精細の画像が表示できる『低温ポリシリコン(LTPS)』の寡占化だ。LTPSの量産技術は相当難しい。設備を買ったら誰でもできるというものではない。中国や台湾勢もやがて実現すると言っているが、3年後には技術的な格差はさらに開くだろう」
 「実際に中国勢の営業トーンも変わってきている。そのうち『投資に見合わない』と諦めるような技術面での絶対優位を狙っている。米国に『トップ3理論』というものがある。寡占化によって上位3社に絞られた時、市場が安定するというものだ。3年後には中小型の高精細液晶の分野はそうなっているだろう」
 ――寡占化後のプレーヤーは誰になりますか。
 「LTPSの分野ではJDIのほか韓国LGディスプレーとシャープの3社になるだろう。個人的な意見では、複数社が互いに切磋琢磨(せっさたくま)し合う市場が健康的だと思っている。(経営再建中のシャープには)強力なライバルとして生き残ってほしい」
技術革新 スピード持続カギ
 2012年の事業開始から3年。同社はこれまで約3000億円を国内の工場に投じて、絶え間ない生産能力の増強と技術革新を続けてきた。高精細のスマホ向け液晶パネルの分野で、大塚社長は中台勢との技術優位について「今後3年でさらに差が開く」と明言する。
 大塚社長が描く「未来の寡占化状態」の大きな懸念材料と言えるのが、想定を上回る新興国勢の急速な追い上げだろう。コモディティー化のスピードを上回る速度で技術革新を持続できるか。シャープの経営再建問題など、競争環境の激変を予感させる15年度はJDIにとっても大きな分岐点となりそうだ。

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