2011年7月1日金曜日

IDCジャパングループマネージャー宮園隆氏

印刷コスト削減事業拡大 長期契約で顧客囲い込み
 機器メーカーがプリンターや複合機の運用・管理、消耗品供給などを含めて顧客企業の印刷コストを低減する顧客対応ビジネス「MPS(マネージド・プリント・サービス)」が拡大している。IDCジャパン(東京・千代田)は国内MPS市場の2010年から15年までの年平均成長率を8.7%と予測。プリンター関連事業で数少ない成長市場として期待されている。IDCジャパンの宮園隆氏にMPS市場拡大の背景や今後の動向を聞いた。
 ――MPSとはどういった事業を指すのか。
 「プリンターや複合機のメーカーが顧客企業の機器利用状況を分析し、より効率的に機器を利用できるよう設置場所や台数の見直しを提案する。トナーやインクの交換、用紙の補填も請け負い、印刷コストの削減や節電などにつなげてもらう。3割程度の印刷コストを削減できるとみられている」
 「従来の機器販売から印刷枚数当たりの課金形式になり、機器本体はメーカー側が顧客企業に貸し出す形態が一般的だ。顧客企業側は印刷コストだけでなく、初期投資や維持費を軽減できるという利点もある」
 ――現在の市場規模と今後の動向は。
 「2010年の国内市場は09年比21.3%増の256億7500万円。15年には389億3000万円になり、その後も成長が続くと予想している。東日本大震災に伴い、物を所有するのではなく利用という形態が一段と注目を浴びており、MPS市場の拡大を後押しするだろう」
 ――メーカー側に機器販売や消耗品の売り上げが減る懸念はないか。
 「確かに機器本体の売り上げがない分、売り上げは減る。ただ、顧客を囲い込めるという利点がある。プリンターや複合機は印刷速度や仕上がりの色合いなどでは機器性能の大きな違いを出すことが難しくなっている。顧客企業は特定メーカーの製品にこだわらなくなっている。MPSで長期の運用、管理契約を結べば自社製品の継続利用につながり、長期的には売り上げ増に結びつく」
 「インクなど消耗品の販売にも良い影響がある。プリンターは機器本体を安く売って消耗品で稼ぐモデルが長く続いたが、サードパーティー(第三者)の消耗品を活用する企業が4割近くになり、収益確保が難しくなってきている。MPSなら消耗品も純正品を導入してもらえる」
 ――MPS事業の競争激化も予想されるが、顧客獲得の方策は何か。
 「MPSだけでなく、資料管理やパソコンなど他のIT(情報技術)機器も一緒に管理するサービスが差異化の有力な手段となる。パソコンなどIT機器の管理運用も合わせて提供し、顧客との接点を増やしている企業もある。プリンターや複合機のメーカーと、資料管理など周辺業務を手掛ける企業との提携も進む可能性もある」
 
 みやぞの・たかし 大手IT企業でレーザープリンターや複合機のプロダクトマネジャーなどを経験。IDCジャパン入社後はプリンターなどの調査を主に担当している。ハードコピー・ペリフェラル&デジタル・イメージング グループマネージャー。48歳。

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