2011年6月28日火曜日

住宅用断熱材――マグ・イゾベール社長リエナール氏

マグ・イゾベール社長 フランソワ・ザビエ・リエナール氏
省エネ需要、拡大期待
ここがポイント
(1)国内工場の稼働再開で品不足解消
(2)重油など原燃料の高騰分を製品に転嫁
(3)エコポイント終了後は節電志向に期待
 東日本大震災で一時、需給が逼迫した住宅用断熱材。大手メーカーの生産回復で供給体制は回復のメドがついたが、重油や化学素材など原燃料価格の高騰を受け値上げの動きが始まった。主要品種であるグラスウールの最大手、マグ・イゾベール(東京・千代田)のフランソワ・ザビエ・リエナール社長に需給の状況と価格戦略を聞いた。
 ――震災を受けて断熱材は品不足に陥ったが、供給は回復したのか。
 「当社は茨城県の2つの工場が被災した。土浦工場(かすみがうら市)は約1週間で操業を再開したが、被害が大きかった明野工場(筑西市)はほぼ2カ月生産が止まった。品不足が深刻になり、(親会社の仏ガラス大手)サンゴバングループの米韓の工場から3、4月に緊急輸入した。現在は全工場がフル生産しており、品不足は解消された。仮設住宅向けも含めて製品の供給力は十分にある」
 ――震災前に月間7000トンだった生産能力を増強しているが。
 「需要の拡大を見込んで設備増強を進める。今春に続いて8月のお盆期間にも増強工事を実施し、生産能力を10%拡大する」
 ――高機能商品の増加などにより4月の平均販売価格は前年同月比10%高い。そんな中で8月出荷分からグラスウールを値上げするが、その理由は何か。
 「これまで燃料費の上昇が著しく、製造段階のほか梱包や輸送の費用も増えた。これを転嫁するために10%の値上げはやむを得ない。ただ、断熱効果の高い次世代省エネ基準に対応した商品は販売促進のために値上げ率を6%にとどめる」
 ――2010年のグラスウールの国内市場規模(出荷金額)は579億5500万円と前年比20・9%も伸びた。住宅版エコポイント制度が追い風となったが、同制度は7月で申し込みが終了する。
 「この制度は次世代基準に適合した断熱材を普及させるのに役立った。ただ、新築住宅での普及率はまだ4~5割だ。欧州のように日本も断熱施工の義務化が必要だ」
 「もし今回の制度終了後に建設業者が(断熱性の低い)従来基準に仕様を戻したら残念だ。日本は原発問題でエネルギー不足に直面しており、省エネに貢献する製品に注目して欲しい」
 ――省エネ型の断熱材はコスト面で競争力があるのか。
 「次世代基準の断熱材は、従来製品に比べ電力など家庭内のエネルギー消費量を3分の1削減できる。冷房用の電力消費は約15%節約できる。標準的な一戸建て住宅に導入した場合の価格は20万円台で、従来基準の商品と比べ住宅建築費の総額は5%高くなる程度だ。長期的な節電効果に注目が集まり市場が拡大すると期待している」

 1988年(昭63年)パリ高等商業大学(ESCP)卒。96年仏サンゴバングループ入社。アジア・パシフィック地域代表部最高財務責任者などを経て08年から現職。45歳。

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