斉藤正俊社長
16年3月までに
高齢者住まい法や介護保険法の改正案が成立するなど介護業界を取り巻く環境が大きく変わりつつある。ニチイ学館は介護事業をけん引役として成長してきたが、制度依存タイプのビジネスのため、収益の安定を見込みづらい面がある。4月に就任した斉藤正俊社長に今後の成長戦略をどう描くかなどについて聞いた。
――2012年3月期は4期連続で過去最高の売上高の更新を見込む。
「介護事業が大きな原動力だ。前期に開いた介護拠点が収益に貢献し始めるほか、今期の開設計画も順調に達成できそうだ。団塊の世代が75歳以上になる2025年までは需要が伸び続ける。今後も介護事業は拡大戦略をとる方針だ」
「ただ介護はある意味『国策事業』。制度変更や介護報酬の切り下げで業績がぶれやすく、売上高営業利益率は5%が限度。目標に掲げる7%以上の達成には家事代行や障害者福祉など介護保険外サービスの拡大が欠かせない」
「ヘルスケア事業に占める介護保険外サービスの売上高は6・8%だったが、16年3月期までに20~25%にし、保険外サービスの売上高を500億円程度まで引き上げたい」
――教育事業は減収減益だが、テコ入れ策は。
「主力の医療事務・介護関連の資格講座は景気が回復すると受講生が減る傾向にある。教育事業は医療事務・介護の人材供給の側面が強かったが、単独で収益を上げられるようにする。eラーニング講座の強化もその一環だ。11年4~9月期決算の発表時には新たな施策を公表できるよう準備を進めている」
――今年、本格参入した訪問看護サービスの今後の事業戦略は。
「訪問ヘルパーは浣腸(かんちょう)など医療行為ができず、利用者のニーズを満たせない場面もある。訪問介護やデイサービスなどに訪問看護も加えることでトータルサービスの『ニチイブランド』を築く」
――看護師の確保が難しいのでは。
「デイサービス、訪問入浴、有料老人ホームなどで合わせて約2000人の看護師が働いている。看護師にとって多様な職場を選べる当社は魅力に映るはずだ」
――今回の介護保険法改正で24時間対応の訪問サービスが創設される。
「詳細が不明なこともあり、始めるかどうかは検討段階。早朝夜間の訪問介護は実施しており、対応できる体制は整えている」
――サービス付高齢者住宅も創設された。
「しっかりと介護できるのは介護付有料老人ホームだ。今期は申し込める案件はすべて手を挙げる。毎年、何万人もの働き盛りの40代が親の介護を理由に仕事を辞めざるを得ないのは経済的にも大きな損失ではないか。老人ホームは在宅介護で悩む家族にとってよりどころになる」
「今後、最も必要になるのは認知症高齢者が住むグループホームだろう。介護のなかで最も大変なのは認知症高齢者の介護だからだ。今期は地方の中核都市を中心に、23カ所の開設を計画している」
記者の目
他社との差異化 教育事業に必要
ニチイ学館の2011年3月期決算で、3つの事業のうち、唯一減収減益となったのが教育事業だった。主力のホームヘルパー講座と医療事務講座の受講生が2割減ったのが要因だ。eラーニングは医療・介護以外の講座を増やし、法人利用の獲得を目指すが、競争は激しく、他社と差異化できる講座を打ち出す必要がある。
医療関連とヘルスケアの両事業は好調だが、斉藤正俊社長自ら指摘するように、営業利益率7%以上の達成には介護保険外サービスの拡充が欠かせない。ただこの分野も各社が力を入れてくるなかで魅力あるサービスを提供できるかどうかが問われる。
0 件のコメント:
コメントを投稿