3年後生産性2倍目指す
荏原は2013年度の売上高を10年度比24%増の4970億円にまで引き上げる中期経営計画を打ち出した。ポンプ、コンプレッサー・タービン、精密・電子の3事業を成長事業として経営資源を集中し、15年度には売り上げ規模を1・5倍にまで増やすという。円高など経営環境が厳しくなる中で成長戦略をどう具体的に成功させるのか。同社の矢後夏之助社長に聞いた。
――10年度の営業利益は目標が未達だった。
「利益の3分の2は(産業用ポンプを中心とする)風水力事業が稼ぎ出している。ポンプはリーマン・ショック後の円高で欧州メーカーとの競合関係も厳しくなり、受注時の採算性が悪化した。原油・ガス関連のプラントで、中近東の大型案件が軒並み中断・延期になったのも響いた」
「だがここにきて、延期された案件が動き始めている。特に液化天然ガス(LNG)関係のプロジェクトは追い風だ。東日本大震災とも多少連動していると思うが、全体のLNGの需要は伸びるはず」
――荏原のLNG向けポンプの強みは。
「LNG向けポンプは極低温の状態で使う必要がある。この技術を持つ企業は少なく、世界シェアで6~7割を荏原が握る。中近東だけでなくオーストラリアやブラジルなどLNGプラントが分散し、投資も活発になりそうだ」
――利益率を上げるには、コスト削減などの努力も必要になる。
「ジャストインタイムなどの取り組みが遅れていた部分はある。ただ、(半導体工場で空気の排気などで使われる)ドライ真空ポンプなどは生産性の改善が進んでいる。これら取り組みを他の生産拠点でも広げていく。日本で確立できたら中国やインド、ブラジルの工場にも展開していきたい。日本は今年度中に、海外まで含めても3年後には生産性2倍の体制が整う」
「生産設備への投資はほぼ終了した。多少のボトルネックを解消するくらいで、大きな工場をつくる必要はない。中国の生産拠点でも生産性を2倍にできれば、東南アジアなど中国市場以外にも(輸出で)カバーできるようになる」
――海外展開にも力を入れるようだ。
「荏原では『域産域消』という考え方だ。地域ごとに必要とされる製品が違うため、地域に根ざす。例えばブラジルで製造しているのは農業用の深井戸ポンプ。だが成長しているブラジルではビルなどで使うポンプも需要は増えるし、南米への輸出拠点としても活用したい。こうした戦略によって、海外売上高は全体の4割程度だが、中計の最終年度には6割程度に持っていきたい」
記者の目
真の国際化へ人材育成急務
荏原の中期経営計画では戦略的重点地域として、中国、東南アジア、中東、インド、ブラジル、米国と幅広い地域を想定。主力製品のポンプだけをみても用途は幅広く、地域によって求められる製品の種類が異なるからだが、そのような総花的なグローバル戦略を成功させるのは至難の業かもしれない。
製品はなるべく地域ごとに、そのニーズに対応して生産、販売していく「域産域消」が矢後社長が今後の成長のために掲げたキーワード。それを実現するには各地域のニーズを知り抜く人材を育てていくしかない。売上高ベースで目標値を大きく下回った前回の中期計画の結果を繰り返さないために、国内依存体質から脱却、経営における「真の国際化」を急ぐ必要がある。
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