売上高、4割増7500億円へ
日立物流がM&A(合併・買収)を通じた業容拡大を加速させている。4月に自動車物流のバンテックを傘下に収めたのに続き、国内外の中堅物流企業の買収に今後5年間に500億円を投じる。メーカー系企業の取り込みなども進め、2016年3月期の売上高を7500億円と今期見通しの4割増の水準にまで高める考え。具体策などを鈴木登夫社長に聞いた。
――5年後に前期の2倍近くの売上高を目指すがどう実現するのか。
「バンテックほどの規模ではないが、今後5年で少なくとも500億円弱を投じてM&Aを続ける。これまで事業を拡大するために日立物流から買収をしかけたことはなく、基本的には相手から話が持ち込まれる。これからもメーカーが経営改革の一環として物流子会社を切り離したいという話はくるだろう」
――顧客から集めた荷物を混載輸送するフォワーディング事業も強化したいのでは。
「過去5年を振り返ると、インドの混載貨物事業者(フォワーダー)などを買収してきた。バンテックとあわせて3つの拠点になる。これからは中国、欧州に新しい拠点をつくるべきか、または大手の近鉄エクスプレスと提携する手もある」
――近鉄エクスプレスとは大型貨物の海外輸送で提携したばかりだが、資本提携はあるのか。
「近鉄エクスプレスとは仲良くやろうと思っている。将来、資本関係を持つかは別として、とりあえずプロジェクトカーゴの会社を作った。近鉄エクスプレスにはサウジアラビアに工場を移設する話が来たり、ハイチの復興もやってきたように航空貨物に強い。ただ陸運の要請があってもできなかった。それを日立物流がやればワンストップでできる」
「あくまでも当面はバンテックとともに成長をする。陸運を中心にグローバルで活躍し、3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)分野で国内で圧倒的な1位になりたい。生産基地、消費基地が世界的に広がるなかで、フォワーディングは必要だ。中堅の海外企業を買収できればと考えている」
――急成長するなかで親会社の日立製作所との関係は変わったか。
「親会社からみれば、自社の荷物だけ運ぶならコストセンターだし、利益を上げれば連結対象の効果がある。これまで売上高の3割ほどあった日立向けの取引は、バンテックの買収などで2割を切る。だが富をもたらす孝行息子になれば、ウィン―ウィンになれる」
――目標の7500億円の内訳をみると、国内売上高が7割と現状と変わらない。
「現状のままではダメだと思っている。20年には売上高が1兆円になる勢いにするには、海外と国内が半々になっていないといけない。アジアの成長はまだ取り込みきれていない。中国、インド市場をもっとてこ入れしないとダメだ」
――東日本大震災の業績に及ぼす影響は軽微なようだ。
「震災直後の物流停滞は想定より短かった。4月は営業利益ベースでみると、前年同月を1割上回り好調だった。実感としてマイナスの影響は感じない。企業の拠点や生産体制の見直しがあれば、物流の需要が増すだろう。こうした商機をしっかり取り込んでいく」
記者の目
拠点統廃合など
買収効果を注視
電機と自動車。国内二大産業の物流を手にした日立物流だが、懸案もある。買収後も上場を維持したバンテックの株価下落だ。TOB(株式公開買い付け)価格は1株23万円台だったが、バンテックが2012年3月期の業績見通しを発表した26日の終値は12万700円と半値近い。決算期末に株価下落に伴うのれん代を特別損失として償却しなければならなくなる可能性もある。
こうした不安を打ち消すには、買収の相乗効果を早期に示す必要がある。鈴木社長が強調する海外拠点の統廃合や、車両などの資産の共有をどう進められるかに注目が集まりそうだ。
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