2011年6月4日土曜日

アルプス電気社長片岡政隆氏、現場で即決、早期復旧(大震災と企業復興への道を聞く)

危機バネに環境分野強化
 東日本大震災で国内7工場のうち6工場が被災したアルプス電気。3週間以内に全工場を再稼働させ、サプライチェーン(供給網)への影響を最小限に抑えた。片岡政隆社長は単なる復旧に終わらず、今後は環境関連など新しい分野に経営資源を振り向ける考えだ。
 ――3月28日に国内すべての工場が稼働した。
 「本社と現場の密な連携で早期復旧を実現した。震災当日の11日の夜にはヘルメットなど救援物資を載せたトラックを東北に送り、12日には各工場に役員を派遣した。現場で陣頭指揮にあたってもらい、対応を即断即決できるようにした。古川工場(宮城県大崎市)の生産設備を被害が比較的小さかった北原工場(同)に移すなど、代替生産も臨機応変に行った。三陸南地震や岩手・宮城内陸地震で工場が被災した経験を生かせたことも大きい」
 「私自身も3月22日から1週間程度、現地に赴いた。危機の時こそトップが現場と信頼関係を築くことが重要だ。スピード復旧によって、ある米大手自動車メーカーは当社の評価を単なる1ベンダーから『パートナー』に格上げした」
 ――東北に集中する生産体制を国内外に分散させる考えはあるか。
 「新たに国内工場を建設する構想はないが、既存工場や他社の工場を含めて遊休スペースを活用する可能性は十分にある。電力需給や原子力発電所の問題が悪化した場合に備え、事業の継続性を高めたい。すでに全生産の6割を海外工場が担っており、今回も足元の供給体制を確保するため、一時的に中国などで代替生産した。すぐに海外生産比率を高めるわけではないが、いつでも対応できる体制は整えている」
 ――夏の節電対策は。
 「6月下旬から工場ごとに輪番制を導入する。自家発電装置も新たに設置した。今夏の節電目標を政府の昨年比15%ではなく、自主的に25%に設定した。予想以上に電力需給が逼迫する可能性があり、あらゆる事態を想定して動く」
 ――2012年度までの中期経営計画に変更はあるか。
 「変えていない。自動車向け部品に関しては、秋以降に生産不足を補うため自動車各社が一気に増産する可能性もある。急に多くの注文がきた場合でも対応できる体制を整える」
 「新規事業の立ち上げを加速したい。電力不足で省エネ関連製品が注目を浴びている。産業革新機構の出資を受けて昨年設立したアルプス・グリーンデバイスの電力を制御する機器も受注拡大が見込める。新製品の開発や発売を前倒しし、受注機会を広げたい」
 ――震災は電子部品業界に何をもたらしたか。
 「電力不足やサプライチェーンの乱れ、中国・韓国勢のさらなる台頭などで業界は苦境に立たされている。しかし、我々はオイルショックやプラザ合意後の円高などを自ら変革することで乗り越えてきた。今回の苦難も変革への転機としたい」

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