2011年6月1日水曜日

タワーレコード社長嶺脇育夫氏

D店の生き残り策は 音楽配信、協業も模索
 2月末、タワーレコードの新トップに就任した嶺脇育夫社長。早々に東日本大震災への対応を迫られ、音楽CD市場の縮小や筆頭株主となったセブン&アイ・ホールディングスとの連携強化など難題も山積みだ。今後、CD店が生き残るには何が必要か。店舗運営のあり方やCD店の将来像、音楽配信との距離感などについて聞いた。
 ――震災の影響は。
 「3月の売上高は全店で前年同月比10%、既存店で同13%減った。音楽CDメーカーの生産や物流の混乱で、新譜の発売が止まったことなどが影響した。ただ、新譜発売が回復した4月の売上高は全店で8%、既存店で5%増えた」
 ――CD販売への逆風は変わらない。
 「CD店が減ったこともありネット通販などに流れたのは事実だろう。当社は在庫を詰め込めるだけ詰め込むという考え方で、新譜だけでなく旧譜もしっかり売る。洋楽の過去の名作を千円で売る独自企画『輸入盤千円生活』の販売枚数は100万枚を超えた。ヒットがなければヒットを作ろうということだ」
 「CD店は顧客目線のサービスがまだ徹底できていない。来店した顧客を(買わずに)帰らせているケースもある。そこで最近、ネットで商品を取り置き予約できる仕組みを始めた。CDが欲しいという消費者以外の取り込みも重要でイベントや催事、ライブも強化する考えだ」
 ――成長するネット音楽配信への対応は。
 「音楽配信を自社でやることはないが、協業できるなら組みたい。配信を利用する消費者は目的意識が強くスピードが速い。しかし、CDという目に見える形だから話題となることもある。例えば福島県出身のアーティストが震災を受け結成した『猪苗代湖ズ』。配信開始から1カ月後にCDをタワーレコードで限定販売したところ、多くの消費者が購入した」
 ――出店戦略は。
 「店舗の広さは165~5000平方メートルまであり様々な店を作れるが、最近は330平方メートル未満の小型店で、JR東京駅の八重洲地下街に出した『タワーミニ』が中心業態。今年8月までに計5店を出し、総店舗数を90店にしたい。来年2月までには計10店を出したい。新規出店により2012年2月期の売上高を前期(548億円)と同水準とするのが最低限の目標だ」
 ――店舗運営は。
 「10年11月に1億~2億円を投じ旧譜を大幅に増やした。今年3月には店頭やネット通販向けの在庫を備蓄する都内の物流拠点を拡充した。資金繰りを考えれば在庫は少ない方がよいが、CD店は品ぞろえを厚くしなければならない。バランスは難しいが不良在庫の流動化なども進め、魅力ある店舗を維持したい」
 ――セブン&アイが3月に筆頭株主となった。
 「(同HD傘下の)赤ちゃん本舗(大阪市)へのCD卸事業や新規出店の方針について頻繁に話し合っている。やはり大株主のNTTドコモとは携帯電話向け情報提供などで連携している」
記者の目
品ぞろえ拡充と効率の両立カギ
 音楽CD店の経営の難しさの1つに「品ぞろえの拡充」と「在庫圧縮」の両立がある。品ぞろえを潤沢にすれば在庫負担がかさむ。在庫を絞りすぎれば店の魅力が失われる。相反する課題のバランスをとることは、メガヒットが生まれにくい現在、音楽ファンを店にひき付ける上でますます重要だ。
 タワーレコードは大型店を中心に、回転の低い旧譜洋楽などの品ぞろえで支持を得てきた。ただ、震災以降の消費動向は予断を許さない。経営者が在庫より資金繰りに余裕を持ちたいと考えるのは自然だ。筆頭株主のセブン&アイの協力を得つつ、どう店作りを主導するか。若く生え抜きの嶺脇社長の手腕が早くも問われる。
みねわき・いくお1986年に秋田県立鷹巣高校を卒業。88年にタワーレコードに入社。2005年に取締役。11年2月社長就任。どんなジャンルの音楽も聴くという。44歳

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