2011年6月10日金曜日

大量開発で流行つかむ、アイリスオーヤマ大山社長に聞く――LED、低価格でリード。

 震災後も「意思決定の速さ」というトップダウン経営の強みを発揮し、快走を続けるアイリスオーヤマ(仙台市)。ほぼ半世紀にわたり同社を率いてきた大山健太郎社長に、注力する発光ダイオード(LED)照明事業や今後の販売戦略について聞いた。(1面参照)
 ――角田工場の復旧が早かった。
 「現場で社員に対して明確な方針、具体的な指示を出せたことが良かった。アイリスには被災した人が一刻も早く欲しい商品がたくさんある。メーカーは商品を届けることが一番大事。社員にはアイリスが元気になることが宮城県を復興させると説いた」
 ――LED照明は増産に継ぐ増産と好調だ。
 「LEDはビジネスチャンスの塊。あらゆる企業が照明で節電する空気が生まれている。中部電力の浜岡原子力発電所停止を受け、全国的に5月中旬から一気に需要が伸びた。家庭用電球も供給が間に合わない状態だ。中国・大連の自社工場の設備を発注し、人員を確保した。倉庫だったところを組み立てラインに変えるなど、スペースには余裕がある」
 ――米ゼネラル・エレクトリック(GE)製品の販売契約も結んだ。自社製品との競合は。
 「照明は用途が広く、すみ分けできる。アイリスが得意とするのは家庭用電球、オフィス向けの直管形、工場で使う水銀灯の代替タイプなど。服飾専門店などが使う多彩な『色温度』や配光角が必要となる商品は弱い。GEは世界的に大量生産しているので、特殊な製品でも割高にならない」
 ――LED照明市場は競争も激しい。
 「今後も多数のメーカーが参入するだろう。技術革新とスピード経営で常に価格リーダーを保てるかどうかがすべて。電卓でカシオとシャープが残ったのと同じように、アイリスは残れる」
 ――新商品のテーマは。
 「年内にかけては『節電』と考えている。生活スタイルが変わることはビジネスチャンス。商品をたくさん作れば、その中に『当たりカード』がある。当たりが見つかれば我々は立ち上げが早い。問屋を介さず直接取引先に商品を納入しているため、販売データが週次で分かる。1週遅れで日本の流行をつかめる」
 ――コンビニエンスストアとの取引は。
 「開拓したいが、アイリスの商品コンセプトとコンビニは遠く、定番商品になれるかは分からない。今回の『とうもろこしのひげ茶』のように当たり商品があればぜひ売りたい」
 ――最大販路のホームセンター(HC)は秋以降、震災特需の反動が来るといわれている。
 「HCが急に悪くなるとは思わない。(ここ数年のHCは)安売りにより単価は下がったが、客数は増えている。商品輸入先の中国の人件費は上がり続けており、デフレも限界だ」
 ――HCはプライベートブランド(PB=自主企画)比率を高めている。アイリスのブランドをどう維持する。
 「とにかく新商品を作り続けること。発売3年以内の商品の売り上げに占める割合が5割を超えているから不況にも強い。家電、収納など分野の違う事業部が集まるので、業界が気づかない視点で商品開発ができる。LED電球のボディーに従来のアルミではなくプラスチックを使って軽くしたのがいい例だ」
 ――後継者の育成は。
 「息子が(会社に)入っている。事業が多岐にわたるため、相当キャリアを積まないと総合的な判断はできない。最近は私の出張時に付いてきて、私がどういう判断をするのか実際に見せている。能力を蓄えてバトンをつなげるようにしたい」

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