2011年7月13日水曜日

丸善CHIホールディングス社長小城武彦氏

 電子書籍が広がりを見せている。有望市場での主導権を握るべく、大日本印刷(DNP)もグループの総力を集め、攻勢をかけている。丸善CHIホールディングスの小城武彦社長は、コンテンツ配信会社のトップを兼ねるなど、DNPグループの電子書籍戦略のかじ取りを担う。今後の業界動向や次の一手などについて聞いた。
 ――電子書籍市場の現状をどう見ているか。
 「スマートフォン(高機能携帯電話)の力に驚いている。ゲームやツイッターなどと消費者の時間の奪い合いをしてきたが、電子書籍はこの競争に負け続けてきた。しかし、ここに来てスマートフォンの力を借りて盛り返し始めている」
 「文庫本に慣れた日本人にちょうど良い画面サイズ。しかも、片手で操作できる。移動や休憩など細切れの時間に電子書籍を読むという習慣が急激に広がっている。『スマホすげえな』のひと言だ。消費者が書籍を持っていなかった時間に、今注目している」
 ――電子書籍とリアルの書店などを結びつける「ハイブリッド書店」の進ちょくは。
 「DNPグループの配信サイト『honto』のバージョンアップを来年1月までに完了する。グループ内で運営する書籍通販サイト『bk1』を統合し、書籍の購入でたまったポイントを管理するカードを導入する。1つのIDで電子書籍の配信とネット通販を利用でき、リアル書店で買い物をしてもポイントがたまるようにする」
 「時間を指定した販促などもできるようにしたい。例えば、サッカー日本代表の試合のハーフタイムに、メールで関連書籍を推薦するようなことを目指す。読者が欲しいと思った時に購入できる仕組みとすることが重要だ」
 ――リアル書店をどう位置付けるのか。
 「メールを使った店頭での商品取り置きサービスや店内イベントを効果的に実施していきたい。同じグループのジュンク堂書店(神戸市)、丸善書店、文教堂グループホールディングスが運営する書店の店頭には年間2000万人もの消費者が訪れている」
 ――さまざまな形で集めた読者情報はどう活用していくのか。
 「出版社との協力が前提になるが、紙と電子の書籍の発売時期をどの程度ずらすのが適当か、といったことなども検証できると考えている。どのようなタイミングで販促メールを送信したら良いかもわかるようになるかもしれない」
 ――陣営の異なるソニーと紀伊国屋書店、パナソニックと楽天が電子書籍で連携した。
 「(協力要請を含め)いろんな話は来るが、今の時点で他と連携する考えはない。いつになるかわからないが、(電子書籍市場は)最終的には競争によっていくつかの陣営に集約されるだろう。ただ、現在は陣営やサイトによってコンテンツの数や種類に大きな差はないとみている」
 「米国と一緒である必要がどこにあるのか」。電子書籍や書店について日米比較が話題になるたび、小城社長はこう強調する。車がなければ書店に行けない地域が多い米国と、都市部であれば帰宅途中などに立ち寄れる日本。米国人の2倍の年間1万5000円を書籍購入に充てる日本人。事情は全く異なるからだ。
 そこで提唱するのがリアル店舗とネットを融合したハイブリッド書店。紙を電子に置き換えるのではなく、相乗効果を出せるはず、との読みがある。日本独自の次世代の書籍流通が根付くか。小城社長率いるDNPグループの動向が注目される。
 おぎ・たけひこ 1984年東大法卒。通商産業省入省。カルチュア・コンビニエンス・クラブなどを経て2007年に丸善社長。10年CHIグループ(現丸善CHIホールディングス)社長。49歳

昭和電線HD常務西田征拓氏

 ――昭和電線ホールディングス(HD)は、海外売上高比率を2012年度に23%まで高める中期経営計画を掲げる。
 「海外売上高比率は10年度で13%とまだグローバル企業とは言い難い。しかし電線業界も国内は厳しく、海外でがんばるしかない。特にインフラ投資が活発な中国市場を重視しており、現地同業の富通集団から出資を受け、中国で合弁工場の増強・新設を進める」
 「経営管理や技術指導に当社のノウハウが求められ、総経理やセンター長などの要職に中国語を話せる日本人管理職が必要だ」
 ――現在の陣容は。
 「海外16拠点に日本人35人が駐在している。このうち中国は11拠点29人だ。これから富通と共同事業を進めていくため、年内にも、中国では駐在員を35人に増やす必要がある。しかし、投入できる人材が不足している」
 「これまでは駐在経験者をローテーションで何度も赴任させてきたのが現実で、60歳代などの年配者が増えてしまった。中国と全く縁のない40~50歳代をいきなり総経理として赴任させるわけにもいかず、ベンチに人がいない状況だ。次の登板を待つ予備軍を急いで育成しておかなければならない」
 ――具体的な育成策はあるか。
 「3月から本社(東京・港)で20~30歳代の若手社員向けに中国語会話の無料講座を始めた。当社は経理や生産管理などの総合職に中国出身者17人を採用しており、彼らに謝礼を払って講師を引き受けてもらっている。講師も会社への貢献度を高め、日本人社員と交流を図れるため、モチベーションは高い。教える訓練は受けていないが、受講者が気軽に指導を仰げる存在で、有効だと感じている」
 「講座は業務終了後の午後5時半から実施しており、あくまで自己研さんの位置付け。受講費は取らないが、教材は自己負担。内容も中国語会話入門のレベルで、学ぶ意欲のある社員にとっかかりとして生かしてもらうのが目的だ。3月開始の講座には11人が参加しており、中国語を業務上使わない国内営業担当者もいる。意外な人がやる気をみせており、うれしくなる」
 ――講座の頻度や今後の計画は。
 「ほぼ週1回のペースで講座は続いたが、東日本大震災後の復旧需要への対応で忙しいなかでも受講率は高かった。7月下旬には受講者の発表会も予定する。次回は10月以降、相模原事業所(相模原市)で若手技術者向けに開講したいと考えている。12年度以降も継続し、年2回程度は開く計画だ」
 ――資格取得補助などのメニューは。
 「10年2月から資格取得の報奨制度の対象に中国語検定を加えた。日本中国語検定協会(東京・千代田)の4級取得者に1万円を支給する。今回の無料講座開始で4級取得者は増える見通しで、3級以上についても報奨制度への組み入れを検討していく」
 「将来のキャリアとのつながりも明確にしていきたい。部署によって昇進に必要な知識は異なるが、その一つに中国語を加えるのも一案だ。同じ営業でも中国では国内とケタの違う案件にかかわれることも説明し、中国で働くことの魅力に気づいてもらいたい。若いうちに中国への出張や赴任の経験を踏ませることで将来の総経理候補に育てていく」

森トラスト社長に聞く、大震災、地価の先行きに影――投資に慎重でも低金利魅力。

 東日本大震災が地価の先行きに影を落としている。国土交通省がまとめた4月1日時点の地価動向報告では、全国主要146地区のうち、3カ月前より上昇したのは、わずか2地区にとどまった。都心部でも下落に転じているところもあり、再開発などにも影響を与えそうだ。多数の案件を抱えている森トラストの森章社長に今後の戦略などを聞いた。
 ――足元の事業状況はどうか。
 「先々期、前期、今期は負の資産を整理する時期と位置付け、財務体質の強化に力を入れてきた。その結果、2009年3月末の自己資本比率は20%だったが、12年3月末には27~30%に引き上げられる見込みだ」
 「リーマン・ショックと東日本大震災を受け、不動産の資産価値が下がった。住宅事業子会社のアーバンライフとフォレセーヌ(東京・港)が仕入れた土地などの評価損や、オフィスビルの賃料減収分など今期までの3年間で累計350億円の処理にあたる。これで財務基盤は固められるだろう。経営体力を充実し、次の大型投資に備えてきたところだ」
 ――再開発はどういう姿勢で臨むのか。
 「金融危機から平時に戻りつつあった矢先の東日本大震災発生で、日本経済の先行きは当面、不透明さを拭えなくなった。オフィス需要も弱含みとの見方があるなかで新規投資は慎重な判断が求められているのは事実だ」
 「とはいえ、空前の低金利は好機でもある。8月以降、東京で2つの物件の再開発に着手する。中央区の京橋一丁目には環境配慮型のオフィスビルを建てる。東京駅に近い京橋二丁目には、オフィスとホテルの複合施設を整備する」
 ――お膝元である港区にも大型案件を抱えている。
 「虎ノ門パストラルの跡地については解体工事こそ終えたが、再開発の計画はまだ決まっていない。震災後、防災面でも優れたまちづくりの重要性が高まった。行政が計画を示せば、それに応じるのも一案と思っている。赤坂ツインタワーについては、建て替えるか大規模改修にするかを年内にも判断したい」
 ――将来の経営体制についてはどう考えるか。
 「当社の総合職の平均年齢は33歳を超え、若返りが必要だと考えている。それは経営陣も同じだ。若い人材にある程度の責任を持たせて仕事をやらせたい。その時に不安材料をなるべく小さくして引き継ぐのが私の使命だと思っている」
 12日に75歳の誕生日を迎えた森章社長は在任18年を超え、次世代への引き継ぎを意識した言動が増えている。6月、子会社の森観光トラスト社長に長女で森トラスト専務を務める伊達美和子氏(40)を据えたのもその一環といえる。
 リーマン・ショックと東日本大震災という危機が不動産ビジネスに与える影響は大きい。長期にわたり経営の第一線に立つ森章社長にとって、残る仕事は中長期の成長戦略を示し、事業ポートフォリオを整えてバトンを渡すことだろう。その手腕はこれまで以上に問われそうだ。

富士重の中計、安定志向脱却、吉永社長に聞く――「個性」で存在感高める。

 富士重工業が2015年度に連結営業利益で10年度比43%増の1200億円、世界販売台数で同36%増の90万台にする5カ年の中期経営計画をまとめた。中国市場へ本格参入し、10年以内に100万台超の自動車メーカーとなる礎を築く5年とする。これまでの安定志向から脱却し、規模拡大にカジを切る。吉永泰之社長に背景を聞いた。
 ――どんな問題意識で中計をまとめたのか。
 「自動車産業は世界的には成長産業だ。新興国を中心に伸びる。ただ、市場が成長する中、現状の60万台規模では、下手すると埋没しかねない。当社はこれまでしばらく60万台規模でいた。現状維持を支持する声も社内にあるが、それを許してもらえない競争の環境下にある。危機意識を社員皆がもたなければならない」
 ――中計の発表の席では「規模」という言葉を繰り返し強調した。
 「正面向かって『規模を拡大する』と言ったのは今回が初めてだ。もちろん、いたずらに規模を追うつもりはない。当社がこれまで生き残れてきたのは、信頼を大事にするまじめなものづくり集団としての文化が根づいているからだろう。ただし、まじめゆえに変化に疎い。変化を得意としない社風があった。危機意識をあおるつもりはないが、変化を恐れるなというメッセージだ」
 ――規模とスバルの個性をどう両立させるのか。
 「『量』ではなく『個性』で存在感を高める。スバルの走りの楽しさはよくお客様にも理解してもらっているが、『安心』という柱を明確に打ち出す。衝突回避装置の『アイサイト』など、先進技術を全車種、海外への展開を拡大する」
 「当社の源流は中島飛行機という飛行機メーカーで、安全を重視する気風が今も根っこにある。例えば、ハイブリッド車で先行するトヨタ自動車と同じようなことを追求しても、当社の企業規模では難しい。アイサイトは周囲から浸透させるのは厳しいという指摘もあったが、今や搭載率は75%に達し、他社との差異化に貢献している」
 ――中国の奇瑞汽車と大連市での合弁工場の交渉をしている。進捗は。
 「合弁相手とは交渉を続けているところだ。条件は煮詰まりつつある。今は中国政府の認可が下りるのを待っている。下りれば、すぐにプロジェクトを実行に移せる体制を整えている」
 ――15年度に中国で現状の3倍の18万台に増やす。達成への自信は。
 「市場調査の結果、保守的に見積もっても18万台という目標値が出た。十分にいける。販売店網も2倍の250拠点に広げ、沿海部のほか、内陸部の大都市も開拓する。現地生産を決心した以上、今回の目標値ぐらいは狙わないといけない」
 ――来春に軽自動車の生産を終える。群馬製作所本工場の跡地利用は。
 「トヨタ自動車と共同開発している小型スポーツ車を生産する。ただし、スポーツ車は生産変動が大きいため、稼働率を平準化しづらい。排気量660cc超の登録車も一緒につくる。『ブリッジ生産』という概念で、需要動向に応じて生産車種を柔軟に切り替える。車種は最終決定していないが、どの車種でも対応できる」
記者の目
健全な危機意識 成長への活力に
 新中計はアジアなど新興国市場の開拓が柱。成長志向を強めるうえで、「健全な危機意識が土台として必要だ」と吉永社長は強調し、おっとりとした社風に揺さぶりをかける。危機意識を成長への活力に変えたいという思いがにじむ。
 ただ、富士重はかつて日産自動車や旧日本興業銀行からトップを招き、庇護されてきた歴史が長い。「甘え体質がまだある」(富士重OB)との指摘もある。吉永社長は「変化」と「自立」を求めるが、生き馬の目を抜く自動車業界で勝ち残るため、社長にも社員にも風土改革の覚悟が問われる。

京浜急行電鉄取締役施設部長道平隆氏

 京浜急行電鉄が発光ダイオード(LED)照明の導入を加速する。駅構内だけでなく、トンネルや車両での利用も視野に入れる積極ぶりだ。節電と二酸化炭素(CO2)削減を同時に進める。コスト面の効果などLED化を狙う鉄道会社の事情を道平隆取締役施設部長に話を聞いた。
 ――今夏の節電策は。
 「羽田空港国内線ターミナル駅と天空橋駅の照明を全部、LEDに切り替えた。地下駅で一日中、電気をつけておく必要があり節電効果が大きいと判断した。合計1750個ほどで、夜間に約1カ月作業して羽田空港の方は6月末に切り替えを完了した」
 「試算ではLED化で使用電力量は約半分になる。CO2排出量も同じ程度減らせるとみている。駅構内や車内照明の一部消灯、平日昼間の運転本数削減なども実施している」
 ――LEDの光は直進性が強く、通常の電灯とは異なる。導入に抵抗はなかったのか。
 「電灯が切れた時でも昼間には交換しにくい女性用トイレを対象に、数年前からLED照明を導入して(明るさの感じ方などに)問題がないかどうか確認してきた。私自身もデスクの回りの照明を蛍光灯型のLEDにして体感してきた」
 「駅やトンネルなどの照明は約1年に1度、交換する必要がある。蛍光灯そのもののコストより、終電が終わった深夜に取り換える人件費の負担の方が大きい。LED照明ならこの交換までの期間を長くできる。価格は高いが、こうした保守管理費用を考えて10~20年の期間でみると総コストは安くなる」
 ――実際にLEDに切り替えてみた効果は。
 「今はまだ、全部で72駅あるうちの2駅について取り換えただけだ。会社全体への影響力というより、『CO2排出量がトラック輸送の約7分の1』という環境負荷の低さを標榜している鉄道会社としての使命感の方が先行している」
 「今後、他の駅もLED化を進めたいと考えている。一部車両などにもLED照明を導入したい。列車は振動が多いためLEDには過酷な環境になるが、現在4両編成の普通列車の一部の照明をLED化して、蛍光灯と比較しながら導入可能性の確認をしている」
 ――事業面だけでなくグループ社員約1万人にもLED電球を配布した。
 「消費電力量が従来の電球の約5分の1となるLED電球を、社員一人ひとりに1000円程度の寄付を募って配った。寄付は被災地に送る。有料にしたのは自分で料金を負担しないと、LED電球を積極的に使おうとは考えないと判断したためだ」
 「社員が家庭でLED電球を使っても、当社の節電に貢献するわけではない。ただ1つ使ってみてよいと思えば2個、3個と家庭の節電につながっていく。その動機付けの効果がある」

2011年7月12日火曜日

「スポーツHV、3年内に」、フェラーリ会長インタビュー

日本の販売目 標震災で1割減に
 来日した伊フィアットグループの高級車メーカー、フェラーリのルカ・ディ・モンテゼモロ会長(フィアット前会長)が日本経済新聞のインタビューに応じ、グループの経営戦略や業績、市場動向の見通しなどについて明らかにした。主なやりとりは次の通り。
 ――日本市場における東日本大震災の影響はどの程度出ているか。
 「昨年の日本市場でのフェラーリの販売実績は約400台。今年もほぼ同程度を予定していたが、震災直後にこの目標を10%程度引き下げた。震災が消費者心理に影響したせいか、5月まではたしかに引き合いが鈍ったが、6月以降は明らかに改善傾向にある。もともと需要は販売目標の2倍程度はあるとみているので、先行きはそれほど心配していない」
 ――世界でのフェラーリの販売動向はどうか。
 「フェラーリ最大市場の米国は前期比12%増。急成長する中国市場は前期比で約30%増え、昨年の4位以下から3位に浮上する見通し。今年2位になるドイツを抜くのも時間の問題だろう。フェラーリ初の4人乗り、四輪駆動車『FF』などの戦略製品も順次、市場に投入するし、今春、参入したインド、ウクライナの市場も安定した成長が見込める。昨年の販売実績を上回る勢いだ」
 ――昨年3月のジュネーブ国際自動車ショーでフェラーリ初の高級スポーツ・ハイブリッド車(HV)を発表した。
 「環境保全への取り組みを強化している。これは決して自動車業界内での横並び意識からではなく、消費者が求めている製品を提供するのがメーカーの責務だと考えているから。3年以内には販売にこぎ着けたい」
 ――フィアットの前会長として2009年の米クライスラーとの資本提携を主導してきた。シナジー効果は出ているか。
 「徐々に出ているし、今後も十分に期待できるだろう。クライスラーとの資本提携のメリットは主に部品・車体の共用化と販売網の乗り入れだ。フィアットにとっては念願の米国市場への再参入の足場を得たし、製品のラインアップにクライスラー車が加わることで欧州市場での販売攻勢も強化できる。次世代車開発への巨額投資に備えなければならないし、クライスラーは業界で生き残るための重要なパートナーだと考えている」
 ――フィアットのマルキオーネ最高経営責任者(CEO)は2、3年でクライスラーと経営統合し、本社を伊トリノから米国内に移転する可能性を示唆している。
 「国際競争力を高めるため、現在、イタリア国内にあるフィアットの工場で労組と労務協約を改革する方向で協議している。だがこれが必ずしも円滑に進んでいない。改革が進まないならば、様々な選択肢があるという理論上の可能性に言及したにすぎない。フィアットにとってトリノは発祥の地。イタリアの国内経済への影響も大きいし、本社が簡単にイタリアを離れることはない」
 ――独フォルクスワーゲンがフィアット傘下のアルファロメオの買収に興味を示している。
 「グループにとってアルファロメオは欠かせない会社。ブランドイメージが高いうえ、固定客も多く、傘下に抱えているメリットは大きい。米市場参入の切り札でもある。たとえ買収の提案があっても受け入れるつもりはない。アルファロメオが抜けたら、グループは計り知れない打撃を受けることになる」
 1947年伊ボローニャ生まれ。ローマ大卒。F1フェラーリチームのマネジャー、フィアット幹部などを経て、2004年、創業者一族のウンベルト・アニェリ会長の死去に伴いフィアット会長に就任。10年4月、創業家のジョン・エルカン氏に会長職を譲る。現在はフェラーリ会長兼フィアット取締役。次期首相候補にも名前が挙がっている。63歳。
記者の目
伊の工場改革 残り時間少なく
 後継のエルカン会長(35)が独り立ちするまで、フィアット創業家の代理人として振る舞うことが許された唯一の人物。実務はマルキオーネCEOに任せているが、現在もグループ内に隠然たる影響力を持つ。
 グループの最高実力者として2000年代の経営危機を乗り越え、クライスラーとの資本提携を実現した“知将”は、提携のシナジー効果が浮沈のカギを握るとみる。
 「早くても年末以降」と見られていたクライスラーの子会社化を前倒したのはそのため。掲げた目標は年産600万台。業界上位に食い込まなければ生き残りは難しい。
 目下、取り組んでいるのが「米市場への再進出」と「イタリア国内工場の改革」。特に後者については「国際基準で考えなければ時代に取り残される」と何度も熱弁を振るった。ただ残された時間はそれほど多くない。

イビデン社長竹中裕紀氏―携帯IC基板、海外生産も

 イビデンの竹中裕紀社長は、スマートフォン(高機能携帯電話)などに使う高付加価値な基板の需要動向について強気の見通しを示す。サプライチェーン(供給網)の寸断リスクを避けるため、生産地域の分散も視野に入れている。
海外の需要旺盛
 ――生産や販売などで東日本大震災の影響は。
 「原材料調達で震災直後は影響が多少あった。当社に大きな支障は出なかったが、国内景気のマイナス材料にはなる。2012年3月期の上期は平時に比べ電子部品の需要が伸び悩みそうだ。連結売上高で150億円ほど下振れするとみて業績予想に織り込んだ。震災の影響は秋口には一服すると思う。通期で純利益は前期比19%増、売上高は10%増を見込んでいる」
 「設備投資計画も変更はない。前期比16%増の700億円を計画しており、リーマン・ショック前の水準に回復した。電子部品では主にスマートフォン向けやタブレット端末向け部品の生産・販売強化に充てる」
 ――携帯電話向け製品などの世界需要の見通しは。
 「今期も新興国が成長をけん引するが、パソコン向けは伸び悩みそうだ。しかし世界はIT(情報技術)機器で結ばれ、新興国の成長は止められない。多少の踊り場があっても来期以降の成長は続くだろう」
 ――スマートフォン向け製品が大きく伸びそうだ。
 「電子部品部門のうちスマートフォンやタブレット端末に使うプリント基板やICパッケージ基板が、今後2~3年の当社の成長を支えることは間違いない」
 「プリント基板は青柳事業場(岐阜県大垣市)や中国・北京工場に加え、マレーシアの第1工場で今春に生産を始めた。来年夏に第2工場も立ち上がり、需要増に対応する体制が整う」 「ICパッケージ基板については当面、河間事業場(岐阜県大垣市)の設備増強でしのぐつもりだ。ただ、顧客企業が震災後、1カ所で集中生産している製品の調達リスクに懸念を強めており、海外での生産拠点を探しているところだ」
節電対策を推進
 ――電力不足の対策は。
 「中部地方が計画停電に陥らないように最大限協力したい。当社の使用電力は自家発電の水力、火力が各3分の1で、残りを中部電力から買っている。自家発電設備は夏場に最大出力を発揮できるよう念入りに保守・点検している」
 「前期に5%の省エネを実現したが、今期もさらに5%の削減を目指す。照明をLED(発光ダイオード)に交換し、クリーンルームの空調効率も改善する。以前から取り組む夜間や土日の集中操業も今年は徹底させたい」=随時掲載
 民間調査会社によると、2011年度の携帯電話出荷は、2台に1台がスマートフォン(高機能携帯電話)になる見通しだ。イビデンは付加価値が高いスマートフォン向けのICパッケージ基板やプリント基板を成長のけん引役と位置付け、力を入れている。
 ただ、技術の最先端分野でもあり、世界需要の急変動リスクも抱えている。シェアや収益力の向上を追求するうえで最適な生産地や仕様の選定、投資のタイミングなど高度な経営判断を迫られている。