商品市況の回復の足取りが鈍い。内需は総じて低迷し、東日本大震災の復興需要の本格化も遅れている。原油や金など国際商品の一部は高止まりしているが、最近の大幅な円高や米国景気の減速懸念は弱材料だ。主要市場の関係者に市況の現状や見通しを語ってもらった。初回はJX日鉱日石エネルギーの池田道雄取締役常務執行役員に聞いた。
――6月下旬、国際エネルギー機関(IEA)が約6千万バレルの石油備蓄放出を決めた。
「意外な印象だ。IEAの成り立ちや目的を考えるとあまり歓迎できない。リビア産原油の供給途絶を理由にしているが、実施が遅すぎたため、原油価格の引き下げを狙ったと市場は受け止めている。石油備蓄は持ち続けること自体に価格変動の抑止効果がある。実際に放出してしまったら、その効果は薄れる」
――原油価格を引き下げる効果はあったのか。
「上値を抑える効果はあったが、一週間で再び高値に戻った。1カ月で6千万バレルの放出量は世界需要の2%程度にすぎず、市場へのインパクトが小さかった。今後は備蓄を放出しても市場の反応は鈍いだろう」
「原油高の背景には将来の供給不安がある。IEAによると現在の世界の原油需要は日量8900万バレル。2020年には1億バレルとなり、それまで毎年100万バレル以上のペースで増えるとみられる。今後の世界経済に悪影響を与えないためにIEAと石油輸出国機構(OPEC)は供給や価格の安定策を議論すべきだ」
――東京電力の原子力発電所事故で発電用原油の需要が膨らんでいる。
「電力向けの主力燃料は液化天然ガス(LNG)と石炭で、原油は最後だ。原油に回帰することはないが西アフリカや中央アジアからの輸入を増やしている。ただ、欧州勢がリビア産の代替として西アフリカ産を買い集めており、調達には苦労している。価格も北海ブレントに連動しているため割高だ。これまでの調達先だったインドネシアやベトナムでは産出量が減り、入手しにくくなっている」
――米国が追加の金融緩和に動く可能性が出てきたが、今後の価格見通しは。
「中長期的には需要拡大による市況上昇圧力が続くだろう。供給面では(1)イラク産原油(2)ブラジルの海底油田(3)カナダのオイルサンド(重質油を含む砂の層)(4)岩盤内部のシェールオイル――が増える見込みだが、国際需給の逼迫感を解消するほどではない」
「ただ、年内は弱含みに推移しそうだ。欧米景気の先行き不透明感が強く、目先の原油需要は低迷する可能性がある。日本の輸入原油の価格指標となるドバイ原油は現在、1バレル110ドル前後だが、北アフリカ・中東の政情不安が下値を支えるだけに90ドルを大きく割り込むことは考えにくい」
2011年7月15日金曜日
2011年7月6日水曜日
縮むLPG市場、打開策は、元売り2社トップに聞く――松沢純氏。
ENEOSグローブ社長 松沢純氏
特約店へのコンサル強化
――新会社の強み、弱みをどう分析する。
「統合は人口減時代に対応するとともに他のエネルギーとの競争に勝つためだ。強みは輸入調達から販売までのサプライチェーン。旧三井丸紅液化ガスは商社の情報も生かした柔軟な調達と270社の特約店、旧新日本石油はFOB(本船渡し)の調達や石油販売と兼業する230社の特約店を持つ。エネファームを扱わなかった三井丸紅側の販社にも紹介できる」
「一方で大きい会社になり、旧2社で特約店との取引条件、担保の取り方も異なる。新会社のコスト構造が適正かの検証は必要だ。今後策定する中期計画で詰めていく」
――同じJXエネルギー子会社のジャパンガスエナジー(東京・港)との関係は。
「株主の意向で決まるため、当社には全くわからない」
――東日本大震災で事業環境に影響は。
「LPGは発電機用の需要が増え、業界全体で約300件の問い合わせがある。分散型、可搬式のエネルギーという強みを業界としてさらに訴える必要がある。一方で東北を1カ所のLPG基地で支えていいのかという点から、リスク分散の重要性が増している。現在は新会社の基地統廃合の結論は出ていない。まず運営の効率化を急ぐ」
――需要全体では減少傾向が続いている。
「当社の10年度の国内販売量は単純合算で350万トン。家庭用や石油化学用は有望とみており年2%は増やしたい。需要減と言われるが全国5000万世帯のうち、約半数の2450万世帯はLPGを使い、潜在性はある。家庭と信頼関係を築いた販社はコメ、水、住宅リフォームなども扱う。元売りが特約店へのコンサルティング機能を強める必要がある」
特約店へのコンサル強化
――新会社の強み、弱みをどう分析する。
「統合は人口減時代に対応するとともに他のエネルギーとの競争に勝つためだ。強みは輸入調達から販売までのサプライチェーン。旧三井丸紅液化ガスは商社の情報も生かした柔軟な調達と270社の特約店、旧新日本石油はFOB(本船渡し)の調達や石油販売と兼業する230社の特約店を持つ。エネファームを扱わなかった三井丸紅側の販社にも紹介できる」
「一方で大きい会社になり、旧2社で特約店との取引条件、担保の取り方も異なる。新会社のコスト構造が適正かの検証は必要だ。今後策定する中期計画で詰めていく」
――同じJXエネルギー子会社のジャパンガスエナジー(東京・港)との関係は。
「株主の意向で決まるため、当社には全くわからない」
――東日本大震災で事業環境に影響は。
「LPGは発電機用の需要が増え、業界全体で約300件の問い合わせがある。分散型、可搬式のエネルギーという強みを業界としてさらに訴える必要がある。一方で東北を1カ所のLPG基地で支えていいのかという点から、リスク分散の重要性が増している。現在は新会社の基地統廃合の結論は出ていない。まず運営の効率化を急ぐ」
――需要全体では減少傾向が続いている。
「当社の10年度の国内販売量は単純合算で350万トン。家庭用や石油化学用は有望とみており年2%は増やしたい。需要減と言われるが全国5000万世帯のうち、約半数の2450万世帯はLPGを使い、潜在性はある。家庭と信頼関係を築いた販社はコメ、水、住宅リフォームなども扱う。元売りが特約店へのコンサルティング機能を強める必要がある」
ラベル:
資源・エネルギー
縮むLPG市場、打開策は、元売り2社トップに聞く――山崎達彦氏。
アストモスエネルギー社長 山崎達彦氏
給湯や空調、発電用を拡大
石油会社と商社の間で続いてきた液化石油ガス(LPG)元売りの再編が新しい段階に入った。JX日鉱日石エネルギーと三井物産、丸紅の事業統合で3月、ENEOSグローブが誕生。出光興産・三菱商事系のアストモスエネルギーを抜き業界首位になった。国内市場が縮むなか、トップ2社はどう打開策を描くのか。ENEOSグローブの松沢純社長とアストモスの山崎達彦社長に聞いた。(聞き手は加藤貴行)
――計画停電などで事業環境に変化は。
「オール電化一辺倒だった住宅メーカーが創エネや省エネに興味を持っている。LPGを使う(家庭用燃料電池)『エネファーム』と、太陽光のダブル発電の問い合わせは増えている。産業用の燃料転換に加え、家庭・業務分野の給湯、空調、発電の用途拡大にも力を入れる」
「消費電力が電気エアコンの10分の1のガスヒートポンプなど新機器も登場している。従来、業界自らで需要創造できていなかったが、流れが変わってきた。あとは特約店と協力し、実際に需要を作れるかが問われる」
――ENEOSグローブ誕生の影響は。
「実力、存在感のある会社が業界をリードするのは心強い。創エネ分野でも当社の先を行く企業であり、当社も工事、施工の研修拠点を通じ需要を掘り起こす。競争しながら市場を切り開く」
――業界再編の先べんを付けたアストモスの5年間をどう評価する。
「ガス産出国の提示価格に基づき小売価格を決める、透明性の高い価格体系をつくれた。業界全体にとっても成果だ。当社の海外での自社船によるトレーディングも伸び、販売量で国内350万トン、海外500万トンの体制ができた。2014年には計1000万トンをめざす」
「常に新しいものに挑戦するのが統合の目的。4月には社員に第1ステップは終わり“第2の創業”と呼びかけた。エネルギー政策の動きを見ながら中期計画を策定し、来年からスタートする」
――この先の業界再編はどう進むと思うか。
「燃料調達、精製部門を伴う従来型の再編以外に、機器メーカーやリフォーム事業者など異業種との統合、元売りと小売事業者の垂直統合もあるだろう。全体で需要を創出するしかけが大事だ」
給湯や空調、発電用を拡大
石油会社と商社の間で続いてきた液化石油ガス(LPG)元売りの再編が新しい段階に入った。JX日鉱日石エネルギーと三井物産、丸紅の事業統合で3月、ENEOSグローブが誕生。出光興産・三菱商事系のアストモスエネルギーを抜き業界首位になった。国内市場が縮むなか、トップ2社はどう打開策を描くのか。ENEOSグローブの松沢純社長とアストモスの山崎達彦社長に聞いた。(聞き手は加藤貴行)
――計画停電などで事業環境に変化は。
「オール電化一辺倒だった住宅メーカーが創エネや省エネに興味を持っている。LPGを使う(家庭用燃料電池)『エネファーム』と、太陽光のダブル発電の問い合わせは増えている。産業用の燃料転換に加え、家庭・業務分野の給湯、空調、発電の用途拡大にも力を入れる」
「消費電力が電気エアコンの10分の1のガスヒートポンプなど新機器も登場している。従来、業界自らで需要創造できていなかったが、流れが変わってきた。あとは特約店と協力し、実際に需要を作れるかが問われる」
――ENEOSグローブ誕生の影響は。
「実力、存在感のある会社が業界をリードするのは心強い。創エネ分野でも当社の先を行く企業であり、当社も工事、施工の研修拠点を通じ需要を掘り起こす。競争しながら市場を切り開く」
――業界再編の先べんを付けたアストモスの5年間をどう評価する。
「ガス産出国の提示価格に基づき小売価格を決める、透明性の高い価格体系をつくれた。業界全体にとっても成果だ。当社の海外での自社船によるトレーディングも伸び、販売量で国内350万トン、海外500万トンの体制ができた。2014年には計1000万トンをめざす」
「常に新しいものに挑戦するのが統合の目的。4月には社員に第1ステップは終わり“第2の創業”と呼びかけた。エネルギー政策の動きを見ながら中期計画を策定し、来年からスタートする」
――この先の業界再編はどう進むと思うか。
「燃料調達、精製部門を伴う従来型の再編以外に、機器メーカーやリフォーム事業者など異業種との統合、元売りと小売事業者の垂直統合もあるだろう。全体で需要を創出するしかけが大事だ」
ラベル:
資源・エネルギー
2011年7月4日月曜日
IEAの石油備蓄放出、異例策、早くも息切れ感――英原油アナリストタキン氏に聞く。
景気減速で供給過剰も 来年、減産の可能性
英世界エネルギー研究所(CGES)の原油アナリスト、マヌーシェル・タキン氏に石油市場の先行きを聞いた。
――IEAの決断をどうみる。
「石油市場に介入する備蓄放出は、すべてを自由市場に任せる機関であるIEAの目的に反している。放出は1カ月以上は続かない」
「世界の景気は減速し始めており、石油は供給過剰の恐れもある。価格が下がり、OPECが2012年に減産することもあり得る。IEAの決定はガソリン価格を下げたい米国などの政治意図を多分に含んでいる」
――OPEC加盟国は6月の総会で増産に合意できなかった。
「加盟国が抱える石油戦略の違いが顕在化した。埋蔵量の多いサウジアラビアなどは石油から他のエネルギーへの移行が進まないよう、価格を抑えたい。一方、埋蔵量の少ない国はここ5~10年で稼ごうと、高い価格の維持を望んでいる」
「生産余力の差も利害を分けた。余力があるサウジは価格が落ちても量で稼げるが、他国はそうはいかない。今回の総会は若くて新しい代表が多く、自らの立場を主張しすぎたことも合意に至らなかった要因だ」
――OPECの存在感は低下するのでは。
「そうは思わない。世界で増産余力があるのはOPECだけだ。もしOPECがフル生産したら、数カ月で原油価格は1バレル40~50ドルまで下がってしまうだろう。それだけの影響力がある」
「1970~80年代には石油の価格が高すぎ、工場や家庭での暖房がガスや電気に代わった。現在の用途は自動車や航空機など輸送用が主力で、他のエネルギーへの移行には時間がかかる」
英世界エネルギー研究所(CGES)の原油アナリスト、マヌーシェル・タキン氏に石油市場の先行きを聞いた。
――IEAの決断をどうみる。
「石油市場に介入する備蓄放出は、すべてを自由市場に任せる機関であるIEAの目的に反している。放出は1カ月以上は続かない」
「世界の景気は減速し始めており、石油は供給過剰の恐れもある。価格が下がり、OPECが2012年に減産することもあり得る。IEAの決定はガソリン価格を下げたい米国などの政治意図を多分に含んでいる」
――OPEC加盟国は6月の総会で増産に合意できなかった。
「加盟国が抱える石油戦略の違いが顕在化した。埋蔵量の多いサウジアラビアなどは石油から他のエネルギーへの移行が進まないよう、価格を抑えたい。一方、埋蔵量の少ない国はここ5~10年で稼ごうと、高い価格の維持を望んでいる」
「生産余力の差も利害を分けた。余力があるサウジは価格が落ちても量で稼げるが、他国はそうはいかない。今回の総会は若くて新しい代表が多く、自らの立場を主張しすぎたことも合意に至らなかった要因だ」
――OPECの存在感は低下するのでは。
「そうは思わない。世界で増産余力があるのはOPECだけだ。もしOPECがフル生産したら、数カ月で原油価格は1バレル40~50ドルまで下がってしまうだろう。それだけの影響力がある」
「1970~80年代には石油の価格が高すぎ、工場や家庭での暖房がガスや電気に代わった。現在の用途は自動車や航空機など輸送用が主力で、他のエネルギーへの移行には時間がかかる」
ラベル:
資源・エネルギー
2011年6月23日木曜日
変われるか出光 エネ・食糧・環境に重点投資――中野社長に聞く(終)
新興国や異業種、M&Aも視野
「石油の世紀」に興隆した出光興産は次の100年で何を守り、どう変わろうとしているのか。中野和久社長はグローバル競争に「環境、技術で挑戦する」と強調。海外展開のなかでは「提携、合併もある」と語る。
――創業から100年をどう振り返る。
「戦前、大陸に渡った出光は戦争ですべてを失った。帰還後、石油に着目し今日がある。石油業はあくまで1つの手段だ。大事なのは事業を通じての人間の育成であり、この本質はこれからも全く変わらない。時代背景で色々な組織論が出てくるが、私は入社して40年間一貫して人を大事にしろと言われてきたし、私もそう言っている」
「日本も10年ごとに変わってきた。今は産業構造が変わり石油を大量に使う経済発展が問われている。護送船団のような石油産業、国内に縛られた成長はあり得ない。昨年策定の中期計画はエネルギーの確保と、環境対応の技術で素材産業として生き残ることに焦点を置いた」
――重点投資分野は。
「エネルギー、食糧、環境の3分野に投資する。エネルギーと石油化学の延長で省エネなどが有望。有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)はその1つだ。100年間に蓄積した技術、経験、ノウハウを生かせる分野から少しずつ変える。(畜産やバイオ、農薬など食糧関連を拡大中だが)かつては“飛び地”のレストラン、植物工場で失敗した」
――国内石油事業は縮小傾向。国内の雇用や海外事業をどうする。
「海外という言葉を使っているうちはダメだ。出光が社会に貢献するのは日本でも中国でもシンガポールでもいい。ただ、雇用維持は考える。ベトナムの製油所では200人の技術者が必要だ。国内では一つの製油所で約300人が働く。できるだけ60歳を過ぎても働き、技術承継をしてもらい、その間に若い人を育てる。一部は海外で働いてもらう」
――グローバル化で「店主」の理念はどうなる。
「理念の基本は変わらないが、常に表現法は変わる。社員に責任と裁量を与える『独立自治』も50年前とは求めることが違う。昔は店主の言葉をそのまま口にすれば良かった時代があった。今は、かみ砕かなければ若い社員に伝わらない。天坊昭彦社長(現会長)になり別の表現をしたり、今の世の中ではこういう意味だと説明したりしてきた。それを出光らしくないという人もいるが」
――上場から5年経過した効果は。
「上場は第一に資金調達手段の多様化をめざした。だが経営の透明性、効率性の面でも利点はあり、社員も『外向き』になった。心配した企業理念の維持もできている。ただマニュアル化の影響で、規定ばかり気にして自ら考えない社員が増えている。これは上から言い続けるしかない」
――石油業界で唯一再編を経験していない。これも出光流か。
「当社の“辞書”に無かった。これからの辞書にはある。国際化を進め事業を大きくし社会に貢献するため、提携、M&A(合併・買収)はありうる。需要が縮む国内で同業が一緒になっても意味がない。対象は石油事業が伸びる新興国や、異業種だ。事業を切り離しての合併、アグリバイオ事業の上場もありうる」
(おわり)
この企画は加藤貴行が担当しました。
【表】 出光興産の歴史
1911年 門司で出光商会(現出光興産)創業
45年 終戦に伴い海外店閉鎖、社員約800人引き揚げ
49年 石油元売りに指名
53年 イラン原油を輸入(日章丸事件)
57年 出光初の徳山製油所完成(75年までに千葉、兵庫、沖縄、北海道、愛知の各製油所も完成)
63年 資本金10億円に。石油連盟脱退(66年に復帰)
64年 出光石油化学設立
88年 豪州で炭鉱権益取得、自社権益石炭の輸入開始
92年 ノルウェー領北海で油田生産開始
2000年 上場準備本格化。資本金356億円に増資
03年 兵庫、沖縄の両製油所閉鎖
04年 三井化学とポリオレフィン事業統合。出光石化を合併
06年 三菱商事と液化石油ガス事業統合。東証1部上場
10年 三井化学と千葉地区エチレン事業統合
14年〓(予) ベトナムで製油所が操業開始
「石油の世紀」に興隆した出光興産は次の100年で何を守り、どう変わろうとしているのか。中野和久社長はグローバル競争に「環境、技術で挑戦する」と強調。海外展開のなかでは「提携、合併もある」と語る。
――創業から100年をどう振り返る。
「戦前、大陸に渡った出光は戦争ですべてを失った。帰還後、石油に着目し今日がある。石油業はあくまで1つの手段だ。大事なのは事業を通じての人間の育成であり、この本質はこれからも全く変わらない。時代背景で色々な組織論が出てくるが、私は入社して40年間一貫して人を大事にしろと言われてきたし、私もそう言っている」
「日本も10年ごとに変わってきた。今は産業構造が変わり石油を大量に使う経済発展が問われている。護送船団のような石油産業、国内に縛られた成長はあり得ない。昨年策定の中期計画はエネルギーの確保と、環境対応の技術で素材産業として生き残ることに焦点を置いた」
――重点投資分野は。
「エネルギー、食糧、環境の3分野に投資する。エネルギーと石油化学の延長で省エネなどが有望。有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)はその1つだ。100年間に蓄積した技術、経験、ノウハウを生かせる分野から少しずつ変える。(畜産やバイオ、農薬など食糧関連を拡大中だが)かつては“飛び地”のレストラン、植物工場で失敗した」
――国内石油事業は縮小傾向。国内の雇用や海外事業をどうする。
「海外という言葉を使っているうちはダメだ。出光が社会に貢献するのは日本でも中国でもシンガポールでもいい。ただ、雇用維持は考える。ベトナムの製油所では200人の技術者が必要だ。国内では一つの製油所で約300人が働く。できるだけ60歳を過ぎても働き、技術承継をしてもらい、その間に若い人を育てる。一部は海外で働いてもらう」
――グローバル化で「店主」の理念はどうなる。
「理念の基本は変わらないが、常に表現法は変わる。社員に責任と裁量を与える『独立自治』も50年前とは求めることが違う。昔は店主の言葉をそのまま口にすれば良かった時代があった。今は、かみ砕かなければ若い社員に伝わらない。天坊昭彦社長(現会長)になり別の表現をしたり、今の世の中ではこういう意味だと説明したりしてきた。それを出光らしくないという人もいるが」
――上場から5年経過した効果は。
「上場は第一に資金調達手段の多様化をめざした。だが経営の透明性、効率性の面でも利点はあり、社員も『外向き』になった。心配した企業理念の維持もできている。ただマニュアル化の影響で、規定ばかり気にして自ら考えない社員が増えている。これは上から言い続けるしかない」
――石油業界で唯一再編を経験していない。これも出光流か。
「当社の“辞書”に無かった。これからの辞書にはある。国際化を進め事業を大きくし社会に貢献するため、提携、M&A(合併・買収)はありうる。需要が縮む国内で同業が一緒になっても意味がない。対象は石油事業が伸びる新興国や、異業種だ。事業を切り離しての合併、アグリバイオ事業の上場もありうる」
(おわり)
この企画は加藤貴行が担当しました。
【表】 出光興産の歴史
1911年 門司で出光商会(現出光興産)創業
45年 終戦に伴い海外店閉鎖、社員約800人引き揚げ
49年 石油元売りに指名
53年 イラン原油を輸入(日章丸事件)
57年 出光初の徳山製油所完成(75年までに千葉、兵庫、沖縄、北海道、愛知の各製油所も完成)
63年 資本金10億円に。石油連盟脱退(66年に復帰)
64年 出光石油化学設立
88年 豪州で炭鉱権益取得、自社権益石炭の輸入開始
92年 ノルウェー領北海で油田生産開始
2000年 上場準備本格化。資本金356億円に増資
03年 兵庫、沖縄の両製油所閉鎖
04年 三井化学とポリオレフィン事業統合。出光石化を合併
06年 三菱商事と液化石油ガス事業統合。東証1部上場
10年 三井化学と千葉地区エチレン事業統合
14年〓(予) ベトナムで製油所が操業開始
ラベル:
資源・エネルギー
2011年6月18日土曜日
石狩のLNG基地来年稼働、北ガス・大槻博社長に聞く――災害時にも安定供給。
提案営業で販売6割増へ
石狩湾新港で進む北海道ガスの液化天然ガス(LNG)基地建設で、6月末に出荷業務などに携わる基地会社が設立される。2012年末の稼働を前に準備が本格化する中、大槻博・北海道ガス社長に基地設立後の経営戦略について聞いた。(聞き手は小野沢健一)
――LNG基地建設の狙いは。
「現在、苫小牧の勇払ガス田に原料の9割を頼っている。天然ガス需要は拡大を続けており、将来、勇払だけで対応していくのは難しい。長期的な安定供給のためには海外産原料の比率を増やす必要があり、そのためにはLNG基地の存在が欠かせない。災害対応にもメリットはある。苫小牧と石狩の2つの拠点を持つことで、どちらかが被害を受けても道内への安定したガス供給が可能だ」
――海外産原料の比率が高まることで相当のコスト増が見込まれる。ガス料金への影響は。
「料金への影響は何としても避ける。ただし、LNG基地の総事業費は約400億円に達する。投資余力がそれほど残っているわけではなく、経営資源をエネルギー事業に集約することが必要になるだろう」
――基地完成後のガス販売の展望は。
「パイプラインでの供給に加え、ローリー車で直接顧客に届けるLNGサテライト供給の提案営業などを積極的に行っていく。サテライト供給は15年度に1億立方メートルが目標。関連会社のフレアストによる営業も強化し、家庭用、業務用を合わせたガス販売量は現行の約6割増の年間7億立方メートルに伸ばしていきたい」
――東日本大震災による経営への影響は。
「北海道ガスそのものへの影響はなかった。しかし、福島第1原発の事故でエネルギーの多様性が重視されるようになり、原油、LNGなどの燃料価格は中長期的に上昇していくだろう。いかに適正な料金で天然ガスを安定供給できるかが今後の重要な課題だ」
石狩湾新港で進む北海道ガスの液化天然ガス(LNG)基地建設で、6月末に出荷業務などに携わる基地会社が設立される。2012年末の稼働を前に準備が本格化する中、大槻博・北海道ガス社長に基地設立後の経営戦略について聞いた。(聞き手は小野沢健一)
――LNG基地建設の狙いは。
「現在、苫小牧の勇払ガス田に原料の9割を頼っている。天然ガス需要は拡大を続けており、将来、勇払だけで対応していくのは難しい。長期的な安定供給のためには海外産原料の比率を増やす必要があり、そのためにはLNG基地の存在が欠かせない。災害対応にもメリットはある。苫小牧と石狩の2つの拠点を持つことで、どちらかが被害を受けても道内への安定したガス供給が可能だ」
――海外産原料の比率が高まることで相当のコスト増が見込まれる。ガス料金への影響は。
「料金への影響は何としても避ける。ただし、LNG基地の総事業費は約400億円に達する。投資余力がそれほど残っているわけではなく、経営資源をエネルギー事業に集約することが必要になるだろう」
――基地完成後のガス販売の展望は。
「パイプラインでの供給に加え、ローリー車で直接顧客に届けるLNGサテライト供給の提案営業などを積極的に行っていく。サテライト供給は15年度に1億立方メートルが目標。関連会社のフレアストによる営業も強化し、家庭用、業務用を合わせたガス販売量は現行の約6割増の年間7億立方メートルに伸ばしていきたい」
――東日本大震災による経営への影響は。
「北海道ガスそのものへの影響はなかった。しかし、福島第1原発の事故でエネルギーの多様性が重視されるようになり、原油、LNGなどの燃料価格は中長期的に上昇していくだろう。いかに適正な料金で天然ガスを安定供給できるかが今後の重要な課題だ」
ラベル:
資源・エネルギー
石狩のLNG基地来年稼働、北ガス・大槻博社長に聞く――災害時にも安定供給。
提案営業で販売6割増へ
石狩湾新港で進む北海道ガスの液化天然ガス(LNG)基地建設で、6月末に出荷業務などに携わる基地会社が設立される。2012年末の稼働を前に準備が本格化する中、大槻博・北海道ガス社長に基地設立後の経営戦略について聞いた。(聞き手は小野沢健一)
――LNG基地建設の狙いは。
「現在、苫小牧の勇払ガス田に原料の9割を頼っている。天然ガス需要は拡大を続けており、将来、勇払だけで対応していくのは難しい。長期的な安定供給のためには海外産原料の比率を増やす必要があり、そのためにはLNG基地の存在が欠かせない。災害対応にもメリットはある。苫小牧と石狩の2つの拠点を持つことで、どちらかが被害を受けても道内への安定したガス供給が可能だ」
――海外産原料の比率が高まることで相当のコスト増が見込まれる。ガス料金への影響は。
「料金への影響は何としても避ける。ただし、LNG基地の総事業費は約400億円に達する。投資余力がそれほど残っているわけではなく、経営資源をエネルギー事業に集約することが必要になるだろう」
――基地完成後のガス販売の展望は。
「パイプラインでの供給に加え、ローリー車で直接顧客に届けるLNGサテライト供給の提案営業などを積極的に行っていく。サテライト供給は15年度に1億立方メートルが目標。関連会社のフレアストによる営業も強化し、家庭用、業務用を合わせたガス販売量は現行の約6割増の年間7億立方メートルに伸ばしていきたい」
――東日本大震災による経営への影響は。
「北海道ガスそのものへの影響はなかった。しかし、福島第1原発の事故でエネルギーの多様性が重視されるようになり、原油、LNGなどの燃料価格は中長期的に上昇していくだろう。いかに適正な料金で天然ガスを安定供給できるかが今後の重要な課題だ」
石狩湾新港で進む北海道ガスの液化天然ガス(LNG)基地建設で、6月末に出荷業務などに携わる基地会社が設立される。2012年末の稼働を前に準備が本格化する中、大槻博・北海道ガス社長に基地設立後の経営戦略について聞いた。(聞き手は小野沢健一)
――LNG基地建設の狙いは。
「現在、苫小牧の勇払ガス田に原料の9割を頼っている。天然ガス需要は拡大を続けており、将来、勇払だけで対応していくのは難しい。長期的な安定供給のためには海外産原料の比率を増やす必要があり、そのためにはLNG基地の存在が欠かせない。災害対応にもメリットはある。苫小牧と石狩の2つの拠点を持つことで、どちらかが被害を受けても道内への安定したガス供給が可能だ」
――海外産原料の比率が高まることで相当のコスト増が見込まれる。ガス料金への影響は。
「料金への影響は何としても避ける。ただし、LNG基地の総事業費は約400億円に達する。投資余力がそれほど残っているわけではなく、経営資源をエネルギー事業に集約することが必要になるだろう」
――基地完成後のガス販売の展望は。
「パイプラインでの供給に加え、ローリー車で直接顧客に届けるLNGサテライト供給の提案営業などを積極的に行っていく。サテライト供給は15年度に1億立方メートルが目標。関連会社のフレアストによる営業も強化し、家庭用、業務用を合わせたガス販売量は現行の約6割増の年間7億立方メートルに伸ばしていきたい」
――東日本大震災による経営への影響は。
「北海道ガスそのものへの影響はなかった。しかし、福島第1原発の事故でエネルギーの多様性が重視されるようになり、原油、LNGなどの燃料価格は中長期的に上昇していくだろう。いかに適正な料金で天然ガスを安定供給できるかが今後の重要な課題だ」
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